不動産研究 60-2

第60巻第2号(平成30年4月) 特集:東南アジア(ASEAN)諸国における不動産市場の現状と展望

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第60巻第2号

特集:東南アジア(ASEAN)諸国における不動産市場の現状と展望

東南アジア諸国における都市開発の海外展開支援

国土交通省 都市局 国際室 課長補佐 松野 憲治

 政府では、インフラシステム輸出戦略を定め、都市開発を含むインフラシステムの海外展開を推進している。本稿では、JICA、国土交通省を中心に都市開発分野での政府の支援制度を紹介するとともに、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、タイ等東南アジア諸国における都市開発の動向と国交省の対応を、具体例とともに紹介する。

【キーワード】都市開発、東南アジア、インフラシステム輸出、TOD

東南アジア諸国都市部への国際協力機構(JICA)による開発協力について
-都市開発における投資、不動産の視点から-

独立行政法人国際協力機構(JICA) 国際協力専門員 森川 真樹
 独立行政法人国際協力機構(JICA) 国際協力専門員 本間 徹
 独立行政法人国際協力機構(JICA) 企画部 業務企画第一課 主任調査役 杉田 樹彦

 本稿では、東南アジアにおける都市開発投資やTOD型整備、不動産的視点をいかした再開発に関するJICA事例を紹介し、事業展開の可能性を検討する。東南アジア各国は、内需狙いの投資が増加し、有望展開先として期待されている。インフラ需要が旺盛なミャンマーでは、急速な経済成長や中間層の伸長と共に日系を始め不動産への外国直接投資が伸びている。ただし土地問題や整備途上の法制度・投資環境等が課題であり、JICAでも包括的な支援を行っている。バンコクのバンスー地区再開発では、不動産開発を織り込んだ海外での都市鉄道との一体的、かつ段階的な駅周辺整備、都市再開発への多層的な協力の必要性が指摘される。最後にJICA都市開発分野での新たな展開として、都市の骨格づくりや都市形成の視点を生かしたTOD型整備の推進、海外投融資の活用が期待される。

【キーワード】都市開発、投資、公共交通指向型開発(TOD)、東南アジア、ミャンマー、バンスー

都市化著しいヤンゴンとプノンペンの住宅事情
-ミャンマー・カンボジアの現状から、今後の展開を俯瞰する-

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 政策事業本部 副主任研究員 宮田 将門
 株式会社URリンケージ 都市整備本部 計画部 海外プロジェクト推進課 技師 村田 匠
 株式会社URリンケージ 都市整備本部 計画部 海外プロジェクト推進課 課長 栗村 英男
 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 政策事業本部 主任研究員 本橋 直樹

 Myanmar and Cambodia are in a similar position in economic development: GDP per capita of both countries are approximately 1,300 USD; and the most populated city of each country, Yangon and Phnom Penh, are experiencing rapid urbanization.
 In this study, based on information collected through field survey and interviews to local authorities, situation of housing in both cities are introduced. Then, focusing on income level of residents, 5 types of housing categories are described. In addition, 4 cases of recent development casting on quality and price are also mentioned.
 In conclusion, a perspective with expectation for future housing development in these countries are presented.

【キーワード】都市化、都市開発、住宅
【Key Word】 Urbanization, Urban development, Housing development

東南アジア主要都市の不動産市場動向

一般財団法人日本不動産研究所 国際部 次長 兼 シンガポール駐在員事務所 所長 福山 雄次
 一般財団法人日本不動産研究所 国際部 主席専門役 武内 朋生
 一般財団法人日本不動産研究所 国際部 専門役 池亀 良枝
 一般財団法人日本不動産研究所 研究部 主任専門役 吉野 薫
 一般財団法人日本不動産研究所 国際部 副調査役 白濱 裕海

 日本不動産研究所は、1959年の創立以来、海外の不動産評価・調査機関等との研究交流や海外不動産の鑑定評価業務等を展開してきた。そして、社会経済のグローバル化の進展とともに、国際業務のさらなる進歩発展のため、2014年に国際部を立ち上げ、欧米・中国・台湾・東南アジア等を中心とした海外不動産の評価・調査・研究業務を進めている。また、2013年には、日本不動産研究所独自の調査として、国際的な主要都市の不動産市場動向を調査することを目的とした「国際不動産価格賃料指数」*を新たにスタートさせ、毎年2回(4月、10月)、各都市のオフィス及びマンション市場動向についての調査・研究を重ねてきた。さらに、2017年11月からは、シンガポール駐在員事務所を開設し、東南アジアの不動産市場に係る調査・研究業務の一層の拡充を図っている。
 本稿では、日本不動産研究所の「国際不動産価格賃料指数」のうち、東南アジアの調査対象都市であるシンガポール、クアラルンプール、バンコク、ジャカルタ、ホーチミンの5都市について、本調査の都市担当者が、現地の最新の不動産事情を織り交ぜつつ、それぞれの市場動向を紹介する。
*国際不動産価格賃料指数
 東京、大阪、ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポールなど、国際的な主要都市の不動産市場動向を調査するため、日本不動産研究所の不動産鑑定士が毎回現地に赴き、調査対象都市の調査物件の価格・賃料を評価し、これを指数化したもの(毎年4月、10月実施)。公益社団法人日本不動産学会2014年度・業績賞受賞。

調査

田畑価格及び賃借料の動向
-2017(平成29)年調査結果をふまえて-

松岡 利哉

 2017年10月30日に「田畑価格及び賃借料調(2017(平成29)年3月末現在)」を公表した。本稿では、公表した調査結果に加えて、その後分析した内容を紹介する。

【キーワード】田畑価格、田畑賃借料

近年の既存マンション市場の動向と今後の展望
-「不動研住宅価格指数」の調査結果(平成29年12月時点)をふまえて-

曹 雲珍

「不動研住宅価格指数」は、当初、2011年4月26日より株式会社東京証券取引所から「東証住宅価格指数」の名称で公表されたものであった。同指数は、2014年12月30日の公表をもって株式会社東京証券取引所が更新を終了することになり、その後日本不動産研究所が引き継いで、2015年1月27日から現在の名称で公表している。
 2018年2月27日に公表した昨年12月時点の「不動研住宅価格指数」によると、首都圏は90.97ポイントで4ヶ月連続上昇、2007年以降の最高値となった。地域別では、東京都は98.69ポイント(前年同期比3.50%上昇)で、2015年12月からミニバブル期の最高値である2007年10月の94.90ポイントを上回り、2017年4月(99.17ポイント)に2007年以降の最高値に達したものの、その後4ヶ月連続下落し、9月から再び上昇に転じた。神奈川県は87.46ポイント(同4.63%上昇)、千葉県は72.14ポイント(同4.86%上昇)、埼玉県では75.03ポイント(同4.66%上昇)となった。

【キーワード】住宅価格指数、リピート・セールス法、既存マンション、市場動向

判例研究(106)

建物への仮差押えが本執行に移行した場合の法定地上権の成否
―最判平成28年12月1日(民集70巻8号1793頁)に対する若干の考察―

関口 康晴

 地上建物に対する仮差押えが本執行に移行したときに、仮差押え時点では土地及び地上建物が同一所有者に帰属していた場合、仮差押えが本執行に移行し強制競売手続時点において両不動産が同一所有者に帰属していない場合でも法定地上権の成立が認められた事例。

The Appraisal Journal Fall 2017

外国鑑定理論実務研究会

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