第22回 北九州

100万都市の期待~浮揚なるか中心市街地~

第22回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~ 
住宅新報2010年9月7日号(14面)掲載
日本不動産研究所 北九州支所
不動産鑑定士  木下剛

ルネッサンス構想

北九州市は、九州の最北端にに位置し、かつては四大工業地帯の一つとして栄えたきた都市で、昭和38年(’63)に門司、小倉、若松、八幡、戸畑の五市の合併により政令指定都市として誕生しました。人口は、政令指定都市発足当時の約103.3 万人から昭和54年(’79)には約106.8 万人まで増加しましたが、その後は減少へと転じ、平成22年(’10)8月現在では約98.1 万人となっており、政令指定都市では数少ない人口減少都市であります。

 北九州市では誕生の経緯から「均衡ある発展」という考え方が底流にあり、都市政策による都市機能の集積・強化が不十分であったことから、昭和50年代からの都市間競争の激化により、都市の相対的な地位の低下が進みました。そのために、北九州市では百万都市にふさわしい都市機能の集積・強化を図る都市政策にシフトするため、昭和63年(’88)の北九州市ルネッサンス構想において、小倉を「都心」、黒崎を「副都心」として位置づけ、「多核都市」から「均衡に配慮した集中型都市」への転換が示されました。

 北九州市の玄関口であるJR小倉駅は、山陽新幹線並びにJR鹿児島本線及び日豊本線が連結される駅であり、さらに都市モノレール小倉線も乗り入れるなど拠点駅となっています。小倉駅には、大規模な商業施設であるアミュプラザがあります。

 小倉駅の北口東部には、リーガロイヤルホテル小倉、ベスト電器小倉店、AIMアジア太平洋インポートマート等が集積しており、北口西部にはオフィスやビジネスホテルが集積した商業地域が形成されているほか、小倉記念病院が近々開業予定です。

 小倉駅南口には、金融機関の店舗等が入居したオフィスビルのほかに、東部ではセントシティ北九州等、西部にはアーケード商店街(北九州市は銀天街発祥の地)、井筒屋小倉店等が集積した繁華性の高い商業地域が形成されています。

小倉駅北口地区で建設中の小倉記念病院
小倉駅北口地区で建設中の小倉記念病院

南口の大型商業施設・セントシティ北九州
南口の大型商業施設・セントシティ北九州

アーケード商店街(銀天街発祥の地)
アーケード商店街(銀天街発祥の地)

セントシティ北九州は、小倉駅前東地区市街地再開発事業によって開発された平成5年(’93)開業の旧小倉そごうで、そごうの破綻後権利関係の複雑さ等からなかなかテナントの誘致ができなかったが、その解決により旧小倉伊勢丹が開業したものの、旧小倉伊勢丹もうまくいかず、結局は北九州市の老舗百貨店である井筒屋が入居した。小倉そごうが開業した平成5年(’93)には、小倉興産が小倉駅北口でリーガロイヤルホテル小倉とラフォーレ原宿・小倉も開業したために、一気に小倉の商業集積度が高まりました。

 井筒屋は、平成21年(’09)に上記セントシティ北九州に入居している「コレット」の改装を行い、「ロフト」、「無印良品」等のテナントを誘致したものの「コレット」の経営は苦しい状況にあり、井筒屋全体としても売上げは減少傾向にあるようです。アーケード商店街では、近年売上げの不振から買い回り品等を扱う専門店から飲食店舗、ドラッグストア等へ業種の転換が見られましたが、特に最近ではテナントが退去後次のテナントが入居するまでの期間が長期化し、空き店舗が増加する傾向にあります。このことは、商店街で一番のメインストリートでも見られ、以前では考えられないようなことです。このことは、景気回復の遅れによる消費の伸び悩みのほかに、市街地中心部における駐車場不足の問題、郊外の大型商業施設への顧客の流出及び通信販売の増加といった消費行動の変化、並びに新博多駅ビルが来年オープンする等着実に商業集積度を高めている福岡市中心部の商業施設の競合といったことの影響と思われます。
 アーケード商店街の地価の推移を、地価公示標準地小倉北5-1で見てみると、下記のグラフのとおりになります。

最近の下落幅はやや縮小しているものの、過去10年間一貫して下落しており、10年間で約60%下落したことになります。

 小倉駅南口東部では市街地再開発事業が予定されており、地元地権者による準備組合が平成12年(’00)10月に組織され、今後は組合設立認可・権利変換計画の認可を目指して事業が進められる予定です。再開発ビルは敷地面積約4,000㎡、延床面積約40,000㎡、地下1階、地上15階建で、駐車場は地下1階に整備し、低層部に商業・公益施設、中~上層部に業務施設を配置する計画です。

 次に、オフィスに関しましては、「小倉」駅から九州の中心都市である福岡市の「博多」駅まで新幹線利用で約20分という立地から、企業の支店の統廃合や縮小がなされており、駅前の一等地を除いて空室率は高水準で推移しています。また、賃料水準につきましては、九州の主要都市と比較して低い水準にあり、募集家賃と成約家賃の乖離が大きいようです。オフィス市場がこのような状況にあること等により、市街地中心部ではオフィスの新築や建替えがなされることはなく、建替えられる場合には、低層階は店舗利用でも、上層階は住宅利用となっています。

 上記のとおり、商店街及びオフィスとも振るわない状況ではありますが、平成20年(’08)にはコンフォートホテル小倉北口、平成22年(’10)には東横イン小倉駅北口、及びスーパーホテル小倉駅南口等低料金で宿泊に特化したホテルの進出が続いています。

 上記以外で小倉都心部での大規模な商業施設としては、平成15年(’03)に室町一丁目地区市街地再開事業により開発された「リバーウォーク北九州」、平成12年(’00)に西日本鉄道株式会社の開発による砂津地区の「チャチャタウン小倉」があります。

 

北九州市の中心商業地の地価は、バブル崩壊後一貫して下落傾向が続いており、福岡市の中心部で見られた平成18年(’06)前後のファンドバブルによる急激な地価の高騰、及びその後のアメリカのサブプライム問題からリーマンショックの影響による地価の急落といったような地価の変動は起こっていません。さきほどの地価公示標準地小倉北5-1のバブル前である昭和58年(’83)の価格は2,400,000円、バブル期の最高価格は平成5年(’93)の5,230,000円でありますので、平成22年(’10)の694,000円は、バブル前の約29%、バブル最高時の約13%の水準です。バブル期の上昇率はそれほどでもないのに、その後の下落率の大きさから商店街の現状が伺えます。

広域集客力を強化

北九州市では、小倉都心地区の活性化の重点目標の一つとして「広域商業拠点の賑わいの向上」を掲げ、都心エリア全体での回遊拠点や広域集客力の強化を図ることを目標としています。そのために、小倉都心地区へ広域圏から来街者を吸引し、都心の賑わいを高めるために、吸引力のある集客核の整備として、小倉駅北口商業ビル(ラフォーレ跡)再生事業、小倉記念病院新築移転事業、チャチャタウン小倉2期開発事業、(仮称)北九州市漫画ミュージアム開設準備事業、旦過第一地区市街地再開発事業が進められています。
中心市街地に必要なのは、各年齢層にとってそれぞれ魅力のある商業施設であり、それらの商業施設の賑わいが更なる商業施設の集積や面的な広がりを産んでいくと考えられますので、上記事業を足がかりとして中心市街地の発展を期待したいと思います。

  なお、北九州市及び中心市街地関係では、北九州市のホームページからの引用をしています。

(次回の第23回:にっぽん「地価一番」物語は『横浜』)

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