第31回 長野

「賑わいは駅前と善光寺周辺だけ、その間は?」~北陸新幹線「金沢」への延伸の影響は~

第31回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~ 
住宅新報2010年11月09日号(16面)掲載
日本不動産研究所 長野支所
不動産鑑定士  塚田賢治

回遊性に乏しい市街地

長野市は、国宝善光寺の門前町で、北国街道の宿場町も兼ねた商業都市、観光都市として発展してきた。人口は約38万人で、中心市街地は長野(北陸)新幹線「長野」駅前から善光寺門前に至る約1.8㎞の善光寺の表参道(中央通り)沿いを中心に形成されている。

 長野駅前には再開発ビルやデパート、ホテル等の大型の商業施設が集積し、中央通り沿いには中高層のオフィスビルや商業施設も見られるが、善光寺に近づくと、土蔵造りの昔ながらの店舗や石造りの建物も多く、門前町らしい風情を漂わせている。

 長野市の観光客の入り込みは年間約1,000万人、このうち善光寺観光が約6割で、7年に一度の御開帳時には倍程度に膨れあがるが、観光客は駅からのバスや善光寺周辺の駐車場利用が多く、中心市街地まで踏み入って散策する観光客は少ない。

 商業の中心は、長野駅前から末広町の交差点を右折して中央通り沿いの新田町交差点付近までで、新田町交差点付近には、デパートや全国展開する量販店等の大型の商業施設も見られたが、平成12年(’00)頃に相次いで撤退した。その後、空店舗を長野市が購入して公共サービスセンターと食品スーパーからなる「もんぜんぷら座」として再生したり、平成18年(’06)9月には再開発ビル「トイーゴ」がオープンしたが、中央通り沿いに活気は戻らず、買い物や飲食は、駅前の極めて狭い範囲で完結しており、旧来の中心市街地に賑わいは見られない。

 地価公示の最高価格地「長野5-2」(地価調査長野5-9との共通地点)は、長野駅前の店舗・ホテルで、今年(’10)1月1日時点の価格は1㎡当たり45.9万円、7月1日時点は43.9万円、平成5年から18年連続の下落で、ピークの平成4年(’92)の339万円と比較すると約14%の水準まで下落した。

平成3年(’91)に平成10年(’98)2月開催の第18回冬季オリンピック大会(長野オリンピック)の開催都市に決定し、以降、高速道路や長野新幹線といった高速交通網等の整備やオリンピック需要を見込んだホテル建設等のオリンピック景気が底上げし、平成10年(’98)頃までは一桁代の下落率で推移したが、オリンピック後はその反動で大きく下げている。

長野駅前は、再開発事業により高層の商業ビル等が建ち並ぶが、長野駅前のA-3地区で進められていた再開発ビル「Nacs末広」が本年8月20日に完成し、1~4階に入居する飲食店等を中心とした14の店舗は、11月上旬までに順次オープンする予定で、5~11階に入るホテルは8月26日に移転オープンした。今後当ビル2階から隣接するウエストプラザビルを通ってペデストリアンデッキでJR長野駅に繋がる長野駅前整備計画もあり、長野駅善光寺口駅前と駅舎の一体的整備による都市機能の更新が期待される。


長野駅前にある最高価格地点に立つ店舗・ホテル

 


8月に完成した再開発ビル「Nacs末広」

北陸新幹線の延伸後は

新幹線の開業により、東京からは約90分の時間的距離になり、利便性は大幅に向上し、観光客も増えたが、一方で、完全に日帰り圏になったことから、ホテル経営が悪化したり、大手企業の支店・営業所の統廃合によるオフィス空室率の上昇等の負の影響も顕在化している。平成26年度(’14)中には、新幹線は北陸「金沢」まで延伸される予定であり、「長野新幹線」として親しまれた通称名の行方や北陸地方の観光地との競合による観光産業への影響等が当面の関心事であるが、観光プロモーションの強化や受入環境の整備等により、多くの観光客が訪れ、魅力を感じるような観光都市として発展していくことを期待したい。

(次回の第32回:にっぽん「地価一番」物語は『松本』)

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