第33回 新宿

変化し続けるパンドラの箱「新宿」~多様な顔と機能を併せ持つ街~

第33回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~ 
住宅新報2010年11月23日号(24面)掲載
日本不動産研究所 東京事業部
不動産鑑定士  神本文子

一定イメージで括れない

「新宿」という地名からはどんなイメージが涌くだろうか。
 例えば、「銀座」と言えば、最近でこそ、ファストファッション系のアパレル店舗の進出が話題となっているが、それでも老舗やブランドショップが軒を連ねる「大人の街」、「高級」なイメージを、「渋谷」と言えば「若者が集まる街」といったイメージを思い描く人が多いのではないだろうか。

 「新宿」・・・「都庁」、「超高層ビル」、「アルタ」、「新宿駅(ターミナル駅)」、「伊勢丹」、「歌舞伎町」、「ゴールデン街」など「新宿」駅を中心に広がる街のイメージは、都心のどこの地域とも違って一定のイメージで括ることができない、いわば”何でもあり”の街である。そこには交通利便性・商業施設の充実、副都心としての地位の確立などが背景にあるだろう。

 新宿駅は私鉄デパートや駅ビル・地下街とつながって、ターミナル駅としての交通機能に商業機能が付加されている。   
   西口方面には超高層ビル群が建ち並んで巨大なオフィス地区を形成しているほか、ハイアットリージェンシー東京、ヒルトン東京、京王プラザホテルといったホテルも存在する。

 東口方面にはブランドショップを抱える旧来からのデパート(高島屋、伊勢丹、三越アルコット、マルイ)が店舗のリニューアルやテナントの入替により巨大な集客力を持つほか、「ユニクロ」、「H&M」、「フォーエバー21」、「ZARA」といったファストファッションを中心にアパレル店舗が出店し、平成22年(’10)4月に「ヤマダ電機」も出店し、活気のある商業地域が形成されている。ブランド品から家電製品まで何でも揃うことから外国人観光客も多く訪れ、あちこちに中国語や韓国語の広告や案内看板が見られる。アパレル業界の集積する街へと変化していくるのか、それとも秋葉原・池袋に続く電気店戦争が始まるのか・・・。

 この繁華性の高い商業地域のウラには「ゴールデン街」など歓楽街の顔を持つ歌舞伎町が存在するかと思えば、すぐ背後には住宅地域が形成されている。

 


西新宿地区の超高層ビル街から新宿駅方面を望む。隣接する東口、歌舞伎町には別の顔がある。

『「住んでみたい」街(駅)ランキング2010(都県別)』(2010年10月、長谷工アーベストWEBアンケート)では、第6位と同調査2004年の22位、2009年の19位から大きく躍進している。

 「新宿」駅徒歩圏でこれほど様々な顔を持ち、“何でもあり”のパンドラの箱が新宿地区である。だからこそ、このエリアには老若何女、富裕層もサラリーマンも、日本人も外国人(新宿区の外国人居住割合は都内トップ)も様々な人々が様々な目的で集まってくる。人口減少・超高齢化社会にあるにも関わらず新宿区は平成13年(’01)以降人口が増加傾向にあり、平成27年(’15)頃までその傾向が継続すると予測されている。
 一定の括りで捉えがたい街だからこそ、地価の推移も他の地域とは少し違う動きが見られる場合がある。

 図1は新宿駅西口方面に広がる超高層ビルが建ち並ぶ西新宿オフィス地区、図2は新宿駅東口方面の新宿3丁目の商業地域の地価公示の価格とその変動を示したものである。
 図1ではオフィス地区として名声の高い丸ノ内地区、図2では商業地区として競合となる銀座・渋谷地区の地価変動と比較した。オフィス地区、商業地区ともに新宿では価格の上昇は他の地区よりも初期段階では動きが鈍く、価格や変動率のピークも若干遅れて出現しているが、上昇に時間をかけた分だけその変動幅は他地区よりも大きい。価格の下落は他地区と同時期に訪れており、オフィス地区では他地区に比較して下落のスピードが速く、変動幅が大きいが、商業地区は他の地区やオフィス地区と比較すると下落圧力が小さい。商業地区では東京メトロ副都心線の開業、新規出店の増加など明るい話題が続いたことから、下落幅が圧縮したものと推察する。すなわち、新宿地区は他の地区に比較してより景気に敏感に反応していると考えられる。

図1 新宿駅西口地区の地価推移

図2 新宿駅東口地区の地価推移

新たな商戦への期待

超高層ビル群の西新宿地区では、今後も再開発事業によるオフィスビルや住宅供給も予定されており、また、新宿駅南口ではオフィス・商業複合ビルが計画されている。商業施設の集積する新宿三丁目地区では東京メトロ副都心線の開通によって通勤・通学客が大幅に増加しており(開業当初に対して2009年度は40%増)、2012年には同線が東急東横線との乗入れ運転を開始することから、新たな商戦も期待されている。景気の先行き懸念が強まるなか、新宿の地価はその動きに追随するのか、それとも変化による明るい材料が下支えとなるのか、揺れる局面で足踏みをしている状態といえるであろう。

(次回の第34回:にっぽん「地価一番」物語は『札幌』)

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