第35回 名古屋

商業、業務集積で2極構造~都心活性化競う 将来的にはリニア新幹線も~

第35回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~ 
住宅新報2010年12月7日号(34面)掲載
日本不動産研究所 東海支社
不動産鑑定士  湯城誠

名古屋のまちの形成(かこ)

名古屋は、1610年名古屋城の築城によってつくられ、今年で開府400年を向かえた。徳川は西側の守りの拠点として、江戸城よりも先に名古屋城の築城に着手。城を中心に南側に武家屋敷を、その先に町人街を配した(図1)。
また、主要幹線である熱田から名古屋城に至る本町通りの熱田寄りには寺社を配し戦時の備えとした。名古屋城下は周到に計画されたまちで、当時の碁盤の目に区画割りされた街区は、今も概ね当時のまま活用されている。先人のまちづくりが今にそのまま残る名古屋。本町通りや広小路通りを中心に大いに賑わったと記されている(今の栄地区)。

 

(図1)

※資料提供:Network2010

名古屋市の中心市街地(いま)

今の名古屋市の中心市街地は、大きく「名駅駅前地区」と「栄地区」から成る2局構造である(図2)。かつての名古屋市の商業地の最高価格は、百貨店や各種専門店等が集積する「栄地区」にあったが、平成19年(2007)以降「名駅駅前地区」に移動した(図3)。
 これは、平成14年(2002)以降名駅駅前地区に複数の大規模複合ビル(表1)が次々と開業したことが原因のひとつと考えられる。
 この地区では、名古屋初のSクラスオフィスビルが供給されたほか、質の高い大規模店舗・ホテル等が供給され、人や物の流れに変化が生じた。
 しかし、当研究所の集計では、店舗としての広がりは未だに栄地区が名駅地区を凌駕しており、栄地区は店舗事業所数、商品販売額及び売り場面積では名駅駅前地区の倍近い水準にある(表2)。栄地区はヨコに奥行きのある店舗街、名駅地区はタテに奥行きのあるオフィス街としての顔を有しているといえよう。
(表1)

建物名称 竣工年 階数 延床面積
JRセントラルタワーズ 平成14年 地上51階・地下4階 126,011坪
ミッドランドスクエア 平成18年 地上47階・地下6階 58,519坪
名古屋ルーセントタワー 平成19年 地上40階・地下3階 22,651坪
名古屋プライムセントラルタワーズ 平成21年 地上23階・地下1階 10,365坪
名古屋ビルディング 平成21年 地上14階・地下2階  3,259坪
※JRセントラルタワーズはオフィス棟の階数
資料:当研究所調べ 
(合計) 220,805坪

 

 

(図2)

(図3)

(※1)公5-17は平成22年に選定替えがあったため、平成22年の価格は当研究所で推定
(※2)基5-1は平成15年に選定替えが行われたため、平成14年までのデータと連続しない

(表2)



商店街等 事業所数
(件)
就業者数
(人)
年間商品
販売額(百万円)
売り場面積
(㎡)
栄町商店街 57 3,927 115,883 71,670
南大津通商店街 151 3,417 166,428 103,087
広小路商店街 10 93 2,293 1,538
サン大津商店街 36 231 5,879 3,312
栄地下街 61 393 6,660 3,010
サカエチカ 56 412 7,021 3,508
中日ビル 65 250 3,332 3,605
パルコ 289 1,834 37,545 22,961
ナディアパーク 26 470 9,589 11,028
751 11,027 354,630 223,719
 





商店街等 事業所数
(件)
就業者数
(人)
年間商品
販売額(百万円)
売り場面積
(㎡)
メイチカ 12 98 1,021 657
ユニモール 61 313 5,072 4,306
テルミナ地下街 30 298 5,307 1,762
新幹線地下街エスカ 47 224 3,044 3,054
名駅前桜通商店街 21 257 8,568 2,498
大名古屋ビル地下街 12 65 1,088 638
名駅一丁目商業集積地区 109 8,257 162,569 99,016
ミヤコ地下街 8 23 332 358
名古屋地下街 40 272 3,484 2,472
新名フード地下街 8 32 623 381
ミッドランドスクエア 31 420 4,372 4,939
379 10,259 195,480 120,081

資料:商業統計調査を基に当研究所で集計・作成

 

栄地区と名駅駅前地区のさらなる激戦(これから)

これからの名古屋市は、短期的(10年内)、中期的(20年内)タームで大きく変貌しそうだ。短期的要因としては、大規模複合ビルの竣工による床の大量供給である。名駅駅前地区では、今後7年内に60万㎡を越える床が順次供給される計画。栄地区でも構想段階のものを含めると、少なく見積もっても10万㎡を越える床が供給される見込みである。既にオフィス床の供給過剰感があるなか、これら床の短期間での大量供給は両地区の相対的な地位に劇的な影響をもたらす可能性がある。またそれとは別に、栄地区では名古屋テレビ塔の利活用等、久屋大通り公園の魅力アップに向けた民間から都心の賑わい提案が公表されているほか、市による同公園の100m道路特区提案なども出されており、人が集まる魅力ある都心づくりへ動き始めている。名駅駅前地区でも、協議会によるエリアマネージメント等が研究・検討されており、”名古屋の玄関口”として官民一体となったまちづくりが既に始動している。このように、短期的には栄地区と名駅駅前地区では今まで以上のさらなる激戦となりそうだ。
 中期的要因としては、リニア中央新幹線の開業である。平成39年(2027)に東京・名古屋間の開業が目指されており、所要時間は最速40分程度とされている。リニア新駅の開設は名古屋全体の商業環境に大きな影響を及ぼすことは必須である。

最悪のシナリオは、ストロー現象により名古屋全体の商業が大きな打撃を受けることである。そのようなシナリオとならないよう、両地区が競争するということではなく、今の段階から共に発展・共存できるよう知恵を出し合い、持続可能なしくみづくりに取りかかり「いい意味での競争」をしていくことが必要だ・・・。


栄地区

 


名駅駅前地区

名古屋市ってこういうまち

 家計調査報告(総務省)によると、名古屋市では1世帯あたりの外食にかける費用が全国でも高く、東京23区、岐阜市に次いで3位となっている。特に「そば・うどん」「喫茶代」の消費額は全国平均を大きく上回っており、喫茶代は3位の東京23区よりもおよそ5千円以上高い水準となっている。名古屋をはじめとした東海地区では、喫茶店のほとんどで午前11時まではモーニングサービスが行われており、各喫茶店で独自のサービス競争が展開されている。
 また、名古屋といえば、「手羽先」で有名ではあるが、鶏肉の消費金額は全国平均並であり、手羽先は自宅でというよりは、主に外食によってまかなわれているものと推測される。

   

※資料:家計調査報告を基に当研究所で作成

 また、名古屋市は「夏暑く、冬寒い」と言われているがデータで概観すると以下のとおりである。
 明治24(1891)年~平成21(2009)年間の年平均気温の推移を東京23区と比較すると「最高」気温の年平均では、昭和20(1945)年以降、名古屋市と東京23区でほとんど差がなくなってきている。


※資料:気象庁データを基に当研究所で作成

 一方、「最低」気温の平均では、昭和5(1930)年までは両地域はほとんど同じ水準にあったが、それ以降は、特に東京23区の上昇の程度が大きく、東京23区の冬は格段に暖かくなっている。このように、データからは全般的に温暖化の傾向にあり、特に最低気温でその傾向が顕著である。
 名古屋市の気候は冬も暖かくはなっているが、東京との比較で表現すると、「夏は少し暑く、冬は寒い」というのが最も的確に表したことばのようだ。

(次回の第36回:にっぽん「地価一番」物語は『浜松』)

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