第40回 金沢

新幹線特需の建設機運は消える~個性的で魅力的な街に~

第40回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~ 
住宅新報2011年1月25日号(12面)掲載
日本不動産研究所 北陸支社
不動産鑑定士  神田 勝廉

金沢市は、石川県のほぼ中央に位置する人口約46万人の県庁所在地で、平成8年(’96)4月1日、中核市に指定された北陸地方の中心都市である。江戸時代には、江戸幕府を除いて最大の石高を誇る加賀藩(「加賀百万石」)の城下町として、江戸・大坂・京の三都に次ぐ、名古屋と並ぶ大都市として盛えた。第二次世界大戦中、アメリカ軍からの空襲を受けなかったことから市街地に歴史的風情を今なお残しており、日本三名園の一つとして知られる兼六園や金沢21世紀美術館等に多くの観光客が訪れる観光都市でもある。

都市機能の郊外への移転と市中心部の空洞化

さて、金沢大学と耳にされた際に、「お城のキャンパス」とイメージされる方が多いのではないだろうか。しかし、それはおよそ20年程前の話で、学生や教職員はもとより、市民や観光客にも親しまれたこの「お城のキャンパス」は手狭になったこともあり、現在は金沢市郊外の角間キャンパスに移転している。また、前記の金沢21世紀美術館の敷地も元来は金沢大学の附属幼稚園・小学校・中学校が存していたが施設の老朽化と狭小さを理由として平和町地区へと移転した。さらに、石川県庁が金沢市西部郊外の「鞍月」地区へ平成14年(’02)に移転し、広坂に存する旧庁舎は現在では石川県政記念しいのき迎賓館として利用されている。こうした、都市機能の郊外への移転によって、長らく中心部として機能してきた「香林坊地区」の空洞化が進行しており、商業地の最高価格地が当地区(公示地の金沢5-1:写真①)から、JR「金沢」駅を中心とする「金沢駅前地区」(公示地の金沢5-4:写真②)へと平成20年(’08)を境に逆転した。「金沢駅前地区」には、従来よりホテル日航金沢を核とするポルテ金沢、ANAクラウンプラザ金沢を核とする金沢ヴィサージュといった大型の複合商業ビルが見られたが、平成18年(’06)に駅ビル「金沢フォーラス」がオープンし、近隣県からの集客力が飛躍的に向上した。


空洞化が目立ち始めた香林坊地区

 


活気のある金沢駅前地区

中心オフィス街の凋落と新幹線開業への期待

なお、オフィス街へと目を転じると、支社・営業所といった拠点閉鎖のほか、あるいは駐車場確保が困難であるということから郊外地区への移転を要因として、中心市街地に存するオフィス街では空テナントが目立ち、平日昼間時にも閑散とした印象を与えている。

 とりわけ、従来からのオフィス街中心である「南町地区」においては、シービー・リチャードエリス(株)調べによれば、昨年(’10)9月期の空室率が37.4%と全国主要都市の中でも最も高い空室率を記録するに至っている。

 一方、長野・上越・富山を経由し金沢に至る北陸新幹線がフル規格で建設中であり、2014年度(’26)の開業が予定されている。開業すれば、首都圏- 北陸間の大幅な所要時間短縮が 見込まれ、開業後の予想所要時間は、東京 – 金沢間で2時間25分程度(現在約4時間)になるとされており、リーマンショック以前には、開業後の集客を見込んでのホテル建設ラッシュが見られたが、現在では新規進出の機運はすっかり消失している。

 そのようななかで昨年(’10)11月に金沢市長選挙が行われ、5期20年間務めた前職を退け、40代の新市長が誕生した。新市長は「まちの磁力を高め、多くの人が行き交うまち」を「まちづくりビジョン」として掲げており、平成21年(’09)にユネスコの創造都市に認定されたことに代表されるように、個性的で魅力ある街作りが更に進展することが期待されている。

(次回の第41回:にっぽん「地価一番」物語は『富山』)

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