第43回 広島

駅周辺の整備に期待~投資対象として危機感も~

第43回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~ 
住宅新報2011年2月15日号(12面)掲載
日本不動産研究所 中四国支社
不動産鑑定士  後 英雄

最高地は相生通りに

広島市の商圏の中心は、旧来から八丁堀地区と紙屋町地区に大型店舗が集中し、百貨店・地下街・専門店等の商業施設や、官公庁・銀行・企業の本支店等が集積している。また、両地区の間には、小規模店舗を中心としたアーケード街の本通り・金座街商店街と、車両交通量の多い相生通りがある。相生通りには、昭和30~50年代に建築された高層店舗事務所ビルが連たんし、百貨店をはじめ、金融機関等が集積する。

広島市の現在の公示最高地は、八丁堀地区と紙屋町地区を結ぶ幹線の相生通りに所在しているが、以前はアーケード街の金座街が最高地であった。バブル崩壊後、平成7年(’95)に逆転し現在に至る。逆転時期以前から、郊外に百貨店が進出しており、以降も大型複合SC・ホームセンター・家電量販店といった大型専門店等の開設が増加している。現在においても郊外店との競合は一層激化し、商圏は分散化傾向にある。また大型複合SCから核テナントが撤退する動向もみられ、淘汰の時期に入っている。


公示最高地、広島中5-1が所在する相生通り

 


かつての公示最高地、広島中5-2が所在する金座街商店街

八丁堀・紙屋町地区の歴史と展望

(歴史)

広島市は城下町として栄え、西国街道(山陽道)を城下に通し、その一部が現在の「本通り」となっている。日清・日露戦争時より、軍関係の施設が多く設置され、軍事拠点としての性格が強くなる。大正時代、市内電車が広島駅-紙屋町-相生橋線などで開通すると、八丁堀・紙屋町が、城下町時代からの経済的中枢で最大の繁華街であった中島地区(現在の広島平和記念公園が所在)と肩を並べるようになった。
 昭和20(’45)により最盛時約42万人であった広島市は焦土と化す。昭和24年(’49)「広島平和記念都市建設法」の施行により、復興が本格的に進む。
 八丁堀地区には、戦前から「福屋八丁堀」が開業しており、昭和30年(’55)「天満屋広島八丁堀」、昭和45年(’70)「三越広島店」、そして紙屋町地区には、昭和49年(’74)「そごう広島店」が開業している。これら百貨店はいずれも相生通り沿いにある。

(展望)

築年の古いビルが多く、高水準の空室率であるオフィス市況において、平成21年(’09)頃から、スクラップ&ビルドにより、新規供給の動きがみられる。紙屋町交差点では、大型複合ビルが平成23年(’11)11月に完成予定で、新陳代謝が期待できる。
百貨店は、改装や増築を行い、大型書店と組んで業態を超えて集客を図る動きがみられる。高齢化が進む状況において、八丁堀・紙屋町両地区の距離は、高齢者にとっても徒歩圏でありコンパクトで、交流軸の中心であり都心回帰の流れにも十分適応している。また郊外店舗とは違い、周辺にはネオン街の流川・薬研堀地区もあり、商の業種・業態が多様であり、老若男女「様々な人々と出会える」都心といえる。

危機感

地方主要4都市の地価動向を、平成16年(’04)を100とした指数で見ると、リーマンショック前のミニバブル時期において、広島市の商業地は、札幌、仙台、福岡と比較して、極めて低い上昇率にとどまっている。オフィスビルのストック状況をみても、その市場規模は小さく、築年の古いビルも多いことから、投資対象エリアとしての魅力にやや欠けるところがある。広島市の事業者数、従業者数は、平成8年(’96)をピークに減少に転じており、福岡・大阪への事務所移転もみられ、札幌・仙台・福岡と比較すると、拠点性は弱い。


※資料:国土交通省「平成22年地価公示」を基に当研究所で作成

 


※資料:当研究所全国オフィスビル調査結果(2009年末時点)

期待感

広島駅・その周辺が大きく変わりつつある。
広島市は、ほか主要都市と比較して、駅周辺開発が遅れていた。JR広島駅北口は、かつて「駅裏」とも呼ばれていたが、若草町地区では相次いで新築ビルが完成し、平成23年(’11)春にはシェラトンホテル広島がオープン予定である。二葉の里土地区画整理事業では、都心居住、業務・商業以外にも、医療・福祉エリアが計画され、がんを対象にした高精度放射線治療センターが開設予定である。当該医療施設と医師等、運営の充実がはかられると、医療センター施設・新幹線・ホテルの相互利用から、県外から多くの利用者も見込める。また広島駅の南北自由通路の計画と合わせ、南口(駅南口B・Cブロックの再開発事業等)への波及効果も期待される。

 


二葉の里土地区画整理事業

ボールパークタウン計画

平成21年(’09)3月に完成した広島市民球場の周辺に計画されている「ボールパークタウン」にも動きがみられ、大型商業施設を核テナントとして誘致し、平成24年(’12)12月オープン予定である。紙屋町地区にあった旧球場と比較して、観戦後どこにも寄らずに帰宅する人が増えていたが、周辺商業施設が整備されることにより、今後の波及効果が期待される。
広島駅周辺エリアのまちづくりが完成すれば、旅行客へのツアーも、医療を含めて、観光・野球観戦等、1日でも多くの宿泊をしてもらえるような、より魅力のある広島を演出することができると思われる。
また、広島駅の商圏が拡がり、八丁堀地区までの交通がスムーズに行われると、より大きな相乗効果が図られる。

 


広島市民球場の周辺に計画されている「ボールパークタウン」東側

(次回の第44回:にっぽん「地価一番」物語は『鳥取』)

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