第47回 山口

県庁都市自体も分散型~民間空港再開で注目の岩国~

第47回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~ 
住宅新報2011年3月15日号(12面)掲載
日本不動産研究所 山口支所
不動産鑑定士 仁王頭 毅

地価は人や物の出入りにより経済活動が行われる常態の程度に相関があると考える。出入りとは昼夜の人通りであったり、車・船舶等の往来により、その地点で経済活動が行われる常態である。そう考えると、人口の多い都市がその常態の程度は活発であるといえ、山口県においては、人口順に、下関市28万1千人、山口市19万7千人、宇部市17万4千人、周南市15万人、岩国市14万4千人で、宇部市を除いた各都市における地価の最高価格地は商業活動の起点となる最寄り駅からほど近い地点に所在する。

交通の要衝・下関

下関市の最高価格地は、JR「下関駅」から海峡ゆめタワーに向かった道路沿いで、ペデストリアンデッキにも接面するシーモール付近である(H22(’10)相続税路線価1㎡あたり23万円)。周辺の地価公示地における地価推移をみても、バブル経済崩壊後、一貫して下落傾向にある。中国地方では人口規模が5番目の都市で、日本銀行の支店も山口市ではなく下関市に所在するなど県下の中で営業拠点をおく企業も多く、経済面でも山口県西部の中心都市であるが、関門海峡を挟んで九州と対峙するため、北九州市との経済的および文化的な繋がりが深く、北九州市における開発動向が地価にも影響を与えている。かつてほどではないが、山陽道と山陰道の結節点であり、また国際定期旅客航路をもつ下関港に近接した交通の要衝である「下関」駅の整備は現在進行中であり、この整備並びに周辺の活性化事業に伴う波及効果に注目したい。
 山口市の最高価格地は、JR「新山口」駅南側の駅前広場付近の地点である(相続税路線価同19万円)。新幹線停車駅である所在地域(合併前は吉敷郡小郡町)が平成17年(’05)10月に山口市と再合併したことにより山口市の最高地点となり、ここ数年は、合併の期待感から、営業所や事業所、ホテルといった需要により周辺の地価下落をよそめに安定的に推移していたが、こうした期待感も薄れ、現在は緩やかな下落傾向である。市外へ向けてのターミナル駅であるが、県下の行政・文化の中心はJR山口線「山口」駅を中心として湯田温泉に至る地域であり、こうした分散型の県庁所在地も珍しいと思われる。


県下最高価格地点の下関駅付近

 


山口市の新山口駅南側

宇部市は、宇部興産を中心とした重化学工業を基幹産業とした工業都市であり、その地区周辺から発展した経緯から、JR山陽本線ではなくJR宇部線沿いに市街地は形成されていることから、宇部市の最高価格地(相続税路線価同10万5千円)は市役所周辺に位置する。人口では県内3位であって潜在的な購買人口は高いものの、バブル以降の郊外型店舗の出店攻勢により商業施設の分散化が顕著であったため、最高地価付近の店舗としての吸引力は下降した状態が続き、宇部市においても中心市街地活性化が課題とされている。

徳山駅周辺の整備

周南市の最高価格地は、JR「徳山」駅前北側のロータリーから右手に入った中央街(銀座通り)に所在する(相続税路線価同16万円)。周南市の沿岸部は石油コンビナートが連なった山口県の工業地帯の中心的存在であり、当駅も新幹線停車駅であることから、10数年前は当駅周辺の地価公示地点が県下でトップであったが、バブル経済崩壊と隣接の下松市に大型店舗が進出したこと等の影響をうけ、その下落傾向は顕著であった。最高価格地の周辺は旧来から区画整理されたビル街区が拡がり、県下においても都市化された街並みであるだけに、今後の徳山駅周辺整備計画の誘致施設等の動向が注目される。

岩国市の最高価格地は、JR「岩国」駅からやや南下したフジグラン付近の地点である(相続税路線価同17万円)。広島方面に向かった沿岸部は日本初の石油コンビナートが立地し周南市と並ぶ工場地帯である。また、その南側に隣接するのは在日米軍の岩国基地であり、その中の岩国空港はかつて民間航空機も就航していたが、平成24年度(’12)には再開港する運びとなった。ターミナルビルから「岩国」駅までは数㎞しか離れておらず、中国地方の中枢都市である広島市から35㎞しか離れていないこともあって、もともと広島経済の影響を受けてきた岩国市が、民間空港再開により、「岩国」駅周辺に、さらには広島県西部に、どのような影響を及ぼすのか注目される。


周南市の徳山駅前の中央街

 


岩国駅やや南のエリア

 

(次回の第48回:にっぽん「地価一番」物語は『高松』)

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