第49回 徳島

徳島県は四国だけど“関西”でもある?!~徳島の地理的特殊性を活かせるか~

第49回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~ 
住宅新報2011年3月29日号(13面)掲載
日本不動産研究所 徳島支所
不動産鑑定士 伊藤 修一郎

急峻な四国山地等によって分けられた四国4県は、それぞれ違った方向に向いていると言われるが、特に徳島県は関西の台所とも言われ、昔から海上交通によって関西との結びつきが強い。平成10年(’98)、明石海峡大橋の開通によって徳島県は関西と“地続き”になったと言っても過言ではなく、最近では「関西広域連合」の一員となり、ますます関西地区の一翼を担うようになった。しかし、その変遷の過程において受けている影響は大きいものがある。

商業地の変遷

昭和50年代~平成10年頃:
徳島市中心市街地の地位を保持しながらの変遷
新町地区(旧来の商店街エリア)から内町地区(JR徳島駅前周辺)へ

平成10年頃~現在:
郊外及び県外に広がった商圏と徳島市中心市街地の衰退
徳島市中心市街地vs郊外の大型SC(ショッピングセンター)vs香川県内の商業地域vs大阪・神戸などの関西の商業地域、という“四つ巴(どもえ)”状態

 

眉山より、市内から北東にかけての眺望
眉山より、市内から北東にかけての眺望

昭和50年代~平成10年頃:徳島市中心市街地の変遷

徳島市の中心市街地は、JR徳島駅を中心とする「内町地区」と、そこから南東方約1キロにある、江戸時代の城下町のころから商業の中心地であった東新町商店街を中心とする「新町地区」に大きく分けられる。

「新町地区」などの旧来商店街エリア
 新町地区などの各商店街は、かつては百貨店や映画館などが集まり、四国でも最大級の繁華街を形成していたが、昭和50年代以降モータリゼーションの進展やJR徳島駅周辺地区の発展などにより急速に衰退し、通行量は昭和40年代の5%程度まで落ち込み、シャッター街となった通りにはもはや過去の隆盛の面影は見られない。

JR徳島駅前を中心とする「内町地区」
当該エリアは、昭和58年(’83)の「そごう徳島店」(①)開店以降、平成5年(’93)にJR徳島駅ビル「徳島クレメントプラザ」(②)が完成するなど、「新町地区」の衰退とは対照的に順調な発展を続けていた。

 


そごう百貨店(①)、JR徳島駅ビル(②)、MEITENGAI(名店街)ビル(⑤)で囲まれた駅前広場が中心となっている。

平成10年頃~現在:郊外及び県外に広がった商圏と徳島市中心市街地の衰退 郊外型大型SCの進出

徳島市中心市街地としての地位を確立してきた「内町地区」であったが、平成13年(’01)吉野川を挟んで北側の北島町にオープンした県内最大規模のシネコン併設大型SC(ショッピングセンター)「フジグラン北島」やロードサイド店舗の相次ぐ進出によって、ますます本格化するモータリゼーションを背景に、当該エリアから郊外への顧客流出が加速していった。

県外商業エリアへの流出
そして、なんと言っても決定的なのが、平成10年(’98)の神戸淡路鳴門自動車道の開通、平成15年(’03)の高松自動車道完成を始めとする高速道路網の整備やETC休日特別割引などによる香川県や神戸・大阪への顧客流出である。
まるでストローのように県外へと吸い上げられているというのが実感だ。
それは顧客流出だけにとどまらず、企業等の支店・営業所の撤退や、日帰り観光客・ビジネスマンの増加と宿泊者の激減など、中心市街地の客足は減る一方である。
また、市内にはかつてはダイエー、ジャスコ、サティの大型スーパーがあったが、地元資本の勢力が強く、複数の地場スーパーがチェーン展開を行っており、市街地や郊外を問わず市内一円に店舗が張り付いている徳島市内にあって、郊外大型SCや県外への顧客流出の影響を強く受けた結果、平成16年(’04)以降5年間で全て撤退し、市街地の空洞化にさらなる拍車をかけることとなった。

現在は…
 市内の公示地の最高価格地「徳島5-1」(JR徳島駅前広場に接面(③))の価格推移を見ると、ピーク時の平成4年(’92)に1当たり363万円、その後のバブル崩壊、リーマンショックを経て、平成22年(’10)には50.4万円とピーク時の約14%水準まで下落し、今なお下落傾向は継続している。
 一方、新町地区の東新町商店街の目抜通りに位置する地価調査地点「徳島(県)5-1」(④)は衰退が著しい。


「徳島5-1」のポイントはカレーハウスCoCo壱番屋(③)。最近では、タリーズコーヒー、スターバックス、餃子の王将、マツモトキヨシ、ロフトなどの大手チェーン店の出店が目立つが、顧客流出には歯止めがかからない。

 

最近では、平成18年(’06)の「MEITENGAI(名店街)ビル」(⑤)のオープン、タリーズコーヒー、スターバックス、餃子の王将、マツモトキヨシ、ロフトなどの大手チェーン店の出店など、市外への消費者を食い止めるべく力を入れているが、顧客流出にはあまり歯止めがかかっていないのが現状である。
 さらに、本年冬、吉野川を挟んで北側の藍住町に県内最大級の大型SC「ゆめタウン徳島(仮称)」がオープン予定であり、ますます郊外の吉野川北岸エリアの求心力が増強される一方、中心市街地の地盤沈下は加速の度合いを強めている。
 そんな中、平成20年(’08)に西新町商店街などの新町西地区において「新町西地区市街地再開発事業」(分譲マンション、音楽ホール、食品系スーパーなどで構成)が発表されたが、その後協議は難航し、事業の見直しも含めて現在は不透明な状況であり、徳島市中心市街地への顧客回帰の道筋は未だ見えてこない。
しかし、新町側の河畔に整備されたボードウォーク(⑥)にて、毎月1回「徳島わくわく日曜朝市」が開催され、地道ではあるが確実な足取りで香川県や関西からの人出が増えており、少しずつではあるが中心市街地への顧客導入に向けた成果が表れてきている。

 

このように、四国地方でありながら、関西地区でもある徳島県は、今のところメリットよりもいわゆる“ストロー効果”によるマイナスの影響が強く表れているというのが現実の姿である。
四国でありながら関西に近いという地理的特殊性をどう活かすか。大都市に近いながらも自然の魅力に溢れた徳島ならではの良さをどう発信していくか、今後に期待したい。

(次回の第50回:にっぽん「地価一番」物語は『高知』)

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