第3回 京都

歴史と伝統の観光都市 ~平成19年(’07)に新政策、高さ制限強化~

第3回全国まち・住宅・不動産 ~話題のスポット~ 
住宅新報2011年5月10日号(12面)掲載
日本不動産研究所 京都支所
不動産鑑定士 蒲地 正博

はじめに

 「京都」といえば言わずと知れた観光都市。皆様も修学旅行などで一度は訪れたことがあるのではないでしょうか。
 平成20年(’08)の観光客数は5,000万人を超え、歴史ある神社仏閣・町家・自然景観・京料理・着物など日本文化を色濃く残した観光資源が、修学旅行生や外国人観光客を多数誘致することに貢献しています。
 このように京都が魅力ある観光都市として世界的関心を寄せられているのは、従来からの伝統文化の保全・再生・融合を都市計画において実現してきたからです。今回は、観光資源を守るために設けられている景観政策についてご紹介したいと思います。


花見小路:歴史的景観保全修景地区

 


鴨川:風致地区特別修景地域

京都市の景観政策

 京都市中心部は周囲を山麓に取り囲まれた盆地で、山並みを中心とした自然景観の保護が都市計画における重要項目のひとつです。観光地として著名な寺社境内・庭園等からの眺めや五山送り火で有名な「しるし(大文字・妙法・舟・鳥居・左大文字)」への眺め等を保全するため、視点場から視点対象への眺望を遮らないよう細微に至る規制がなされています。

 


大文字山:歴史的風土特別保存地区

 また、京都市の景観政策として代表的なものの一つに建築物の高さ規制が挙げられます。平成19年(’07)9月に実施された新景観政策により京都市中心部における建築物の高さは最高で31m、住宅地であれば15m程度に規制されました。したがって、大都市で一般的になりつつある超高層マンションは見られませんが、私たちの事務所がある御池通は高さの揃ったビルやマンションが建ち並んでおり秩序ある町並みを形成しています。

 


御池通:31m高度地区

建築物や屋外広告物についても町並みとの調和が重視され、全国的な企業のコーポレートカラーであっても、下地の色を落ち着いた色にしたり、鮮やかな部分を少なくするなど、他都市とは異なる京都独自の屋外広告物が誘導されています。
例えば、全国チェーンのコンビニエンスストアの看板も写真のとおり下地を無地にすることで周囲との調和を図っています。牛丼チェーンやファーストフード、アパレル店舗、携帯ショップ、郵便局、銀行等も各社のコーポレートカラーを基礎として京都市独自の屋外広告物を設置しています。


歴史遺産型第2種地域

 


沿道型第5種地域(特定第2地区)


沿道型第5種地域(特定第2地区)

 


一般第3種地域

土地価格の動向

 京都市では景観政策として上述の建築物高さ規制・屋外広告物規制のほか、自然歴史的景観・市街地景観・眺望景観の保全等種々の景観政策により、他都市と比較して開発手続きが煩雑化し建築の自由度が限定的であることから、短期的には土地価格へマイナスの影響が出ることが懸念されました。弊所調査により、各景観地区の指定による建築費負担増、設計の自由度等を考慮して、現時点で考えられる定性的な価格への影響度をまとめると下表のようになります。なお、不動産取引市場における新景観政策による実際の定量的な影響度については未だデータ収集段階で、秩序的景観が維持形成され効果が実現されるのは数十年以上にわたる時の経過が必要という見解もあり、今後取引動向を継続的に注視する必要があります。

おわりに

 京都を代表する繁華街・四条河原町では平成22年(’10)に「河原町ビブレ」・「河原町阪急」が閉店してしまいましたが、河原町阪急の後継テナントとして「京都マルイ」が平成23年(’11)4月にオープンしました。外装は京都のイメージに合わせた薄茶色の木目格子が基調となっております。皆様の町に「マルイ」がありましたら是非見比べてみて下さい。一味違う印象を持たれるのではないでしょうか。「京都」は今後も古き良き伝統と新しい文化を取り込みながら発展していくことが期待されます。

 


京都マルイ

(次回の第4回:全国まち・住宅・不動産 ~話題のスポット~は『神戸』)

全国の地価動向マップはこちら

この地区の事業所はこちら