第24回 山梨(富士北麓)

外国人客の獲得が鍵に ~知名度向上へ様々な手立て~

第24回全国まち・住宅・不動産 ~話題のスポット~ 
住宅新報2011年10月11日号(12面)掲載
日本不動産研究所 甲府支所
不動産鑑定士 森松 祐介

 

 
 富士山5合目の登山ターミナル

 山梨県は「山はあっても山梨県、海はなくとも甲斐の国」などと言われる内陸に位置する。県土の約8割を山林が占める自然豊かな県で、東京都心から車で2時間程度の距離のため多くの観光客が年間を通じて訪れている。富士北麓地域はこの観光客のうち約4割が訪れることから県内随一の観光地と言え、富士山五合目や山中湖・河口湖など有名な観光スポットを有している。

 当地域は山間部で耕地に乏しく、また農業に適さない寒冷地であったことからサービス業に活路を見い出してきた歴史があり、江戸時代は富士山信仰による関東各地からの参拝者で賑わい、明治時代には外国人の避暑地として利用され、大正時代には本格的な観光開発が行われ、日本の経済成長と共に余暇需要を取り込んできた。
 しかし、バブル崩壊以降は長引く景気の低迷により他の観光地と同様に集客に苦しみ、別荘地においても国内富裕層の資産デフレから徐々に需要者層が限定され、購入者も割安感のある中古物件を指向する人が増えるなど地域全体で地盤沈下が進んできた。

 一方、外国人観光客にとって富士山は日本の象徴であり、その綺麗な円錐状の雄姿が好まれることから、最近では富士北麓の観光客の日本人と外国人の比率がほぼ同じと言われるほど当地域の外国人観光客は多くなり、特に中国人を中心としたアジア系の観光客が目立っていた。

 しかし、今年3月の東日本大震災により状況は一変することとなった。日本人観光客は震災直後は急減したものの、その後は夏期の節電による避暑地人気や近場旅行指向を反映して現在では微減程度で落ち着いている。一方、外国人観光客は福島第一原発事故の風評や追い打ちをかけるように進んだ円高のため激減したままであり、現在も震災直後と比較して目立った回復は見られない。


地域経済活性化のために駅名が「富士山」になった富士急行線駅

 しかしながら、山梨県側からの富士山登山者数は過去最多であった昨年の約26万人より震災の影響や天候不順により減少したものの今年も20万人を超えるなど、依然として富士山人気が高いことは変わらない。また、地元では平成25年('13)の富士山世界文化遺産登録への動きを本格化させたり、富士山へ一番近い富士急行の既存駅の名称を「富士山駅」に変更するなど、各種振興策を展開しており、国内有数の観光資源である富士山の更なる活用と知名度向上に取り組んでいる。

 特に地元ホテル・旅館にとって、国内観光客の日帰り志向は年々強くなってきていることから、安定的な宿泊需要が見込める海外団体ツアー客の存在感は大きく、官民一体となったアジア方面に向けての安全性アピール等による早期の外国人観光客の回復が望まれており、その動向が富士北麓の地域経済に与える影響は大きい。

 

(次回の第25回:全国まち・住宅・不動産 ~話題のスポット~は『長野』)

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