第25回 長野

街の魅力再発見~歴史や文化の薫る街並み景観が地域の活力と観光資源に~

第25回全国まち・住宅・不動産 ~話題のスポット~ 
住宅新報2011年10月18日号(16面)掲載
日本不動産研究所 長野支所
不動産鑑定士 塚田 賢治

 

 
 善光寺前のアールデコ様式の洋館と蔵造りの商家の街並み

 長野市は国宝善光寺の門前町で、北国街道の宿場町も兼ねた商業都市、観光都市として発展してきた。観光の中心は年間約600万人、7年に一度の御開帳時には約1,000万人が訪れる善光寺で、ほかに年間約100万人の入り込みがある飯綱や戸隠高原、約60万人の真田家十万石の城下町「松代」などがある。

 善光寺は、撞木造りという独特な建築様式の本堂を中心に、仁王門から山門に至る仲見世通り沿いには約60の土産品や仏具等の店舗が軒を並べ、その背後の通り沿いには39の宿坊が建ち並ぶ。善光寺門前の参道も兼ねた中央通り沿いには、江戸時代から大正時代にかけて建築された蔵造りの商家や洋館などの歴史的文化的な景観が多く残されているが、門前町として発展してきた歴史を持ちながらも、近年の都市景観の変貌や中心市街地の空洞化、社会構造や価値観の変化等により、伝統的な建造物が老朽化のため取り壊される等、歴史的文化的価値の喪失が危惧されていた。

 

 
 真田10万石の松代藩文武学校と武家屋敷の街並み

 このような状況のなかで、信仰の総本山と宿坊、仲見世、門前の各機能が一体となった街並みの魅力が再認識され、地元企業や団体を中心に歴史的文化遺産の保全や再生、活用を考えるなかで、善光寺の世界遺産への登録を目指す気運が高まっていった。県と長野市は平成18年(’06)、平成19年(’07)に世界文化遺産の暫定リストへの登録に向けた提案書を提出したが、平成20年(’08)に候補外となった。引き続き「善光寺と門前町」の世界文化遺産登録に向けた調査研究が進められるとともに、善光寺及び周辺の重要伝統的建造物群保存地区の選定のための準備が進められている。

 このような地道な活動の結果、最近は、善光寺周辺の古民家に暮らしたり、蔵を改装して飲食店や事務所として利用する若者が増え、門前にバックパッカー向けの低料金の宿がオープンするなどの新たな動きも見られるようになった。

 長野市のもう一つの歴史的文化遺産が多い観光地は、真田十万石の城下町として栄えた「松代」で、武家屋敷や街道沿いの古い町屋、街の中をめぐる泉水路(各戸の庭の池を結ぶ松代特有の水路網)などの風情ある街並みと松代城址、文武学校、旧真田邸等の真田家由来の史跡も多く残る歴史と文化の町でもある。

 こちらも過疎化や高齢化などによって歴史的建造物や文化財が失われつつあることが指摘されており、これらの文化遺産をまちづくりの観点からも積極的に保存し活用していくことが求められていた。

 長野市は昭和63年(’88)に「長野市都市景観形成基本計画」を策定し、条例の制定や街並み環境整備事業等による景観行政を進めてきたが、更によりよい景観形成を図るために、平成19年(’07)に景観法に基づく「長野市景観計画」を策定した。そのなかで、善光寺周辺地区の一部と松代地区の一部を「景観計画推進地区」として指定し、地区別の景観形成基準を定めるとともに、電線類地中化や道路美装化、石積み水路の復元等の街並み環境整備事業の推進、地区住民主導の景観形成や維持活動に対する支援等が行われている。

 平成26年度(’14年度)中には、長野新幹線は北陸「金沢」まで延伸される予定であり、今後北陸地方の観光地との競合による観光産業への影響が懸念されるが、景観計画策定の目的のひとつである「訪れる人にきてよかった、またきてみたいと思っていただける魅力的な『選ばれる都市“ながの”』をめざして、官民一体となった取り組みが行われている。

 

(次回の第26回:全国まち・住宅・不動産 ~話題のスポット~は『松本市、安曇野市』)

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