第29回 名古屋

変わる中心市街地~二極の共存、共栄探る~

第29回全国まち・住宅・不動産 ~話題のスポット~ 
住宅新報2011年11月15日号(14面)掲載
日本不動産研究所 東海支社
不動産鑑定士 恒川 雅至

名古屋市中心市街地の形成 

 名古屋市の骨格は1610年名古屋城の築城・開府を起点とし、城下町として周到に計画され、城を中心に南側に武家屋敷・その先に町人街を配置し、主要幹線である熱田から名古屋城に至る本町通りの熱田寄りには寺社を配して戦時の備えとした。当時の碁盤の目に区画割りされた街区は、今も概ね当時のまま活用されている(中心市街地:栄地区等)。

名古屋市の中心市街地の二極化

 
 名古屋市中心部の位置図

 現在の名古屋市中心市街地は、大きく「名駅駅前地区」と「栄地区」の二極構造になっている。平成14年(’02)以降、名駅駅前地区に複数の大規模複合ビルが次々と開業し、名古屋初のSクラスオフィスビルが供給されたほか、質の高い大規模店舗・ホテル等が供給され、人や物の流れに変化が生じており、平成19年(’07)以降は名古屋市商業地の最高価格地点も「栄地区」から「名駅駅前地区」に移動している。ただし、店舗を中心とした商業地域の広がりは未だに栄地区が名駅地区を凌駕しており、名駅地区はタテに発展しているオフィス街、栄地区はヨコに展開している店舗街としての特徴を有するに至っている。

 今後の名古屋市中心市街地においては、短期的(10年内)には、名駅駅前地区を中心とした大規模複合ビルの竣工による床の大量供給(栄地区を含み少なく見積もって10万㎡を超える床供給見込み)、中期的(20年内)には、リニア中央新幹線の平成39年(’27)の東京・名古屋間の開業により、オフィス床の需給関係・商業環境が大きな影響を受けることは必須であり、ストロー現象により名古屋市全体の商業・業務市場が大きな打撃を受ける最悪のシナリオを回避するためには、両地区が単純な競争関係から持続可能な共存・共栄段階に進むための仕組みづくりが必要である。

栄地区の復権に向けて

 具体的な開発計画が目白押しの名駅駅前地区に対し、今のところ目立った開発構想のない栄地区では、従来からの中心的地位の復権に向けて、久屋大通公園の魅力アップ・名古屋テレビ塔の利活用等、人が集まる魅力ある都心づくりへ向けて動き始めている。
 名古屋テレビ塔は、栄地区を南北に貫く久屋大通公園に立地する我が国最初の「集約電波塔」であり、今を去ること60年余り前(昭和28年(’53)2月)、日本におけるテレビ放送開始に先立ち、放送局の電波アンテナを1本に集約する構想の下に、愛知県・名古屋市・郵政省(現在の総務省)・NHK・CBC(中部日本放送)・中部財界等の総力を結集し、昭和29年(’54)6月に竣工・開業した大規模建造物である。振り返ってみれば、名古屋テレビ塔の建設は戦後名古屋市の復興計画のシンボル事業であり、現代におけるPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業の先駆けに位置づけることもできる。平成23年(’11)7月、テレビ地上波の完全デジタル化移行に伴い、初期の役割を終えた名古屋テレビ塔は、新たな電波塔機能を敷設することにより「現役」の登録有形文化財(平成17年(’05)7月登録)としての存続を模索しつつあり、名古屋市も展望台・商業施設を併設する我が国の塔風景の原型として、中心市街地の活性化に向けた新たな利活用を検討しつつある。

 

名古屋テレビ塔とオアシス21。オアシス21は平成14年(’02)11月に整備された、バスターミナルを併設する立体的な都市公園。足下(地下1階吹き抜けスペース)のイベント広場の周囲には商業施設(約4,100㎡)がある。

(次回の第30回:全国まち・住宅・不動産 ~話題のスポット~は『静岡市、長泉町』)

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