第5回 山形

全国の地価情報

歴史的な資産を活かす~「紅の蔵」「みずの町屋」など~

第5回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~                                                   
住宅新報2010年5月11日号(12面)掲載
日本不動産研究所 山形支所
不動産鑑定士 武田雄

2つの中心市街地

山形市は、人口25万人程度の東北の県庁所在地としては一番小さな市で、中心商業地は主に七日町地区、山形駅前地区に分かれる。

七日町地区は、江戸時代より商業地域として発展し、明治以降は県内政治の中心となったことから、紅花商人の蔵や、旧県庁「文翔館」などの趣のある建造物が残っている。また、江戸初期に完成した農業及び生活用水を確保した山形五堰(せき)の1つ「御殿堰」の清流が市街部を走る。主に旧来からの小売を中心とした商業地。

一方、山形駅前地区は、主に1970年(昭和40年)代に区画整理された地域で、山形駅、バスターミナルを有し交通接近事情に優るため、1階の低層は銀行などの店舗、中高層階は事務所が入る生保ビルが点在し、事務所街としての性格が強い。

七日町地区の地価公示5-1(写真①)の土地価格は、ピーク時の93年(平成5年)で1㎡当たり100万円だった。バブル後、市街部の拡大に伴い、93年(平成5年)に「ジャスコ山形北ショッピングセンター」、97年(平成9年)に「イオン山形南ショッピングセンター」などの大型店が相次いで郊外に進出、山形自動車道の開通による仙台市へのアクセスの向上などから顧客の流出、歩行者通行量の減少が続き、今年の地価公示5-1の価格は1㎡当たり23.3万円に下落した。

更に大きな土地価格の変動がみられるのが山形駅前地区にある地価公示の最高価格地点山形5-4(写真②)で、ピーク時の土地価格は93年(平成5年)の1㎡当たり149万円だったのが、2010年(平成22年)現在では24.9万円とピーク時の17%程度。県内で一番バブルの影響が出た地点でもある。

平成5年以降新規の大規模なテナントビルの着工は見られないものの、テナント需要の減少傾向が続いている。七日町地区と異なり低層部分への需要構造が変化し、銀行関係等の店舖が減り、コンビニや飲食店の進出も見られるようになった。

昨年12月、中心市街地活性化基本計画の目玉の1つである「山形まるごと館 紅の蔵」がオープンした。その入場者数は予想を大幅に上回った。紅の蔵は、小規模ながら現存する紅花商人の蔵などを、そば屋、カフェ、土産店といった複合施設として利用したもので、客層は中高年が多いという。

また、「みずの町屋 七日町御殿堰」(写真③)が4月28日開業した。街並みに隠れていた古くからの堰を整備し、その隣にこれも小規模ながら木造2階建の町屋風で11件のテナントが予定される建屋を建築したもので、これも古くからある資産を利用したものである。

更に複合施設となっているナナビーンズ(旧山形松坂屋)の上層階を減築し、「七日町御殿堰」と回遊性を持たせるよう整備する計画である。

 


(写真①)旧来からの中心市街地・七日町の最高価格地点


(写真②)山形駅前地区の最高価格地点


(写真③)活性化施設として誕生した
「みずの町屋 七日町御殿堰」

身の丈に合った策

この中心市街地活性化基本計画には、店舗付きマンション建設などもあるが、昔からの資産を利用した開発が多く盛り込まれている。いずれも旧来の大型開発とはいえず、むしろ小規模な整備で、身の丈に合った街づくりである。その最初の施設である「山形まるごと館 紅の蔵」の好調な出足をみると、歩行者通行量の減少が続く山形市中心部に、「賑わいの拠点の創出」につながるのではないかという期待も強まってくる。

(次回の第6回:にっぽん「地価一番」物語は『福島』)

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