第12回 奈良

にぎわう「1300年祭」~観光依存からどう脱却するか~

第12回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~
住宅新報2010年6月22日号(14面)掲載
日本不動産研究所 奈良支所
不動産鑑定士 松山順一

世界遺産と観光都市

奈良県はいま、「平城遷都1300年祭」でにぎわっている。特に平城宮跡会場(写真①)では、オープン38日目で来場者が100万人を突破するなど、予想以上の人出を記録している。年間約1400万人の観光客が訪れる奈良市も、その効果が相当見込まれそうだ。

奈良市は東大寺・興福寺など世界遺産が点在する、歴史的文化遺産と一体化した国際観光都市である。中心市街地の玄関口は近鉄奈良駅だが、駅前の国道369号(大宮通)沿いの商業集積度は低い。背後には昔ながらの町並みが多く残り、大小合わせて約20の商店街がある。最も繁華性が高いのは、近鉄奈良駅に続く東向商店街で、平成20年度(’08)の通行量調査によると、17年ぶりに1日約2万人を超えた。

地価公示の最高価格地「奈良5-1」は、近鉄奈良駅前近くにある銀行店舗。平成22年(’10)公示は1㎡当たり54万円。また、東向商店街には地価調査地点「奈良(県)5-2」(写真)がある。平成21年(’09)7月時点価格は1㎡当たり47万円だった。

両地点の価格推移を見ると、平成3年(’91)のピーク時以降平成8年(’96)頃までは40%~60%程度の開きがあったが、最近は20%前後にまで縮まった。東向商店街のポテンシャルの高さがうかがえる。


地価公示、地価調査最高価格地点の価格推移

 


(写真①)平城宮跡の大極殿


(写真②)奈良市内一の繁華街・東向商店街 


(写真③)もちいどのセンター街にある「もちいどの夢」

しかし、中心市街地全体は厳しい状況にある。平成17年(’05)に「ダイエー奈良店」が閉鎖、今年初めには映画館「シネマデプト有楽」が閉館した。その中で注目を集めているのが「もちいどのセンター街」。この商店街は元興寺の旧境内地を中心に伝統的な町家が立ち並ぶ観光スポット「ならまち」に近く、「新・がんばる商店街」にも選ばれた。

平成19年(’07)に廃業店舗跡地約250㎡を活用して若手の起業・創業者支援拠点のインキュベーション施設(もちいどの夢CUBE)(写真)が開業。10㎡程度の小スペースを低家賃で3年を期限に賃貸、今年(’10)4月には2期目生がスタートした。また、空き店舗にスーパーマーケット「オーケスト」が開業。これらを契機に商店街内の出店が増え、活気が戻ってきた。

真価は“祭り”の後に

奈良の中心市街地活性化は、観光抜きには語れない。だが、中心市街地活性化基本計画で、観光客に依存したいわゆる「大仏商法」からの脱却、既存ストックの活用が課題として掲げられていた。平城遷都1300年祭で予想以上の人出を呼んでいるが、パビリオン中心のイベントにしなかった意義は大きいと言われてる。“祭り”の後、この経験を生かし、どのように活性化していくのか期待されるところである。

(次回の第13回:にっぽん「地価一番」物語は『和歌山』)

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