第14回 福岡

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博多駅、巻き返しなるか~九州新幹線来春開業 中国・韓国商圏に可能性~

第14回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~                                                    
住宅新報2010年7月6日号(14面)掲載
日本不動産研究所 九州支社
不動産鑑定士 山崎健二

中心地・天神パワーも


建設中の新博多駅ビル

福岡市の商業中心地はなんと言っても中央区の「天神」である。しかし昭和30年代(’55)までは都心と言えば天神ではなく博多区の川端町だった。昭和50年頃(’75)に天神地下街や天神コア、博多大丸ができて天神の地位は確固たるものになった。その後約40年間、福岡といえば天神と言われる時代が続いてきたが、ここにきてその地位を揺るがしかねない事態が起きている。

平成23年(’11)春に九州新幹線が全線開通し、それとともに延べ床面積20万㎡を誇る堂々たる「新博多駅」が完成するのだ。九州新幹線が全線開通すれば、博多駅と鹿児島中央駅は1時間20分で結ばれるほか、熊本市に至っては35分という近さだ。九州全土からひと・もの・かね・情報が集まり、新生「博多駅」は膨大な集客力と拠点性を手中に収めることになる。
この新博多駅ビルは関西No1の「阪急百貨店」が入り、「東急ハンズ」やシネコン等が入る巨大複合商業施設で、ご覧のような「はばひろ」の商業施設となっている。はばひろなのには理由があり、JR「博多」駅は福岡空港から直線距離で約3kmの位置にあり、航空法の絶対高度制限を受けるため背の高い建物は建てられないからだ。航空法の制限がなければ、名古屋や札幌のようなランドマークとなる駅ビルが建設できたのだが、それができないためにランドマークを横に倒した思いっきり「はばひろ」のビルとなった。

設計は三菱地所設計が行っているので丸の内にあるような男性的なビルに仕上がっている。発展要因の多い博多駅の地価はまだ様子を窺っている段階であるが、新博多駅が華々しくオープンする頃には、思わぬ高値で近隣が売買されることも考えられ、不動産鑑定士としては暫く目の離せない注目エリアとなっている。

一方で、都心の地位を死守すべく商都「天神」も黙ってはいない。この3月には天神の中心、旧岩田屋本館跡に「パルコ」(売場面積12,500㎡テナント数154)がオープンし、平成16年(’04)から約6年間空きビルだった超一等地が久々に光り輝いた。さらに今年の秋には天神西通り(天神2丁目)に「アバクロ」アジア第2号店が出店する。高級アメカジの気位の高いお店だ。このほか噂段階だが「バーニーズNY」の出店も取りだたされており天神パワーは止まることを知らない。天神は天神地下街を動脈として三越、博多大丸、岩田屋の各百貨店とイムズ、天神コア等の専門店が結節する強力な集客網を持っており、博多駅が開業したとしてもその商業集積力はまだ大きな差があると言われる。


天神に3月に開業したパルコ 

天神のライバルは平成16年頃(‘04)はマリノアシティ等郊外の大型アウトレット店であり、平成20年頃(’08)からウォン安になって買い物しやすくなった一番身近な外国「ソウル」が加わった。「天神のデパートで買い物ばするより韓国で買った方が安すかし、同じお金で旅行まででくぅるし」ことから、インターナショナルブランドをソウルで購入する傾向は続いており、天神は、生まれてはじめての消費流出という挫折を味わった。今回、第3のライバルとして「新博多駅」が加わることになるが、度重なる試練と戦ってきた天神は、どう乗り越え、勝ち抜いていくのだろうか?

さて、オーバーストアと言われて久しい福岡市で、限られたパイを奪い合うことになる両雄「天神」と「博多駅」は、来年以降、真っ向から勝負することになるが、ガチンコ勝負しないですむ方法が一つだけ残されている。自らその商圏をアジア諸国に拡大することだ。幸いに福岡市は韓国や中国と物理的に近い立地特性を有しており、アジア系の観光客が多い(個人的には欧米人にもっと来てほしいが折からのユーロ安で暫くは望むべくもない)。マンションもタワー型マンションの上層階を中国人富裕層が数十戸購入する例が増えており、中国・韓国との交流は否応なく拡大している。

さらに今年はその中国から豪華クルーズ船の博多港寄港が計69回予定されており、昨年(’09)の3倍近い中国人富裕層が福岡市を訪れることになり、一人3万円程度の買い物をすると福岡市に及ぼす経済効果は30億円近いと言われる。韓国もウォン安で一時期観光客が激減していたが、ウォン安も一服し、経済が急ピッチで復調しているため最近になって再びたくさんの観光客が福岡を訪れるようになった。韓国内では平日でも3万円以上するゴルフが日本だと1万円程度で楽しめること、日本には風情のある温泉旅館が多いことから九州に来る観光客は増えている。来年、韓国は新幹線の全線開通を控えており、余剰になった飛行機をLCCでどんどん九州に飛ばしてくると見られ、今以上に観光客が増えるのは必至である。

その中国人・韓国人にとって、たいていの商業施設は本国にもあるため必ずしも珍しくない。しかし前述の「アバクロ」は中国・韓国にはない商業施設である。是非少しマッチョなイケメンのお兄さん達がかしずくようにして外国のお客様をおもてなし魅惑してほしいものである。「博多駅」と「天神」がWin-Winの関係でいられるように、商圏を拡大し、街中の主要な場所には英語・中国語・韓国語のできるコンシェルジュがいる、そんな福岡市になってほしいものだ。

筋の通った「らしさ」を

最後に、人口減少社会が続く限り、均衡ある国土の発展は理想であるが難しいと感じている。厳しい都市間競争を勝ち抜いていくため、それも群雄割拠するアジア諸都市の中で福岡が特色のある魅力的な都市として輝き続けるためには、一本筋の通った「らしさ」が必要である。音楽も温泉も芸術も歴史遺産も突出したものがない、人魚姫像や凱旋門等の象徴的なものもない福岡市の一番の魅力は、「道行くお姉さん達がきれいで、海も山も近いし食べ物が美味しいコンパクトな都会」である。この危うい曖昧さを、「らしさ」に磨き上げること、商圏を拡大し外国投資を呼び込むためには今「らしさ」が求められていると感じる。


(福岡市中央区の商業地の価格)

平成3年(’91)にはバブル前の水準の3倍以上に達し、平成4年(’92)以降は下落。その後平成17年(’05)に底値をつけて上昇に転じたが、サブプライム問題で再び下落に転じ、現在は昭和58年(’83)の水準に対し、82%程度に止まっている。バブルの絶頂時から見ると地価は1/4となっており、やや落ちすぎという印象である。

(次回の第15回:にっぽん「地価一番」物語は『那覇』)

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