第19回 熊本

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熊本は生き残れるか? ~九州新幹線の開設による影響~

第19回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~
住宅新報2010年8月17日号(12面)掲載
日本不動産研究所 熊本支所
不動産鑑定士 伊牟田 徹

熊本市の政令市への移行と九州新幹線の全線開通

熊本県の県庁所在地である熊本市は、平成22年(’10)3月に付近の2町と合併し、人口が約72万8千人と合併特例法による条件を満たすことになったため、平成24年(’12)4月には政令指定都市に移行する見込みです。政令指定都市としては、全国で20番目、九州では福岡市、北九州市に次ぎ3番目となる予定です。また、九州新幹線の全線開通が平成23年春に迫っており、熊本駅周辺の工事が急ピッチで進められています。

JR九州の発表によると、昨年度乗降客数は鹿児島中央駅が開業前の平成15年度(’03)に比べ約100万人増えて年間約630万人となったのに対し、熊本駅は約360万人と約30万人減少したことが分かりました。ほかの主要駅でも鹿児島県側の健闘が目立ち、平成20年度(’08)を除き鹿児島中央駅は増加傾向、熊本駅は減少傾向にあり、明暗が分かれています。また、熊本駅は乗降客数が九州内の駅で13位とベスト10から外れ、最多の博多駅(3,522万人)の約10分の1の水準となっています。政令指定都市への移行や九州新幹線全面開通による観光客増加の期待が高まる反面、ストロー現象懸念も根強く、プラス面やマイナス面の両方を抱えている状況です。そこで、その対策として、熊本市が力を注いでいるのが熊本駅と熊本城です。

熊本駅

熊本の中で一番大きいターミナル駅が熊本駅です。

熊本駅には、鹿児島中央駅や博多駅のように大きな大型商業施設の建設はなく、東口方面に「ザ・熊本タワー」マンションを中心とした「くまもと森都心(写真①)」が平成24年(’12)に完成予定です。このタワーマンションは、地元の購入希望者が多く、完売も近いようです。

ただ、熊本駅前が1つの核となり、現在の市中心部(下通地区など)と競合し、福岡市の天神と博多駅のような関係になる可能性は低いと思われます。駅周辺の再開発によって出来るビルは、商業ビルとしての面もありますが、その中に業務施設、医療施設などの複合的なビルとなっており、今後、人通り等がどう変化していくかは未知数です。

写真②の中心に写っている熊本駅舎は、あの有名な「安藤忠雄」の建築デザインです。

もともと熊本駅には西口がなく、西口方面は特に何もない住宅地域でした。そこに再開発による波が押し寄せ、この写真②のように開発が進行しています。やはり、新幹線が開通することは熊本にとって「百年の計」であり、地域浮上のビックチャンスであることは間違いありません。

 


(写真①)駅東口の「くまもと森都心」


(写真②)安藤忠雄デザインによる「熊本駅舎」

熊本城の力

熊本といえば、阿蘇山と並び熊本城が有名だと思いますが、この熊本城が上記のマイナス面の大きな解決策となるはずです。

なぜなら、昨年沖縄の首里城を抜きお城の来場者数で全国1位になるという快挙をなしえたからです。その理由として、本丸御殿の復元や韓国等からの観光客の増加が考えられます。しかし、昨今の不況により円高基調であることから韓国からの観光客の減少や本丸御殿の吸引力の弱体化により、今年は来場者数があまり伸びていないと聞いています。やはり熊本城は一度見れば十分で、再び熊本城を訪れようとする気持ちを湧かせるような何かが足りないのでしょう。

そこで、熊本市はリピーターが増えるように、熊本城の南西側に「桜の馬場城彩苑」という観光物産館を作っています。この建物は、熊本城のエントランス部としてふさわしい熊本城の景観を壊すことの無い建物になるようです。ただいま急ピッチで建築中です(写真③)。

これにより熊本城周辺地域への回遊性が増大することが期待されています。

 


(写真③)熊本城と建築中の観光物産館「桜の馬場城彩苑」

実はマンガ大国!?

 熊本県は、色んなマンガに縁のある地域といえる気がします。
 たとえば、ワンピースの尾田栄一郎先生(熊本出身)、バガボンドの井上雄彦先生(熊本大学文学部中退)、他にも色々なマンガに縁のある人達がいらっしゃるみたいです。
 尾田先生は、風光明媚な「天草」の風景を見て、井上先生は、熊本での学生時代に霊巌洞(宮本武蔵が晩年兵法書「五輪書」書いた場所(写真④))を見て作品のイメージを描いたのかもしれない!?と思います。ファンの方々は是非来熊していただき、縁の地を訪ねられたらいかがでしょうか。また、作者の赤塚不二夫先生ではないですが、バカボンのパパは熊本県菊池市立七城中学校出身であるのはご存じでしょうか?。現在写真⑤のモニュメントが同中学校の卒業生により作製され、中学校の入口に設置されています。


(写真④)霊巌洞

 


(写真⑤)バカボンのパパ モニュメント

熊本市の地価

 下記のグラフは熊本市の最高価格を付けている商業地(写真⑥)と住宅地の価格推移を示しています。

商業地・住宅地の地価は、いずれも平成6年(’94)をピークに下落基調にあります。平成19年(’07)前後のファンドバブル期に一度上昇しましたが、その後は、サブプライムローン等の理由により、再び下降傾向を示しています。

ただ、熊本市には市町村合併(’10)、新幹線開通(’11)、政令指定都市への移行(‘12)の"三つの春"によって、いい風が九州、そして熊本に吹くことを望んでいます。

 


(写真⑥)熊本市内一の繁華街「下通1丁目」

 

(次回の第20回:にっぽん「地価一番」物語は『長崎』)

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