第20回 長崎

龍馬は中心市街地再生の救世主となりうるか ~ファンづくり 魅力を再構築へ~

第20回にっぽん「地価一番」物語 ~全国の中心市街地はいま~        
住宅新報2010年8月24日号(14面)掲載
日本不動産研究所 長崎支所
不動産鑑定士  萩野和伸

地価はピーク時の14%

 長崎県内の地価最高地点は、陸の玄関口「長崎」駅前ではなく、同駅から南東方約1.4kmに位置する浜町アーケード街のほぼ中心部(地価公示「長崎5-8」地点付近(写真①))である。同地区は、百貨店・銀行・各種専門店等が建ち並ぶ繁華街の一角を占める。

 公示地「長崎5-8」の地価推移をみれば、図-1のとおり、価格のピーク時は平成4年(’92)、1㎡当たり775万円。その後、15年連続でマイナス傾向を辿り、平成20年(’08)には横這いとなった。これは長期化した地価下落による値ごろ感からマンションやホテル、駐車場等に対する需要が強く、下げ止まりの傾向が翌年平成21年(’09)まで続いた。しかし、その後の世界的金融危機の影響で地価は一転下落に転じ、平成22年(’10)は4.5%の下落となっているが、まだ下げ止まりの兆候は見えない。平成22年(’10)の地価は106万円とピーク時の約1/7まで落ち込んでいる。

 


(写真①)外国人観光客で賑わう浜町アーケード街(地価最高地点付近)

中心商店街への歩行者通行量・建物利用用途に変化

長崎商工会議所発表の歩行者通行量調査によると、商業中心部の浜町アーケード街及び観光通アーケード街では、近年は、休日と平日の歩行者の数が逆転していることが判明した。これは、アーケード街内の店舗にマツモトキヨシを代表とするドラッグストアの出店、産地直送の無農薬野菜等の販売店舗の出現、オフィス街に入居していた大手旅行会社の移転によるテナント入居、ジュエリーショップ、ネイルサロンなど地元住民を対象とする店舗集積のほか、空き店舗を活用した観光客をターゲットとした「長崎まちなか龍馬館」「さるくワークステーション」の設置など建物利用用途に変化が見られ、また、外国人旅行客のショッピングコースとして商店街を加えてもらうために旅行会社への斡旋など、平日の時間帯での活動に照準を合わせた結果といえるであろう。

また、歩行者通行量調査結果(表-1)より各調査地点の変化を見れば、最高価格地点の減少傾向(特に日曜日)が顕著なのに対し、新たな上記店舗の出店が多い周辺の地点(観光通アーケード街:写真③、浜町アーケード街入口付近:写真②)も日曜日の減少傾向は目立つが、最高地点のエリアより小幅の減少となっている。

一方、浜町アーケード街と競合関係にある夢彩都ショッピングセンター付近(写真④)は平日は健闘しており、休日も減少幅は小幅にとどまっている。
今後はNHK大河ドラマ「龍馬伝」の長崎編が開始されたことによる国内観光客と、韓国・中国を中心とする外国人旅行者の市内中心部への導入効果が進み、更に平日と休日との格差は顕著な動きとなろう。

表-1 歩行者通行量調査にみる通行量の推移

 
(写真②)浜町アーケード街入口付近

 


 (写真③)観光通アーケード街(龍馬館・旅行会社)

 


(写真④)夢彩都ショッピングセンター前

龍馬ブームに乗った長崎市のこれから

平成21年(’09)の長崎市の観光客延べ数は、対前年0.5%増の約559万人、修学旅行やコンベンションの増加に加え、軍艦島上陸解禁、亀山社中記念館オープンといった新たな魅力の創出が増加要因としてあげられる。また、外国人宿泊客延滞在数は、52万5千人。多い順に韓国、台湾、米国、中国、香港となっている。長崎港への国際観光船の入港は48隻、乗船者数約6万人と増加しており、中国からのクルーズ客船「コスタ・アレグラ号」や「コスタ・クラシカ号」の増加が主要因となった。外国人入域客はアジアを中心に豪華クルージングでの富裕層が押し寄せている。これらの外国人観光客が観光名所のほか、長崎市内中心商店街に来街する環境づくりを旅行会社の支援を受け進めており、効果が出始めている。

長崎市は、観光立国(ビジット・ジャパン)を牽引する都市である「国際観光文化都市・長崎」の再生という観点から、平成20年(’08)12月に国土交通大臣により都市再生総合整備事業の実施区域として指定を受け、長崎市・長崎県共同で「長崎市中央部・臨海地域」都市・居住環境整備基本計画を策定しており、整備目標として、①平和都市の魅力の強化、街並み景観の保全、環境に配慮した都市・交通機能の強化など都市の魅力の強化、②道路・公共交通等のネットワーク整備、さるくまちとしての機能の充実など回遊性の充実、③新幹線と国際・離島航路の接続等国際ゲートウェイ機能の再構築を掲げている。 近時の一大事業となる、九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)の実現とJR長崎本線連続立体交差事業等との連携による、長崎駅周辺土地区画整理事業の整備の効果は、観光立県としてふさわしい顔(陸の玄関)が創造されることから、国際交流観光都市長崎にとって新幹線は重要なツールとなり、国内の高速交通ネットワークに連結される意義は大きい。

「龍馬伝」の放映で長崎のまちが盛り上がりを見せており、国内外から多くの観光客が訪れ、長崎の認知度は高まってきた。しかし、今後は龍馬以外の長崎の魅力を再発見・再構築し、市民協働のまちづくりを実践して、長崎ファンを増やし、再来してもらう努力が必要となろう。

(次回の第21回:にっぽん「地価一番」物語は『佐賀』)

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