鑑定評価の用語の説明

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1.不動産の種類

不動産の種別及び類型の二面からなる複合的不動産の概念です。鑑定評価の手順においては、不動産を二つの面から分類し、主として、価格形成要因を分析するときは種別を、鑑定評価手法の適用については類型を手がかりとしています。

2.不動産の種別

不動産の用途に関して区分される不動産の分類をいいます。

 2-1 地域の種別

地域の種別は、宅地地域、農地地域、林地地域等に分けられます。

  2-1-1 宅地地域

宅地地域とは、居住、商業活動、工業生産活動等の用に供され、建物・構築物等の敷地の用に供されることが、自然的・社会的・経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいい、住宅地域・商業地域・工業地域等に細分されます。

  2-1-2 農地地域

農地地域とは、農業生産活動のうち耕作の用に供されることが自然的・社会的・経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいいます。

  2-1-3 林地地域

林地地域とは、林業生産活動のうち木竹又は特用林産物の生育の用に供されることが自然的・社会的・経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいいます。

 2-2 土地の種別

土地の種類は下記に別れます

  2-2-1 宅地
  • 宅地 : 宅地とは、宅地地域のうちにある土地をいいます。
  • 住宅地 : 住宅地とは、住宅地域のうちにある土地をいいます。
  • 商業地 : 商業地とは、商業地域のうちにある土地をいいます。
  • 商業地 : 商業地とは、商業地域のうちにある土地をいいます。
  • 工業地 : 工業地とは、工業地域のうちにある土地をいいます。
  • 移行地 :
    移行地とは、宅地地域、農地地域等のうちにあって、細分されたある種別の地域から、その地域の他の細分された地域へと移行しつつある地域のうちにある土地をいいます。
    宅地地域内にあって、住宅地域から商業地域へと移行しつつある地域内の土地を例示すれば、以下のとおりです。
  2-2-2 農地

農地とは、農地地域のうちにある土地をいいます。

  2-2-3 林地

林地とは、林地地域のうちにある土地(立木竹を除く)をいいます。

  2-2-4 見込地

見込地とは、宅地地域、農地地域、林地地域等の相互間においてある種別の地域から他の種別の地域へと転換しつつある地域のうちにある土地をいい、宅地見込地、農地見込地等に分けられます。
農地地域等から宅地地域へと転換しつつある地域内の土地を例示すれば、以下のとおりです

3.不動産の類型

不動産の有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される不動産の分類をいいます。

 3-1 宅地の類型

宅地の類型は下記のように別れます。

  3-1-1 更地

建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいいます。

  3-1-2 建付地

建物等の用に供されている敷地で建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいいます。

  3-1-3 借地権

借地借家法(廃止前の借地法を含む)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいいます。

  3-1-4 底地

 
宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいいます。

  3-1-5 区分地上権

工作物を所有するため、地下又は空間に上下の範囲を定めて設定された地上権をいいます。

 3-2 建物及びその敷地の類型

建物及びその敷地の類型は下記のように別れます。

  3-2-1 自用の建物及びその敷地

建物所有者とその敷地の所有者が同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地をいいます。

  3-2-2 貸家及びその敷地

建物所有者とその敷地の所有者が同一人であるが、建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地をいいます。

  3-2-3 借地権付建物

借地権を権原とする建物が存する場合における当該建物及び借地権をいいます。建物は貸家と自用があります

  3-2-4 区分所有建物及びその敷地

建物の区分所有等に関する法律第2条第3項に規定する専有部分並びに当該専有部分に係る同条第4項に規定する共用部分の共有持分及び同条第6項に規定する敷地利用権をいいます。

1.価格の種類

価格の種類は下記のように別れます

 1-1 正常価格

市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいいます。

 1-2 限定価格

市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいいます。

 1-3 特定価格

市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいいます。

 1-4 特殊価格

文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいいます。

2.賃料の種類

賃料は下記の種類に別れます。

 2-1 正常賃料

正常価格と同一の市場概念の下において、新たな賃貸借等(賃借権若しくは地上権又は地役権に基づき、不動産を使用し、又は収益することをいう)の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいいます。

 2-2 限定賃料

限定価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料(新規賃料)をいいます。

 2-3 継続賃料

不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料をいいます。

3.賃料の概念

賃料の概念は下記のように別れます。

 3-1 実質賃料

賃料の種類の如何を問わず貸主に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等(必要諸経費等という)から成り立つものです。
実際に貸主に支払われている賃料の算定の期間に対応するすべての経済的対価を、実際実質賃料といいます。

 3-2 支払賃料

各支払時期に支払われる賃料をいい、契約に当たって、権利金、敷金、保証金等の一時金が授受される場合においては、当該一時金の運用益及び償却額と併せて実質賃料を構成するものです。
各支払時期に実際に貸主に支払われている賃料を、実際支払賃料といいます。

1.標準価格

近隣地域において最も普遍的な地価形成要因を具備し、地価水準の指標となる標準的画地の価格をいいます。

2.同一需給圏内の代替競争不動産

個々の不動産の用途、規模、品等等の類似性に基づき代替競争等の関係が成立する同一需給圏内の不動産をいいます。

1.鑑定評価の方式

不動産の鑑定評価には、原価方式、比較方式、収益方式の三方式があります。
人は物の価値を費用性、市場性、収益性の3つの観点から考慮しているのが通常です。
これを価格の三面性とよんでいます。不動産の鑑定評価も、この価格の三面性を反映した三方式があります。

2.鑑定評価手法

不動産の鑑定評価の方式は、上図のように、価格を求める手法と賃料を求める手法に分類されています。

試算価格 試算賃料

それぞれの鑑定評価手法の適用により求められた価格又は賃料のことで、例えば原価法によって求められた試算価格は積算価格といいます。

3.価格を求める方法

価格を求める方法には下記のものがあります。

 3-1 原価法

価格時点における対象不動産の再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法(この手法による試算価格を積算価格という)をいいます。

   再調達原価

対象不動産を価格時点において新たに再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいいます。

 3-2 取引事例比較法

多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法(この手法による試算価格を比準価格という)をいいます。

   配分法

取引事例が対象不動産と同類型の不動産の部分を内包して複合的に構成されている異類型の不動産に係る場合において、当該取引事例の取引価格から対象不動産と同類型の不動産以外の部分の価格が取引価格等により判明しているときは、その価格を控除し、または当該複合不動産について各構成部分の価格の割合が取引価格、新規投資等により判明しているときは、当該事例の取引価格に対象不動産と同類型の不動産部分に係る構成割合を乗じて、対象不動産の類型に係る事例資料を求める方法をいいます。

 3-3 収益還元法

対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより、対象不動産の試算価格を求める手法(この手法による試算価格を収益価格という)をいいます。
収益価格を求める方法には、「直接還元法」と「DCF法」があります。

  3-3-1直接還元法

一期間の純収益を還元利回りにより還元して求める方法で、純収益の変動等は還元利回りに集約される手法です。

  3-3-2 DCF法(割引キャッシュフロー法)

Discounted Cash Flow Methodの略で、連続する複数の期間に発生する純収益等を明示し、その分析期間の純収益(キャッシュフロー)の現在価値と当該期間末における復帰価格の現在価値を合計して求める手法をいいます。

 3-4. 開発法

原価法・取引事例比較法・収益還元法の考え方を活用した更地の鑑定評価手法の一つです。
イ.更地を一体利用することが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して求める手法をいいます。
ロ.更地を分割利用することが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地を区画割りして、標準的な宅地とすることを想定し、販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して求める手法をいいます。

4.新規賃料を求める手法

新規賃料を求める手法には下記のものがあります

 4-1 積算法

対象不動産について、価格時点における基礎価格を求め、これに期待利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して対象不動産の試算賃料を求める手法(この手法による試算賃料を積算賃料という)をいいます。

 4-2 賃貸事例比較法

多数の賃貸借等の事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る実際実質賃料(実際に支払われている不動産に係るすべての経済的対価をいう)に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた賃料を比較考量し、これによって対象不動産の試算賃料を求める手法(この手法による試算賃料を比準賃料という)をいいます。

 4-3 収益分析法

一般の企業経営に基づく総収益を分析して対象不動産が一定期間に生み出すであろうと期待される純収益(減価償却後のものとし、これを収益純賃料という)を求め、これに必要諸経費等を加算して対象不動産の試算賃料を求める手法(この手法による試算賃料を収益賃料という)をいいます。

5.継続賃料を求める手法

継続賃料を求める手法は下記のものがあります

 5-1 差額配分法

対象不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料又は支払賃料と実際実質賃料又は実際支払賃料との間に発生している差額について、契約の内容、契約締結の経緯等を総合的に勘案して、当該差額のうち貸主に帰属する部分を適切に判定して得た額を実際実質賃料又は実際支払賃料に加減して試算賃料を求める手法をいいます。

 5-2 利回り法

基礎価格に継続賃料利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法をいいます。

 5-3 スライド法

現行賃料を定めた時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法をいいます。

 5-4 賃貸事例比較法

新規賃料を求める賃貸事例比較法に準じて試算賃料を求める手法をいいます。

1.用途地域

用途地域には下記のものがあります

 1-1 第1種低層住居専用地域

低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域です。建物の高さは原則として10mまたは12m以内とされており、また、北側の隣地境界からの斜線制限を超えて建てられませんので、日照などの居住環境を確保することができます。建ぺい率は30%、40%、50%、60%、容積率は50%、60%、80%、100%、150%、200%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。
都市計画で定められた建ぺい率、容積率を指定建ぺい率、指定容積率といいます。

 1-2 第2種低層住居専用地域

主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域です。建物の高さは原則として10mまたは12m以内とされており、また、北側の隣地境界からの斜線制限を超えて建てられませんので、日照などの居住環境を確保することができます。建ぺい率は30%、40%、50%、60%、容積率は50%、60%、80%、100%、150%、200%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。

 1-3 第1種中高層住居専用地域

中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域です。高さの最高限度は定められておりませんが、建物は原則として北側の隣地境界からの斜線制限を超えて建てられませんので、日照などの居住環境を確保することができます。建ぺい率は30%、40%、50%、60%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%、500%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。

 1-4 第2種中高層住居専用地域

主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域です。高さの最高限度は定められておりませんが、建物は原則として北側の隣地境界からの斜線制限を超えて建てられませんので、日照などの居住環境を確保することができます。建ぺい率は30%、40%、50%、60%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%、500%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。

 1-5 第1種住居地域

住居の環境を保護するための地域です。建ぺい率は50%、60%、80%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%、500%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。
指定建ぺい率が80%で、防火地域内の耐火建築物は建ぺい率の制限はありません。

 1-6 第2種住居地域

主として住居の環境を保護するための地域です。建ぺい率は、50%、60%、80%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%、500%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。
指定建ぺい率が80%で、防火地域内の耐火建築物は建ぺい率の制限はありません。

 1-7 準住居地域

道路の沿道として(ロードサイド)の地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。建ぺい率は50%、60%、80%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%、500%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。
指定建ぺい率が80%で、防火地域内の耐火建築物は建ぺい率の制限はありません。

 1-8 近隣商業地域

近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するための地域です。建ぺい率は60%、80%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%、500%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。
指定建ぺい率が80%で、防火地域内の耐火建築物は建ぺい率の制限はありません。

 1-9 商業地域

百貨店・専門店・飲食店・事務所・料理店・劇場・映画館などの各種の商業業務施設が集まる都心などの商業業務の利便を増進するための地域です。建ぺい率は80%で、防火地域内の耐火建築物は建ぺい率の制限がなく、容積率は200%から1,300%までのうちから、当該地域の都市計画において定められます。

 1-10 準工業地域

主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するための地域です。建ぺい率は50%、60%、80%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%、500%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。
指定建ぺい率が80%で、防火地域内の耐火建築物は建ぺい率の制限はありません。

 1-11 工業地域

主として工業の利便を増進するための地域です。建ぺい率は50%、60%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%のうちから、当該地域の都市計画において定められます。

 1-12 工業専用地域

工業の利便を増進するための地域です。建ぺい率は30%、40%、50%、60%、容積率は100%、150%、200%、300%、400%のうちから、当該地域の都市計画において定められます

2.その他の地域地区

その他の地域地区には下記のものがあります

 2-1 特別用途地区

用途地域内において特別の目的からする土地利用の増進、環境の保護等を図るため定められる地区で、地方公共団体の条例により建築物の用途などについて地区の特性に応じた規制が行われます。特別用途地区の例としては中高層階住居専用地区、商業専用地区、特別工業地区、文教地区、小売店舗地区、事務所地区、厚生地区、娯楽・レクリエーション地区、観光地区、特別業務地区、研究開発地区などがあります。

 2-2 高度地区

用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、市町村が都市計画において建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区です。

 2-3 高度利用地区

用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、市町村が都市計画において容積率の最高限度と最低限度、建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度及び壁面の位置の制限を定める地区で、市街地再開発事業を行う地区です。

 2-4 防火地域または準防火地域

市街地における火災の危険を防除するため定める地域で、建築物を耐火建築物・準耐火建築物・その他の建築物に区分し、防火のため建築物の階数と規模に応じて制限が加えられます。

 2-5 景観地区

市街地の良好な景観の形成を図るため、建築物の形態意匠、高さの最高限度または最低限度、壁面の位置の制限及び敷地面積の最低限度について定める地域です。

 2-6 風致地区

都市における自然の風致を維持するため定める地区で、建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採等の行為が、政令で定める基準に従い、都道府県(一定規模以下は市町村)の条例で制限されます。

 2-7 駐車場整備地区

商業地域、近隣商業地域等の地域内で、自動車交通が著しくふくそうする地区又はその周辺地域内の自動車交通が著しくふくそうする地区で、道路の効用保持と円滑な道路交通確保のため必要があると認められ都市計画で定められた地区。この地区内では、延べ面積が2,000㎡以上で地方公共団体の条例で定める規模以上の建築物の新築、増築、用途変更をする場合には、駐車施設の設置を条例で義務づけることができることになっております。  

 2-8 臨港地区

港湾を管理運営するため定める地区で、一定の行為は届け出を要し、港湾管理者は、商港区、工業港区、漁港区、保安港区等の分区を指定することができ、地方公共団体の条例で分区内における建築物その他構築物の建設等が制限されます。

3.建ぺい率・容積率の制限

建ぺい率・容積率の制限は下記のようになります

 3-1 建ぺい率の制限

建物の建築面積(通常、いわゆる建坪と同じです)の敷地面積に対する割合(普通%で表します)をいいます。これは、建物が敷地を覆う割合であり、同じ敷地で建坪が同じであれば建物の階数に関係なく建ぺい率は同じになります。
建ぺい率の限度は、用途地域等に応じ都市計画で定められます(これを指定建ぺい率といいます)が、次の条件に当てはまる建物はそれぞれ10分の1加算(緩和)されます。
イ)一定の街区の角にある敷地等のうちにある建築物
ロ)防火地域内にある耐火建築物
ただし、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域でかつ、都市計画で定める建ぺい率が80%の地域では、ロ)だけの条件を備えれば建ぺい率の制限はなくなります。

 3-2 容積率の制限

建物の各階の床面積の合計の敷地面積に対する割合(普通%で表します)をいいます。例えば、平屋で敷地の80%を使って建てるのと敷地の40%を使って総2階建を建てるのとは、容積率は同じ80%です。容積率の限度は、用途地域等に応じ都市計画で定められます(これを指定容積率といいます)が、前面道路幅員が12m未満の場合には、指定容積率を限度に、下記のイ)又はロ)で求めた容積率(基準容積率といいます)が適用されます。

用途地域 係数(注)
第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域 4/10
第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域
第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域
4/10(6/10)
住居系以外の用途地域(例えば、商業地域)
用途地域の指定のない区域
住居系用途地域の一定の高層住居誘導地区
6/10(4/10、8/10)

※注 
( )の係数は特定行政庁が指定する区域内の建築物の場合に適用
イ)前面道路幅員による容積率の制限
幅員12m未満の道路に接面する場合は、指定容積率を限度に次式で求めた容積率が適用されます。
前面道路幅員(最大のもの)m×係数(4/10又は6/10)
(例)指定容積率が200%の第2種低層住居専用地域内で、
前面道路幅員が4mの場合
前面道路幅員4m×係数(4/10)=16/10(160%)
前面道路幅員が6mの場合
前面道路幅員6m×係数(4/10)=24/10(240%)
前面道路幅員が4mの場合の基準容積率は160%となり、6mの場合は指定容積率が上限となりますので指定容積率と同じ200%となります。

ロ)前面道路幅員による容積率制限の緩和
幅員15m以上の道路(特定道路といいます)から70m以内の距離にあり、幅員6m以上12m未満の前面道路に接面する場合は、下記により算出した数値を前面道路幅員に加算して、イ)の「前面道路幅員による容積率の制限」を適用できます。
Wa=(12-Wr)(70-L)/70
Wr:実際の前面道路の幅員
L:特定道路から敷地までの直近距離の延長
(例)指定容積率が600%の商業地域で、Wrが6m、Lが35mの場合
前面道路幅員による容積率制限の緩和が適用されない場合
6m×係数(6/10)=36/10(360%)
前面道路幅員による容積率制限の緩和が適用される場合
Wa=(12-6)(70-35)/70=3
(6m+3m)×係数(6/10)=54/10(540%)
この結果、得られた540%は指定容積率600%以下ですので、540%が基準容積率となり、前面道路幅員による容積率制限は360%から540%に緩和されます。

4.高さに関する制限

敷地の境界に接して建つ建物の高さを制限するもので、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限があります。

 4-1 道路斜線制限

道路斜線制限は、前面道路の反対側の境界線から建物までの水平距離との割合により建物の建てられる高さが制限されるもので、制限される範囲は、境界線から建物までの水平距離の一定の範囲内に限られます。また、道路境界線から後退して建築する場合や、前面道路の反対側に公園がある場合等一定の要件に該当する場合には、制限が緩和されます。

 4-2 隣地斜線制限

隣地斜線制限は、高さが20mまたは31mを超える部分を有する建物は、道路に接する部分以外の隣地の境界線から建物までの水平距離に応じ、建物の建てられる高さが制限されるもので、第1種・第2種低層住居専用地域以外の用途地域等に適用されます。高さ20mまたは31mを超える部分が隣地境界線から後退して建築する場合等一定の要件に該当する場合には、制限が緩和されます。

 4-3 北側斜線制限

北側斜線制限は、高さが5m又は10mを超える建物は、敷地の前面道路の反対側又は隣地の真北方向の境界線から建物までの水平距離に応じ、建物の建てられる高さが制限されるもので、第1種・第2種低層住居専用地域、日影規制区域を除く第1種・第2種中高層住居専用地域内に限り適用され、一定の要件に該当する場合には制限が緩和されます。

 4-4 天空率

平成15年1月から「天空率」という考えが導入され、計画建物の天空率が、道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限に適合する建物の天空率以上である場合には、道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限を超えて計画することができるようになりました。

 4-5 日影規制

商業地域・工業地域・工業専用地域以外の用途地域の全部又は一部で、地方公共団体の条例で指定する区域内にある一定の建築物は、冬至日の真太陽時の午前8時から午後4時北海道においては午前9時から午後3時)までの間において、一定の平均地盤面の高さの水平面に、2種類の敷地境界線からの距離(5m超10m以内及び10m超)に応じて定められた日影時間の限度以上に、敷地境界線を超えて日陰を落としてはならないという制限で、規制の対象区域外の区域においても、その敷地上の一定の建築物が規制の対象区域内に日影を落とす場合にも同様の制限を受けます。

5.その他の主な制限

その他の主な制限は下記のようになります

 5-1 地区計画制度

地区計画制度は、既存の他の都市計画を前提に、ある一定のまとまりを持った一体的な町づくりを行う必要のある地区を対象に、その地区の実情にあったよりきめ細かい規制を行うことを内容とした都市計画の制度です。建築物の建築形態、公共施設、その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を整えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、及び保全するために、地区施設(道路、公園等)、建築物の用途・形態・面積や敷地面積等について、市町村が一体的に計画立案します。地区計画の区域内の建築等の行為は、これによって誘導、規制されます。
具体的には、①都市計画法による地区計画、②密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律による防災街区整備計画、③幹線道路の沿道の整備に関する法律による沿道地区計画、④集落地域整備法による集落地区計画のことをいいます。

 5-2 接道義務

建築物の敷地は、原則として幅員4m以上の道路(いわゆる公道や位置指定道路等)に2m以上接しなければなりません。ただし、地方公共団体の条例により、建築物の用途、規模、敷地の形状等によって、接すべき道路の幅員、接すべき長さ等について制限がある場合があります。また、いわゆる2項道路(みなし道路)の場合には、原則として道路の中心線から2m後退した線が道路境界線とみなされ、後退(セットバック)した部分は建築物の敷地としては利用できません。

 5-3 開発行為

主として建築物の建築又は特定工作物(コンクリートプラントや一定規模以上の運動・レジャー施設など)の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいいます。土地の区画の変更とは、道路、水路等の公共施設の新設、変更、廃止などを行うことをいい、土地の形質の変更(形状及び性質の変更)とは、盛土又は切土などにより土地の造成を行うこと(形状の変更)及び山林、農地など宅地以外の土地を宅地にすること(性質の変更)をいいます。一定の開発行為を行おうとする場合には、原則として都道府県知事の許可が必要です。

1.借入れレバレッジ

投資をする際の資金調達方法について、自己資金と借入金を組み合わせることによって、全額自己資金で調達する場合よりも自己資金に対する利回りが向上することをいいます。

2.IRR(内部収益率)

IRRとは、Internal Rate of Returnの略で、将来期待できる収益の現在価値と投資額が等しくなるような割引率のことをいいます。

3.セール・アンド・リース・バック

不動産の所有者が、当該不動産を第三者に譲渡し、その譲受人から賃借することによって継続して不動産を使用することをいいます。

4.デューディリジェンス

不動産取引において、不動産の市場価値やリスクを正しく把握するために行う詳細調査のことをいい、経済的側面・物理的側面・法的側面から行われます。調査は弁護士・会計士・建築士・不動産鑑定士などに委託される場合が多いです。

5.エンジニアリング・レポート(ER)

デューディリジェンスのうち、物的側面からの調査を行い報告書にまとめたものをいいます。物的側面からの調査とは、対象不動産の建物状況調査(立地状況、管理状況、遵法性、建築物の仕上・構造、設備の劣化状況等)・地震リスク評価・建物環境リスク評価(有害物質の含有状況等の調査)・土壌汚染リスク評価などについて行った調査のことです。

1.スティグマ

土壌汚染が存在する(又は過去に存在した)ことに起因する心理的な嫌悪感等から生ずる減価要因をいいます。

2.独自調査

不動産鑑定士が鑑定評価に際して自ら行うことが義務づけられている、土壌汚染の可能性を推定するための調査のことをいいます。土壌汚染の有無を保証するものではありません。

3.土壌汚染

不動産市場や不動産鑑定評価においては、土壌汚染対策法・条例で定められた有害物質、ダイオキシン類、油(油臭・油膜)による基準値の超過をいい、自然的原因によるものを含みます。

4.土壌汚染対策法

国民の健康を保護するため、有害物質使用特定施設の廃止や一定規模以上の土地の形質の変更等を契機として土壌汚染状況調査や健康被害の防止措置を義務づける法律のことです。

5.土壌汚染調査

土壌汚染の有無及びその状態を把握するために行う調査のことをいいます。資料等調査、概況調査、詳細調査があります。

1.国際会計基準

International Accounting Standards(IAS)のことで、国際会計基準委員会(IASC)が作成した国際的な統一会計基準です。2001年にIASCが国際会計基準審議会(IASB)に改組され、現在は国際財務報告基準といいます。

2.減損会計

不動産に代表される事業用固定資産の収益性が低下し、投資金額の回収見込みが立たなくなった場合に、その資産の簿価を回収可能な金額まで減額する会計処理をいいます。2006年3月期から導入が義務付けられました。

3.棚卸資産

企業が販売することを目的として保有する資産や製造中の販売資産をいいます。不動産を販売する不動産業者が保有する土地や建物なども棚卸資産となります。

4.低価法

資産の取得原価と時価とを比較し、いずれか低い方を期末資産の価額とする会計処理をいいます。

5.賃貸等不動産

賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として企業が保有している不動産をいいます。

6.投資不動産

賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得など、投資目的で所有している不動産を管理するための勘定科目です。