不動産研究 51-1

 

第51巻第1号(平成21年1月) 特集:集合住宅居住のこれまでと今後

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第51巻第1号

新年のご挨拶

五十嵐 健之

特集:集合住宅居住のこれまでと今後

集合住宅団地の現状と再生への展望
-団地再生の流れと近年の動向をどうみるか-

川崎 直宏

 我国の集合住宅団地の再生は喫緊の課題となっているが、団地再生は依然様々な面で課題を多く抱えたまま限定的に進められており、逆に将来に禍根を残すことすら危惧される。人口の減少や高齢化等様々な状況の変化が見込まれる中、時代状況の変化を踏まえた機能再編、空間再生と住生活の持続・再生が重要である。このためには、従来の手法にとらわれずに建替えや改修のミックス、大胆な共用部分の改修、種々の事業の複合や民間事業者等の活用などが重要である。近年、調査検討や技術開発、これに基づく団地の再生事業がようやく動き始めたが、種々の制約も多くまだまだ動きは極めて遅い。しかし、先頃示された住生活基本法や超長期住宅への取組みは集合住宅の団地再生を居住の再生として捉え、社会的資産として維持・活用していく政策理念の転換となり、これを巡る資産評価や金融等の社会システムの再構築に繋がり、団地再生の追い風になることが期待される。

キーワード:団地再生、住棟改修、200年住宅

 

マンションの建替え過程におけるリスク
~老朽化マンションの出口をどう確保するか~

田村 誠邦

 マンションの建替え過程におけるリスクは、大きくは、(1)途中で頓挫するリスクと、(2)建替えができないリスクに分けられ、(1)においては、特に「建替え実現期」における事業頓挫の影響が大きいため、これを避けるための方策を講じる必要がある。(2)については、今後は、建替えると従前の床面積を確保できないマンションが増えるため、大規模修繕等により、その安全性、居住性を維持していく必要があるが、法的な制約等により、大規模修繕等を実施することも容易なことではない。対策としては、①建替えや大規模修繕に関するリスクを含む正しい知識の普及・周知、②マンション管理の質の向上、③マンション再生に関する専門家の育成、④リスクを軽減するための保険等の開発・普及、⑤法制度の適正な評価と改善・整備等が挙げられよう。中でも①は、マンションの老朽化に伴うこうしたリスクの存在が世の中に知られていないため、特に重要と考えられる。

キーワード:マンション建替え、合意形成、リスクマネジメント

 

欠陥マンションに対する買主保護をめぐる最近の動向

大野 武

 耐震強度偽装事件から3年余りが経過したが、これまでに、欠陥建築物問題に対処するための重要な立法と判例が現われてきた。本稿では、これらの動向を概観するために、まず瑕疵担保責任の履行の確保措置を定めた住宅瑕疵担保履行法について検討し、次いで瑕疵ある建物の施工者(建設業者)や設計者・工事監理者(建築士)が建築主から当該建物を買い受けた買主に対して不法行為責任を負うとされた最高裁判決について検討する。さらに、これらの立法および判例によって欠陥マンションの買主の法的保護は拡大されていったが、マンションにおいては多数の区分所有者が存在することから、その権利行使をめぐるマンション特有の理論的な問題があることが明らかになってきた。本稿では、この問題についても併せて検討することとする。

キーワード:瑕疵担保責任、不法行為責任、共用部分、分割債権、不可分債権

 

建築費の変動要因と最近の価格動向
-コストとプライスからみた建築費の傾向-

橋本 真一

 建築費には様々な変動要因があり、結果として工事原価や取引価格はもとより地域間格差にも影響を及ぼす。建築ストックの有効活用が重視されている現在、不動産市場においては建物本体の適切な価格評価が強く求められており、それに伴い建築費の価格形成メカニズムを十分理解することが重要となっている。本稿では、そのような基礎的価格変動要因とともに、各種統計データによる最近の価格動向について解説する。

キーワード:コスト、プライス、価格変動要因、寄与度

 

フリー・キャッシュフロー、EVAを用いたCRE評価に関する一考察

清水 紀夫

 先般、国土交通省から公表された「CRE戦略を実践するためのガイドライン」では、CREの財務的な評価方法としてROA、ROIC、PBRなどの財務指標があげられている。このような財務指標は、企業の会計数値の一部を取り出して、財務比率等を見ることから、その組合せが有効であれば、容易かつ効率的に企業の財務状態を把握することができる。また、絶対額を用いないことから他企業との業績比較や同一企業の時系列的な業績比較を行うのにも便利である。しかし、一方でその評価方法が企業の会計数値に依存するものであることから、会計処理方法の如何によって、大きな影響を受けやすいという性格を有している。本稿では、不動産に関わる会計処理のうち、特に問題となりやすいリース取引と減損処理を中心に、財務指標が現実の企業価値向上とは無関係に変動する場合を整理し、それを克服するため、フリー・キャッシュフローないし経済的利益に根ざした企業評価の観点からCRE を評価する方法を提案したい。

キーワード:CRE、財務指標、リース取引、減損会計、フリー・キャッシュフロー、EVA

 

最近の不動産投資市場の動向について

-第19回不動産投資家調査結果(2008年10月1日現在)をふまえて-

廣田 裕二

 当研究所は、19回目を数える「不動産投資家調査」の結果を11月19日に発表した。
 急激な円高、株価下落、サブ・プライムローン問題からリーマンショック等が話題になっている時期のアンケート実施に基づく今回の特徴は、以下の4点に集約される。

(1) 第11回から前々回まで新規投資への積極投資割合が9割超であったが、前回、一転して80%に下落し、さらに今回64%まで続落した。一方、当面、新規投資を控えるものが前々回が5%にとどまったのに対し、前回20%と急増し、今回さらに、36%まで続伸した。
(2) 全ての利回りに関して、前々回まで横ばいまたは下落傾向であったものが、前回、横ばいまたは上昇傾向に変わり、今回さらに、ほとんど全てにおいて上昇となった。
(3) オフィス賃料水準予測においては、東京都内は横ばいが大半であるが、政令都市、地方中核都市に関しては、下落予測が大半となった。
(4) 丸の内・大手町地区での期待利回りが、前回、第7回以来、横ばいまたは下落の一途であったのが、5年半ぶりに上昇したが、今回は前回と同様4.0%を維持した。一方、取引利回りは前回の3.5%から3.8%に上昇した。

 今回の調査結果全体から、投資市場は積極投資意欲がさらに減退傾向を強め、売却の方針となっている。利回りにおいて、前回調査時点では、横ばいも一定割合で確認できたが、今回は政令都市のワンルームマンション等で1%(100ベーシスポイント)の上昇を示すようにほとんどが上昇した。
 その他、回答者数が114社(過去最多)に上った今回調査では、グリーンビルへの関心の高まりを把握すべく、「グリーンビルディングへの投資」に関しても特別アンケートを実施した。

キーワード:不動産投資家調査、利回り、リーマンショック、サブ・プライムローン、グリーンビルディング

 

最近の地価動向について
-「市街地価格指数」の調査結果(平成20年9月末現在)をふまえて-

松岡 利哉

 当研究所は平成20年9月末現在の「市街地価格指数」を11月19日に発表した。「市街地価格指数」から見た最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
① 「六大都市」においては、全用途平均で平成17年9月末から6期連続した上昇基調は前期で終焉し、全ての用途で下落に転じた。その下落率は長期間低迷してる「六大都市を除く」の下落率をいきなり大幅に上回ることとなり、大都市の地価は下落基調への大転換をとげた。
② 三大都市圏別で見ると、ほぼ全ての用途で下落基調に転換し、前回まで好調であった「東京圏」「大阪圏」の下落基調が顕著となった。なかでも「東京区部」においては大幅な下落を記録し、前回調査から先駆けとして下落を記録した都心部の下落傾向がより鮮明となった。
③ 地方別で見ると、上昇基調の地方は皆無となり、下落基調の地方についてはほとんどの地方で下落幅が拡大した。継続していた下落基調の緩やかな改善傾向は今期で途切れることとなった。
④ 今後の地価の見通しについては、大都市においては商業地を中心に下落幅がさらに拡大し、地方都市においては小康状態にあった下落基調が拡大傾向で推移するものと予測する。

キーワード:市街地価格指数、地価下落基調への大転換

 

最近のオフィス及び共同住宅の賃料動向について
-「全国賃料統計」の調査結果(2008年9月末現在)をふまえて-

手島 健治

 当研究所は2008年9月末時点の「全国賃料統計」を11月19日に公表した。オフィス賃料は、サブプライムローン問題に端を発した金融危機及び不動産投資市場の変化、実体経済への影響等から東京区部が5.4%下落(前回12.9%上昇)、供給過剰で市況が悪化した仙台市が7.7%下落(前回2.6%上昇)と上昇から下落に転換しており、全国平均でも2.5%下落(前回6.5%上昇)と上昇から下落に転換した。共同住宅賃料も同様に景気の悪化で需要が縮小し、全国的に上昇または横ばいから下落または横ばいに転換し、全国平均で0.2%下落(前年0.5%上昇)となった。1年後については、オフィス賃料が大阪市や名古屋市等で横ばいから下落に転換することから下落幅が拡大して2.7%下落になると予測され、共同住宅賃料も同様に下落幅がやや拡大して0.5%下落になると予測される。

キーワード:全国賃料統計、賃料指数、市場動向

 

オフィスストックの東京一極集中と都心5区では二極化の動き
-2008年日本不動産研究所オフィスビル調査結果をふまえて-

手島 健治  菊池 慶之

 当研究所は2008年調査結果として2007年12月末時点の全国主要都市のオフィスビルを対象に、棟数や延床面積、建築年等を調査し、その結果を2008年10月6日に公表した。全都市ストックは床面積で8,512万㎡で、東京区部4,842万㎡、大阪1,269万㎡、名古屋489万㎡、主要都市1,912万㎡となっており、東京区部が全体の57%であるが、最近3年間の新築ビルでは東京区部が76%と多く、東京一極集中が加速している。都心5区の主要地区別に新築・取壊ビルを集計すると、建替動向の二極化が鮮明である。また、取壊ビルの平均築後年数が概ね35~39年であり、築40年以上のビルが建替対象になると仮定すると、建替候補は、全都市で873万㎡存在し、今後10年で1,365万㎡が加わるなど、今後のオフィス供給を判断する上で重要なカギと考えられる。

キーワード:オフィスビル調査、オフィスストック、東京一極集中、建替、二極化

 

「アメリカ不動産鑑定評価論」第13版の概要紹介

廣田 裕二

 米国で最も権威があるとされるアメリカ不動産鑑定協会による不動産鑑定評価のテキスト「アメリカ不動産鑑定評価論」が2008年6月に第13版を刊行した。近年のボーダレスとなった経済の国際化、国際的な専門職業基準、環境問題から急速に問題意識が高まったグリーンビルディング等が改訂の主要ポイントである。

キーワード:国際評価基準、国際会計基準、AQB、グリーンビルディング

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