不動産研究 48-4

第48巻第4号(平成18年10月)特集:まちづくり三法の改正が今後もたらすもの

一覧へ戻る

特集

中心市街地の活性化に向けた取組の現状と展望

経済産業省商務流通グループ中心市街地活性化室

中心市街地は、商業、業務、行政等の都市機能が集積した地域経済の核であるとともに、その歴史的・地理的特性を背景に、文化や伝統を育む場所であったが、モータリゼーションの進展、商業環境の変化等から空洞化が進みつつある。こうした状況を踏まえ、本稿では、平成10年に制定された 「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の一体的推進に関する法律」 を含む、いわゆるまちづくり三法に関連する政策の課題等を明らかにするとともに、人口減少等の社会経済環境の変化の中で中心市街地が果たすべき役割、その活性化に向けた政府の取組を示した。

特集

改正まちづくり三法を3つの視点から点検する ―小売競争・都心再生・街づくりの視点から―

田村 馨

今年からスタートする改正まちづくり三法がどれくらい実効性があるものかは現時点ではわからない。本稿では、改正三法が依拠する現状認識のうち、特に小売市場の動向やショッピングセンター (SC) の現況に注目し、中心市街地活性化に取り組む関係者が認識すべき現状や方向性について点検した。小売市場の中期的な構造変動から導かれるのは、規模や省力化が競争を決する方向ではなく、人的サービスを投入しつつ生産性や効率性を向上させる方向での経営革新、戦略展開である。既にSCは、その方向での模索をはじめており、足下商圏と共存を図る方向でテナント戦略に取り組む。古いSCのイメージにとらわれていると、中心市街地活性化はハード優先の再開発志向を強め、その分、新しい時代が要請する 「まちづくり」 を担う主体を排除することが懸念される。都心再生に取り組む関係者には発想の転換が求められている。

特集

人口減少社会におけるまちづくり戦略 ―「家守(やもり)」 事業による都心部遊休資産の再生―

大西 達也

2005年末に発表された国勢調査速報において戦後初めて日本の総人口減少が確認された。政府の将来推計より2年も早い人口減少社会が到来したのである。また、多くの地方都市では首都圏などへの人口流出による転出超過が続く中で、都心住民の郊外転出に伴う様々な都市機能の郊外移転が深刻な中心市街地の空洞化を招いている。このような状況下、中心市街地への機能集中によるコンパクトシティ化を促進し大型商業施設の郊外出店を規制する改正都市計画法、改正中心市街地活性化法が成立した。本稿では、商業のみならず今後様々な都市機能が回帰する場として再び注目を集める中心市街地において、貴重な資産となる空きビル・空室等の遊休資産再生の一手法である 「家守」 事業につき、具体事例を紹介しつつその効果と導入に向けての課題を検証する。

特集

中心市街地活性化における地域連携組織と大学の役割 ―熊本大学工学部まちなか工房の取り組み―

前田 芳男

熊本市では、全国的に注目される大規模商業施設の出店問題を抱えており、その中で、まちづくり三法改正に伴う中心市街地活性化基本計画の策定が進められている。地元商店街、経済会の動きとしては、まちづくりのコンソーシアムである 「すきたい熊本協議会」 が発足し、商店街組織などが一体となって、イベントの実施や提言活動に力を入れている。熊本大学工学部は、地域貢献の拠点施設として中心商店街の一角に 「まちなか工房」 を開設し、行政・商店街関係者等と大学教員・学生集団が日常的に顔を合わせ議論できる場が生まれた。まちなか工房も、すきたい熊本協議会の特別会員である。まちなか工房での研究成果を今般の中心市街地活性化基本計画に結び付けていくことが期待されており、地域連携組織の一員として大学が参画することの効果は大きい。

判例研究

固定資産評価基準に定める家屋の評価と不動産鑑定評価 ―最高裁判決(伊達事件)を受けて―(最高裁平成15年7月18日判決・判例時報1839号96頁)

原孝幸

調査

担い手対策の展開と田畑価格及び小作料の動向 ―田畑価格及び小作料調(2006年3月末現在)の結果をふまえて―

八木正房

調査

JREIオフィスビル調査について

宋賢富

海外事情

ドイツ・オランダの不動産市場における土壌汚染地の実態調査 ―その2―

ドイツ・オランダにおける土壌汚染地取引実態調査グループ

海外論壇

The Appraisal Journal Spring 2006

外国鑑定理論実務研究会

資料

2006年4~6月期四半期別GDP速報説明

資料

不動産関係法令の案内 国有財産法及び地方自治会の改正 ―行政財産の貸付対象の拡大を中心に―

資料

不動産統計

レポート/刊行物一覧へ戻る