五十嵐 健之
岡本 圭司
日本ビルヂング協会連合会は、 「ビルエネルギー運用管理ガイドライン」 (2008年) を制定するとともに、 「オフィスビル分野における低炭素社会実行計画」 (2010年) を策定している。 これらを着実に実施することにより、 2020年に1990年比で床面積当たり30%のCO 2 削減が可能である。 また、 オフィスビルを含む業務部門におけるCO 2 削減への自主的な取組は近年相当な成果を挙げているが、 この分野でのCO 2 排出量は複雑系ともいうべき多様な要素で構成されている。 環境不動産としてのビルストック形成に向けた政策展開に当たっては、 知識集約型社会への展望、 限界削減コストの考察、 地方都市や中小ビルへの配慮が必要である。 また、 国内排出量取引制度は業務部門にはなじまず、 都の改正環境確保条例は抜本的に見直されるべきである。
キーワード:ガイドライン、 低炭素社会実行計画、 限界削減コスト、 国内排出量取引制度、 改正環境確保条例
㈱日本政策投資銀行アセットファイナンスグループ
本稿では、DBJ Green Building認証制度の概要、及び現在までの認証実績について紹介する。
DBJでは、不動産金融市場においては環境・社会への配慮が評価されていないという現状認識から、Green Buildingの普及を促進する目的で、 不動産を5つの分野から総合的に評価し、4段階の認証を付与するDBJ Green Building認証制度を創設した。現在までの実績を踏まえ、 全体の傾向や評価レベル毎の特徴等を概観する。
キーワード:DBJ Green Building認証、 環境配慮型不動産、 付加価値
環境不動産研究グループ(廣田 裕二 内田 輝明 小松 広明)
経済事情の変動がない場合における賃料増額請求の当否と相当賃料額の判断
-大阪高裁平成20年4月30日判決(判例タイムズ1287号234頁)-
島田 博文
八木 正房
「平成の農地改革」といわれた平成21年の農地法改正により、農地利用による規模拡大を推進する対策へ舵が切られた。このため、一般企業や農村生活に関心がある若者を対象に農業参入説明会が各地で行われてきた。その後2009年9月鳩山内閣の成立に伴い、マニフェストに従い民主党政権は農家への戸別所得補償制度を導入することとし、平成22年度においては戸別所得補償モデル事業が実施された。このため、これまで食料・農業農村基本計画に基づき進められてきた大規模化への流れが多様化してきた。
本稿では、戸別所得補償対策の本格実施をまえに農家の選択肢が多様化する中で、田畑価格に影響したとみられる情勢を分析するとともに、 先に発表した「田畑価格及び賃借料調」の結果の詳細を紹介する。
廣田 裕二 菊池 慶之 谷 和也 林 述斌 曹 雲珍 髙岡 英生
当研究所は、 「第25回不動産投資家調査」 の結果を11月24日に発表した。
今回調査は、 ヨーロッパにおけるソブリンリスクの深刻化、 戦後最高値を更新する円高の進行等、 不動産投資市場にも再び不透明感が台頭してくる中で実施された。 また、 特別アンケートでは、 マーケットサイクルとフリーレントに関する調査、 3月から半年が経過した時点での 「東日本大震災の影響について」 の調査、 「環境不動産に対する投資について」 の調査を実施した。 このうち、 「環境不動産に対する投資について」 は別稿にて詳細を報告する。 今回のアンケート結果の特徴は、 以下の6点に要約される。
(1) 今回調査において、 不動産投資家の今後1年間の投資に対するスタンスは、 新規投資を積極的に行うが79% (前回比+1%) と高い水準を維持する一方、 新規投資を控えるは17% (前回比+4%) にとどまり、 依然として新規投資に積極的なスタンスであるという結果になった。
(2) Aクラスビルについて、 丸の内、 大手町地区の期待利回りは4.5%、 取引利回りは4.2%となり、 ともに第21回【09/10/01】以来5期連続で横ばいとなった。 東京都内の各地区、 主な政令指定都市においても利回りはほぼ横ばいとなった。
(3) 賃貸住宅の利回りは前回に引き続き低下傾向にあり、 ワンルームマンションの期待利回りで城南地区が5.7%、 城東地区が5.9%となった。 また、 大阪、 神戸、 広島、 福岡といった西日本の各都市で軒並み利回りが低下する結果となっている。
(4) オフィス賃料水準の予想は、 東京都内の各地区で下落予想が減少し、 賃料水準の底打ちが見込まれている。 また、 現在のフリーレント期間は東京、 大阪ともに 「6ヶ月」 となるが、 半年後の予想では、 東京が 「短くなる」 (27%)、 大阪では 「長くなる」 (26%) の回答が目立つ結果となった。
(5) 東日本大震災の不動産投資市場に対する影響に関しては、 「ほとんど影響はない」、 「影響はあったが既に消えている」 を併せて43%と、 半数近い回答者が調査時点で既に震災の影響はないとみなしていることが示された。 一方、 長期的に影響が残るとする回答は少なく、 不動産投資市場が早期に震災の影響を克服することが見込まれている。
(6) 今回の震災を受けて、 個々のビルの立地特性 (災害危険度等) や耐震・免震・制震性能などのビル性能への関心は高まる傾向にあるが、 ポートフォリオの分散など投資エリアについての関心には大きな影響は見られなかった。
キーワード:不動産投資家調査、 利回り、 投資意欲、 東日本大震災、 海外、 Global Real Estate Markets Survey
髙岡 英生
当研究所は平成23年9月末現在の 「市街地価格指数」 を11月24日に発表した。 「市街地価格指数」 から見た最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
① 「全国」 の地価は、 全ての用途で下落基調が継続しているが、 消費の緩やかな持ち直しやサプライチェーンの立て直し等を反映し、 下落幅はわずかに縮小した。
② 「六大都市」 の全用途平均の市街地価格指数 (平成12年3月末=100) は68.2となり、 今回調査においてバブル崩壊後の最低値 (従来の最低値は平成17年3月末時点の68.6) を更新した。 バブル以前では、 昭和55年頃と同程度の水準である。
③ 地方別の地価動向を全用途平均で見ると、 前回調査よりも下落幅が拡大したのは 「四国地方」 のみであった。 「四国地方」 については、 津波リスクがクローズアップされた都市において大きく下落幅が拡大した調査地点があり、 同地方の下落幅を拡大させる一因となった。
④ 東日本大震災の影響により、 前回調査において大きく下落幅が拡大した 「東北地方」 については、 全ての用途で下落幅が縮小し、 全用途平均で見ると、 前期比3.1%下落 (前回調査:5.0%下落) となった。
⑤ 三大都市圏別の地価動向を全用途平均で見ると、 「東京圏」 が前期比0.8%下落 (前回調査:0.9%下落)、 「大阪圏」 が前期比1.0%下落 (同:1.3%下落)、 「名古屋圏」 が前期比0.4%下落 (同:0.3%下落) となり、 「名古屋圏」 ではわずかに下落幅が拡大した。
⑥ 東京都心部の繁華性が極めて高い調査地点で構成される 「東京区部」 の最高価格地は、 総じて横ばい傾向で推移する中、 震災後に客足の戻りが早かった繁華街でテナントの出店意欲が堅調に推移する等、 一部で強含みの動きも見られたため前期比0.4%上昇という結果になった。
⑦ 今後半年間の地価動向については、 概ね今回調査と同様、 「六大都市」 「六大都市を除く」 とも下落基調が継続する中で下落幅が縮小するとの見通しである。 ただし、 「六大都市」 の住宅地については、 阪神間住宅地の需給が引き締まってきたこと等により下げ止まるとの見通しになっている。
※六大都市:東京区部、 横浜、 名古屋、 京都、 大阪、 神戸
東京圏:首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む都市
大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む都市
名古屋圏:中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市
キーワード:市街地価格指数、 六大都市、 バブル崩壊後最低値、 四国地方
外国鑑定理論実務研究会
・2011(平成23年)[第53巻第1号~第53巻第4号]目次一覧