Quarterly ‘Real Estate Research’
季刊『不動産研究』
昭和34年7月の創刊以来、半世紀を超える歴史を有する不動産専門誌。不動産に関する理論的・実証的研究等の場を提供するもので、日本不動産研究所役職員をはじめ、不動産に関係ある各分野の学識経験者の方々から寄せられた学術的研究論文を紹介しています。時宜にかなった特集などを組むことも特色のひとつです。
第53巻第1号(平成23年1月) 特集 : アジアの不動産市場
第53巻 第1号
新しい年を迎えて
五十嵐 健之
特集 アジアの不動産市場
中国不動産発展の現状と傾向分析
汪 麗娜・宣 暁影
中国の不動産市場は80年代の中頃から発足したばかりである。 しかし、 改革開放以来、 中国経済の年平均成長率は10%にも達し、 人口構造の変化による高貯蓄率の形成、 都市化による第三次産業の発展及び人民元切上げ予測からの不動産投資による人民元資産の価値維持と増加などは、 中国不動産市場の発展のために、 広い空間を提供すると共に、 不動産産業が国民経済の重要な柱産業になるための基礎を構築してきた。
キーワード :不動産投資、販売用不動産、都市化、経済適用住宅、土地価格指数、中国統計年鑑
アジアの不動産最新事情
林 述斌・曹 雲珍・愼 明宏・武内 朋生
判例研究(89)
土壌汚染に関する瑕疵のとらえ方
-最高裁判所第三小法廷平成22年6月1日判決、判例時報2083号77頁ほか-
内田 輝明
本件は、 被上告人が上告人から工場跡地を買い受けたが、 当該土地の土壌がふっ素により汚染されていたため、 その後施行された東京都条例の規制に基づく汚染拡散防止措置が必要になったと主張して、 上告人に対し、 民法570条の瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めていた事案である。
本判決は、 売買契約の目的物が有すべき品質・性能は、 売買契約締結当時の取引観念を斟酌 (しんしゃく) して判断すべきであるという考え方を示し、 原判決中、 上告人敗訴部分を破棄し、 当該部分につき、 被上告人の控訴を棄却した。 瑕疵担保責任の取扱いが実務的にも課題とされるなか、 本判決で最高裁判所が示した考え方は、 土壌汚染やアスベスト含有建材の使用等のこれらの環境リスク全般に適用され得るものであり、 実務上、 参考になると考えられる。
キーワード :土壌汚染、隠れた瑕疵
調査
最近の不動産投資市場の動向について
-第23回不動産投資家調査結果(2010年10月1日現在)をふまえて-
廣田 裕二 菊池 慶之 林 述斌 曹 雲珍 髙岡 英生
当研究所は、「第23回不動産投資家調査」の結果を11月29日に発表した。
今回のアンケートは、 先進各国の金融緩和によって、 歴史的な円高と日本国債の金利低下が顕著に進む中で実施された。 リーマン・ショックから丸2年が経過し、 資金調達環境は落ち着きを取り戻したものの、 景気回復の足取りは鈍く、 空室率も依然として高い状態にある。 今回のアンケートの特徴は、 以下の4点に集約される。
- Aクラスビルの期待利回りは、 2010年4月 (第22回) にほとんどの都市で横ばいとなったが、 今回 (2010年10月) も前回に引き続きほぼ横ばいとなり、 オフィス市場に底打ち感がみられる。
- 賃貸住宅の期待利回りは、 前回すでに利回りが低下傾向にあったが、 今回はさらに利回り低下都市が広がり、 全国的に回復傾向が明確になった。
- 不動産への新規投資意欲は、 今回、 新規投資を積極的に行うとの回答が80%と、 2008年4月 (第18回) 以来5期ぶりの水準となった。 一方、 新規投資を控える投資家は、 前回 (2009年4月) の22%から今回は17%にまで減少している。
- オフィス賃料水準の予想は、 都内の各地区、 政令指定都市ともに前回よりも下落幅縮小の予想となった。
今回の調査結果では、 投資用不動産の利回りはほとんどの用途・地域で横ばいとなり、 投資意欲も回復基調にある。 特に、 賃貸住宅の利回りは全国的に低下した。 ただし、 キャッシュフローの低下も続いており、 依然として本格的な回復には至っていないという結果となった。
また、 不動産投資家調査 (海外) については、 今回で2回目となり、 新たにシカゴ、 サンフランシスコ、 シンガポール、 香港の4都市を加え、 8カ国13都市において調査を実施した。
キーワード :不動産投資家調査、 利回り、 J-REIT、 投資意欲、 海外、Global Real Estate Markets Survey
最近の地価動向について-「市街地価格指数」の調査結果(平成22年9月末現在)をふまえて
髙岡 英生
当研究所は平成22年9月末現在の 「市街地価格指数」 を11月29日に発表した。 「市街地価格指数」 から見た最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
- 「六大都市」 の全用途平均は前期比 (平成22年3月末比) で1.9%の下落となった。 景気の持ち直し等を反映して、 前回調査時 (平成22年3月末現在、 平成21年9月末比) の同3.5%下落から、 下落幅が縮小した。
- 「全国」 「六大都市を除く」 についても、 全用途平均でともに前期比2.1%の下落 (前回調査時2.3%下落) となり、 下落幅が縮小した。 ただし、 「六大都市を除く」 都市は 「六大都市」 と比べると景気の回復が遅く、 下落幅縮小のペースは緩やかである。
なお、 全用途平均で 「六大都市」 の下落幅が 「全国」 「六大都市を除く」 の下落幅より小さくなったのは、 平成20年3月末調査以来5期ぶりである。 - 地方別の地価動向を全用途平均で見ると、 平成21年9月末調査以降3期連続して下落幅が縮小している 「関東地方」 「中部・東海地方」 のほか、 今回調査では 「北海道地方」 「北陸地方」 「近畿地方」 「九州・沖縄地方」 でも下落幅が縮小した。
「東北地方」 「中国地方」 は前回調査から下落幅は横ばいとなり、 「四国地方」 のみ下落幅が拡大した。 - 三大都市圏別の地価動向を全用途平均で見ると、 「東京圏」 が前期比1.0%の下落 (前回調査時1.7%下落)、 「大阪圏」 が前期比1.7%下落 (同2.2%下落)、 「名古屋圏」 が前期比0.4%下落 (同1.4%下落) となり、 平成21年9月末調査以降、 3期連続して全ての大都市圏で下落幅が縮小している。
- 前回調査において他の地域・用途に先駆けて変動率が0.0%となり、 地価が下げ止まった 「東京区部」 の住宅地は、 一部の利便性や居住環境が劣る地域で若干の需要減退が見られ、 今回調査では前期比0.1%下落となった。
- 今後半年間の地価動向については、 「全国」 「六大都市」 「六大都市を除く」 の全ての用途で下落幅が縮小する見通しである。 ただし、 このところ景気の先行きに対する不透明感が高まっていること等を反映して、 下落幅縮小の勢いはやや弱まるのではないかとの見方が支配的である。
※六大都市:東京区部、 横浜、 名古屋、 京都、 大阪、 神戸
東京圏:首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む都市
大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む都市
名古屋圏:中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市
キーワード :市街地価格指数、 六大都市、 下落幅縮小、 企業業績
最近のオフィス及び共同住宅の賃料動向について-「全国賃料統計」の調査結果(2010年9月末現在)をふまえて-
手島 健治
当研究所は2010年9月末時点の 「全国賃料統計」 を11月29日に公表した。 オフィス賃料は、 景気の持ち直し等で、 前回の大きい下落から三大都市圏を中心に下落幅が縮小し、 全国で7.7%下落 (前年は11.2%下落) となった。 都市別では、 三大都市を中心に下落幅が縮小しているが、 新規供給が多かった大阪市、 仙台市では10%を超える下落が続いている。 共同住宅賃料は概ね前回並の下落で1%前後の下落が継続しており、 全国で1.2%下落 (前年は1.4%下落) となった。 1年後については、 景気の不透明感があり予測が難しいが、 オフィス賃料は、 東京都区部、 名古屋市等で空室率のピークアウトが期待され、 全国で3.4%下落に縮小する見通しである。 共同住宅賃料も同様に下落幅が若干縮小して全国で0.9%下落になる見通しである。
キーワード :全国賃料統計、 賃料指数、 市場動向
海外論壇
The Appraisal Journal Summer 2010
外国鑑定理論実務研究会
資料
2010(平成22年)[第52巻第1号~第52巻第4号]目次一覧
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