公表資料
刊行物

organizational

QuarterlyReal Estate Research’
季刊『不動産研究』

昭和34年7月の創刊以来、半世紀を超える歴史を有する不動産専門誌。不動産に関する理論的・実証的研究等の場を提供するもので、日本不動産研究所役職員をはじめ、不動産に関係ある各分野の学識経験者の方々から寄せられた学術的研究論文を紹介しています。時宜にかなった特集などを組むことも特色のひとつです。

不動産研究 67-4

第67巻第4号(令和7年10月)特集:GISと不動産データサイエンス

一覧へ戻る

第67巻第4号

特集:GISと不動産データサイエンス

国土交通省が整備・提供する地理空間情報「国土数値情報」
-あらゆるGIS利活用を支える信頼性・統一性の高い公的GISオープンデータ-

国土交通省 政策統括官付 地理空間情報課長 墳﨑 正俊

 国土交通省では、国土に関する基礎的な地理空間情報をGISオープンデータ「国土数値情報」として整備・提供している。地価や人口、都市計画、災害リスク情報など約190種類のデータ項目を無償公開しており、近年は利活用シーンの拡大に伴いダウンロード数が急増。令和6年には初のデータ分析コンペが開催され、データサイエンスへの活用可能性が明らかになった。今後も、国のオープンデータ戦略等をふまえて、AI時代に対応した社会的インフラデータとして、デジタル技術やデータ活用による社会全体の生産性向上に貢献する地理空間情報の整備に取組んでいく。

【キーワード】国土数値情報、地理空間情報、GIS、オープンデータ

Project PLATEAUにおける3D都市モデルデータ整備状況と活用事例の分析
Assessment of 3D city model data and its applications in project PLATEAU

駒澤大学 文学部 准教授 瀬戸 寿一

 本研究は、国土交通省のProject PLATEAUにおける3D都市モデルの整備と活用の現状を明らかにするため、建物データ(LOD1)整備状況の都市比較および開発されたユースケースのプログラム評価を実施した。PLATEAUは2023年度末時点までに、全国352の基礎自治体で約2,300万棟をカバーする世界最大規模の3D都市モデル基盤を構築していることが確認された。主な活用例は、シミュレーション技術を中心にXRやAI、BIM等との融合が進展し、汎用的なデジタル基盤となりつつある。応用分野では、都市計画・まちづくりを中核としつつ、防災、観光、モビリティ等の多分野での活用や分野横断的な価値創造が実現されつつある。また、継続開発のユースケースもあり、実証実験から実装への移行プロセスが起こりつつあることも示された。今後はデータ更新のリアルタイム化、ユーザビリティの向上、広域連携、ビジネスユースへの展開が特に期待される。

【キーワード】3D都市モデル、CityGML、ユースケース評価、Project PLATEAU
【Key Word】3D city models, CityGML, use-case evaluation, Project PLATEAU

不動産データサイエンス×GIS研究の社会実装にむけた挑戦
-空き家・人口マッピング・都市多様性の分野における戦略的マネジメント-
Challenge for Real-World Deployment of Real Estate Data Science and GIS
―Strategic Management in Vacant Housing, Population Mapping, and Urban Diversity―

東京都市大学 建築都市デザイン学部 教授 秋山 祐樹

 本稿は、不動産データサイエンス×GISの実装に資する著者らの最新の研究成果を国内外の複数スケールで紹介する。まず、行政データと機械学習による建物単位の空き家分布推定、画像・VRを用いたその代替手法、基幹統計に基づく空き家の将来予測の研究であり、これらは空き家対策を事後から予防・戦略型へ転換する可能性を有する。また、建物単位のミクロな人口推定を行う研究を日本とバンコクで展開し、海外の不動産市場の開発・投資といった国際展開の初期判断を支える需要把握基盤を示す。さらに、POIから都市多様性指数(UDI)を定義し、都市多様性の強さと空間的な広がりを全世界の都市間で比較可能にした。これらの成果を通じ、データに基づく不動産の意思決定を支援し、不動産データ活用の高度化に貢献するための展望を論じる。

【キーワード】不動産データサイエンス、空き家分布推定、マイクロ人口データ、都市の多様性、AI
【Key Word】Estate Data Science, Vacant Housing Mapping, Micro Population Data, Urban Diversity, AI

判例研究(120)

権利変換計画の不認可と損害賠償
-政策変更による再開発事業からの撤退とこれに伴う負担のあり方-
徳島地方裁判所平成29年9月20日判決(判例地方自治440号6頁)及び
徳島地方裁判所令和2年5月20日判決(判例地方自治468号4頁)

都市開発部 上席主幹 中原 洋一郎

 市長の交代に伴う政策変更により市街地再開発事業の権利変換計画が不認可とされた事案について、裁判所は、市長には権利変換計画の認可について裁量があり、本件では裁量の逸脱・濫用があったとは認められないと判示した。一方、市は本件事業へ個別具体的な働きかけ等を行っており、市街地再開発組合が市の政策の維持と事業の実現に対して有するに至った信頼は法的保護に値するとして、裁判所は市が民法709条に基づく損害賠償責任を負うと判示した。

【キーワード】市街地再開発事業、市街地再開発組合、権利変換計画、不認可、裁量

The Appraisal Journal(Issue 1 2025)

海外不動産市場研究会

刊行物の販売 / 購入、お問い合わせはこちら

刊行物のご注文は「 全国官報販売協同組合(日本不動産研究所特集ページ)」よりご購入ください。
なお、注文方法やご購入に関する注意事項およびお問い合わせなどは同サイト「注文の手引き」よりご確認ください。

刊行物の内容に関するお問い合わせ

日本不動産研究所 研究部
TEL03-3503-5335
戻る
レポート/刊行物に関するお問い合わせ 転載のお申し込み