国際エネルギー機関(IEA)は6月30日、再生可能エネルギーに安全に移行し、2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにするためには、原子力発電を倍増する必要があると発表した。
しかし、現在の原子力発電容量の約63%は30年以上前の古い時期に建設されたもので、また新設はコスト高で必ずしも競争力がない。更に、2017年以降に建設を開始した原子炉31基のうち、27基が中国かロシアの設計で、西側先進国は、市場のリーダーシップを失っていることが指摘されている。
国際エネルギー機関(IEA)は6月30日、再生可能エネルギーに安全に移行し、2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにするためには、原子力発電を倍増する必要があると発表した。
しかし、現在の原子力発電容量の約63%は30年以上前の古い時期に建設されたもので、また新設はコスト高で必ずしも競争力がない。更に、2017年以降に建設を開始した原子炉31基のうち、27基が中国かロシアの設計で、西側先進国は、市場のリーダーシップを失っていることが指摘されている。
国土交通省は、2023年度をめどにESGの内のS(社会)分野に特化した不動産の評価基準を設ける。S分野は、評価項目や評価手法、情報開示の方法が定まっていないことから、これらを整理する。
中間取りまとめ段階では、①安全・尊厳(防災、防犯、人権、多様性、少子高齢化対応)、②心身の健康(健康な暮らし・働き方の実現、快適で利便性の高い職場環境の実現)、③豊かな経済(多様な生き方と生産性向上、地域経済の活性化)、④魅力のある地域(地域文化活性化、コミュティの再生)等が評価項目としてあげられている。
<短期>
・家庭・企業への節電の呼びかけ
・電力会社からの節電要請に協力すると電気料金を割引する「デマンドレスポンスサービス」の利用
・経産省が8月導入を目指している、節電プログラムへの参加者への2,000円相当の節電ポイント付与。
・電力広域的運営推進機関による需給の厳しいエリアへの他地区送電会社からの電力の融通依頼
<中長期>
・電源募集による休止火力発電の稼働
・容量市場の整備などによる、火力発電設備への一定の投資継続
・安全が確保された原子力発電の再稼働
・広域送電網の増強
萩生田経産大臣が、7月が猛暑だった場合、東北、東京、中部の3エリアで、電源供給の余力を示す予備率が3.1%と需給が非常に厳しいという見通しを示しているが、来年冬も含めて電力逼迫の原因は以下のとおり。
・太陽光発電などの天候に左右される発電の割合が増えていること
・脱炭素の流れから火力発電に対する大規模投資がしづらくなっており、採算面からも休廃止する施設が増えていること。
・ウクライナ情勢などにより、LNGの安定調達ができるか不透明なこと。
・原子力発電の再稼働に対するハードルが高く、稼働率が低いままであること。
・広域送電網整備が不十分で、エリアをまたいでの送電が十分できないこと。
日本取引所グループは、経済産業省の委託事業を落札し、「カーボン・クレジット市場の技術的実証等事業」を開始することを5月16日公表した。東京証券取引所の中に専用市場を設けて9月に二酸化炭素排出量取引の実証実験を始める。
森林保護や省エネルギーによる二酸化炭素排出削減効果を、自社の排出量と相殺して地球温暖化に対する取組をアピールしたい企業が購入するものだが、これまでの国内の排出量取引は相対取引で実態がわかりにくかった。市場取引で取引価格等が公表されることで、市場の発展が期待できるかもしれない。
東京都は5月24日に開催した「第52回東京都環境審議会」において、住宅など中小規模の新築建築物への太陽光発電設備の設置を義務付ける方針を決定した。5月25日から6月24日までの期間でパブリックコメントの募集を行った。
対象となるのは、延べ床面積2000㎡未満の建物で、都内で年間総延べ床面積2万㎡以上を供給するハウスメーカーなどの事業者に太陽光パネルの設置が義務化される。最終的にはエンドユーザに価格転嫁され、住宅等の価格が上昇することがマイナス面として懸念されている。
金融庁は、「グリーンウォッシュ問題」(見せかけのESG対応問題)への対応として、公表資料でESG投信運用会社向けに以下の提言をしている。
・専門性を有する人材の確保を含めた必要な組織体制を構築すべき。
・ ESG 要素をどのように特定・評価しているのか、ポートフォリオの決定にどのように活用しているのか、エンゲージメント・議決権行使をどのように行っているのか等について開示の充実に取り組むべき。
・ 企業分析の一要素として ESG 要素を考慮するにとどまる場合は、 ESG を主たる特徴とする投資信託であるかのような誤解を投資家に与えないようにすべき。
5月23日、米国証券取引委員会は、大手銀行バンク・オブ・ニューヨーク(BNY)メロンの資産運用子会社に対し、同社が投資する先のESGに関する情報開示が不十分だとして制裁金150万ドルを科した。
投資先企業のESG活動を適切に評価しないと罰せられるという事例となっている。今後は、ESGに関する情報開示に対する規制がより強まる可能性がある。
気候変動対策を重視する団体が米大手銀行へ株主提案を提出し、新たな化石燃料の探査・開発への融資を止めるよう求めたが、多くの場合、提案への支持が広がらず否決されている。
ロシアのウクライナ侵攻により、長期的な気候変動対策目標より目先のエネルギーの安定的調達が喫緊の課題となっている状況が反映されている。
短期的には、以下のような脱炭素をめざすESG投資に対する逆行の動きがみられる。
・米国では欧州への輸出のため石油増産の動きがある。化石燃料関連のファンドへの資金流入も強まり、金融機関へ化石燃料企業への融資の停止を求める株主提案の否決が相次いだ。
・中国では、石炭の増産、石炭火力による発電が増大している。
・ロシアからの天然ガス供給に多くを頼っているドイツを中心に、石炭輸入の増加、石炭火力の廃止延期の動きが見られる。
しかしながら、欧米諸国は、今年6月に開催されるG7での石炭火力の全廃の合意を目指するなど、中長期的には、欧米の脱炭素への動きは揺らいでいない。
ロシアとウクライナの小麦の輸出は世界の約3割、トウモロコシの輸出は約2割を占めているが、ロシアのウクライナ侵攻により、黒海の港湾が封鎖され輸出が満足にできない状況が続いている。ウクライナ国内の倉庫は収穫済みの穀物で満杯状態となっている。
このため、世界各地で小麦価格が高騰している。また、インドは食糧確保のため小麦・砂糖の輸出禁止に踏み切り、さらなる国際相場の上昇を招いている。
2019年・2020年、アメリカのシェールガス・オイルの増産や新型コロナウイルス感染症による世界的な経済低迷により、LNG価格は低下していたが、2021年以降、LNG価格が上昇を続けている。厳冬などの季節要因以外の主な要因は以下のとおり。
・新型コロナウイルス感染症からの世界経済の立ち直りによる需用が増加している。
・中国は石炭火力への依存度が高いが、本格的な再生可能エネルギーへの移行までのつなぎとして、比較的CO2排出量の少ないLNG火力発電へのシフトを強めている。
・ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁ため、各国はロシアからの石油・天然ガスの輸入の削減を検討しており、燃料調達のリスクが高まっている。サウジアラビアなど中東諸国は原油の増産要請に応じておらず、原油価格と連動するLNG価格の高騰につながっている。
経済産業省は、「カーボンニュートラルに移行するための挑戦を行い、国際ビジネスで勝てるような「企業群」が、経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)を牽引していくための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場として「GX リーグ」を設立する。」としている。
具体的には、産官学が協働する①未来社会像対話の場、②市場ルール形成の場、③自主的な排出量取引の場を設けることを想定して、参加企業の募集などがスタートし、3月末時点で440社が賛同を表明している。
「トランジション・ボンド」「トランジション・ファイナンス」とは、脱炭素社会の実現に向けた長期的な戦略に則り、円滑な移行を目指す取組を行う企業に対する債券・ローンによる資金提供のことをいう。
現在の化石燃料の利用を前提とした仕組みから一足飛びに、脱炭素社会に移行するのは無理があり、移行の途中段階を支援する仕組みとして極めて重要性が高い。
2030年代から顕在化することが予想される、使用済み太陽光パネルに関する資源循環及び有害物質の適正管理に係る問題。
FIT制度が2012年より開始されたこと及び製品寿命より、2030年代に急増し、経済産業省の試算によると、2035~2037年のピーク時には年間約17万~28万トン、産業廃棄物の最終処分量の1.7~2.7%に相当する使用済み太陽光パネルが発生する見通しで、不法投棄、最終処分場のひっ迫のほか、太陽光パネルに含まれる鉛、カドミウム等の有害物質の流出・拡散が懸念されている。
「気候ポジティブ」とは、温室効果ガスの排出量より削減量を多くすることで、「カーボン・ネガティブ」と同じ意味で使われている。温室効果ガスの削減が気候変動(気温上昇)の緩和に役立つため、ポジティブという言葉が使われている。
「気候ニュートラル」とは、「カーボン・ニュートラル」と同様、温室効果ガスの排出量と削減量が均衡している状態をいう。
「カーボン・ニュートラル」とは、温室効果ガスの排出量と削減量が均衡している状態をいう。
「カーボン・ネガティブ」とは、温室効果ガスの吸収量が排出量を上回り、全体の排出量がマイナスになる状態のことをいう。
「カーボン・ポジティブ」は、一見すると「カーボン・ネガティブ」の反意語に見えるが、温室効果ガスを十分吸収できている点を「ポジティブ」と表現しており、「カーボン・ネガティブ」と同じ意味で使われている。
市民、企業、自治体等が、自らの温室効果ガス排出量を削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、クレジットの購入により他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量で埋め合わせる取組みを「カーボン・オフセット」という。
ただし、「カーボン・オフセット」では、他者が実現した削減量を移転しているだけで、地球全体では実質的な温室効果ガス削減につながっていないという批判もある。
温室効果ガス排出量の全量をオフセットすると温室効果ガスの排出量と削減量が均衡して「カーボン・ニュートラル」の状態になる。
「COURSE50」というプロジェクトでは、製鉄所内で発生する水素を高炉に吹き込む水素還元技術を開発している。コークス(石炭)の代わりに水素を使うことでCO2を削減できる。また、製鉄所内で発生する未利用低温排熱を利用して、CO2を分離・回収することも試みている。これらの技術の開発により、製鉄所から発生するCO2 の約30%削減を目指している。
更に進んだ技術として、外部から水素を取り入れコークスの使用を最小限に留めたり、メタネーション(CO2と水素でメタンを生成)によりカーボンリサイクルを行うことも研究されている。
水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を反応させ、天然ガスの主な成分であるメタン(CH4)を合成する技術。
再生可能エネルギー由来の電力より生成された水素と火力発電所等から排出される二酸化炭素を原料としたメタン合成が注目されており、日本政府は同技術を「カーボン・リサイクル(CO2の再利用)」の有望な技術の一つとして位置付けている。
「サーキュラー・エコノミー」は「循環型経済」と訳され、資源投入量を抑え、ストックを有効活用し、廃棄物を抑えながら付加価値を生み出す経済活動のことをいう。「リサイクル」と同じ意味で使われることも多いが、「リサイクル」は製造により発生した廃棄物を単に資源化するという考えが基本となっているのに対し、「サーキュラー・エコノミー」は、製造の設計段階から廃棄物を出さないことを目指し、同時に付加価値を生み出すことも目標としている点が異なる。
「カーボン・サーキュラー・エコノミー」とは、二酸化炭素(CO2)を資源と捉え,CO2が生物や化学品,燃料等,様々なかたちに変化しながら,自然界や産業活動の中で,大気中のCO2を増加させることなく,持続的に循環する社会経済のこと。CCE(Carbon Circular Economy)と略される。