COP27(第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が、世界の気候変動への対応策を協議するため、エジプトのシャルムエルシェイクで開かれ、11月20日に閉幕した。
干ばつや洪水など気候変動による「損失と被害」への対応が主要課題となり、先進国が途上国を支援する基金を創設することまでは合意した。しかし、具体的な枠組みは先送りである。
一方、ロシアのウクライナ侵攻により排出削減目標の後退まで懸念されていたが、気温上昇を1.5度に押さえる努力をすることは再確認された。
COP27(第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が、世界の気候変動への対応策を協議するため、エジプトのシャルムエルシェイクで開かれ、11月20日に閉幕した。
干ばつや洪水など気候変動による「損失と被害」への対応が主要課題となり、先進国が途上国を支援する基金を創設することまでは合意した。しかし、具体的な枠組みは先送りである。
一方、ロシアのウクライナ侵攻により排出削減目標の後退まで懸念されていたが、気温上昇を1.5度に押さえる努力をすることは再確認された。
生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は、2021年10月に中国を議長国としてオンラインで会議が開かれ、その後今年春に中国・昆明で対面による会議が開催される予定であった。
しかし、中国国内の新型コロナウイルスの流行で延期され、議長国は中国のまま、今年12月5日~17日に開催地をカナダ・モントリオールに変更して開催することになった。
この会議では、2030年までの新しい国際目標「ポスト2020生物多様性枠組み」(GBF)が最終合意される見通しとなっている。
金融庁は、11月7日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案を公表した。サステナビリティに関して開示を求めている主な事項は以下のとおり。
・「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄を新設し、「ガバナンス」及び「リスク管理」については、必須記載事項とした。
・人材の多様性の確保を含む人材育成の方針や社内環境整備の方針及び当該方針に関する指標の内容等について必須記載事項として、「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」及び「男女間賃金格差」の記載を求めることとした。
このような開示を強制することで、例えば無理に女性管理職比率を高めるのは本末転倒ではあるが、企業に改革を促す意味では効果があるのではないか。
「炭素税」は、排出量取引と並び、二酸化炭素排出量に価格を付けて、排出量削減を目指すカーボンプライシングの施策の1つ。
政府・与党は2023年度の税制改正で、二酸化炭素排出量に比例した課税を行う炭素税の導入を先送りすることを決定した。
ロシアのウクライナ侵攻や円安の影響でエネルギー価格が高騰するなかでの負担増に産業界から反対が出ていた。
排出量取引を含めたカーボンプライシングの導入を急がないと、2030年の温室効果ガス46%削減(2013年比)の実現が難しくなるのではないか。
「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは、再生可能エネルギーの普及のために設けられている「固定価格買取制度」による電気事業者の電力買取費用を、電気の使用者が使用量に応じて負担する金額をいう。再生可能エネルギー発電設備の普及を後押しすることが目的。
賦課金は2012年は0.02円/kWhだったが2021年には3.36円まで上昇しており、電気使用者の負担となっている。また、個人レベルでは太陽光発電設備に投資した者のみこの制度の恩恵を受けられる(高い価格で電気を買い取ってもらえる)ため、金持ち優遇策という批判がある。
日本では、「地球温暖化対策のための税」として、実質的な炭素税とも言える税が導入されている。
石油・天然ガス・石炭といったすべての化石燃料の利用に対し、環境負荷に応じて広く薄く公平に負担を求める仕組みとなっている。納税義務者は化石燃料の採取者等で、税額を販売先に転嫁するかは事業者の判断となっている。
CO2排出量1トン当たり298円になるように化石燃料ごとに税率を設定しているが、EU諸国は10倍以上の水準であり、現状では、十分なCO2排出削減効果が期待できるレベルとはなっていない。
2019年度の日本のCO2排出量の部門別割合では、産業部門34.7%、運輸部門18.6%、業務部門17.4%についで、家庭部門は14.4%を占めている。
2013年度で208百万t-CO2であった家庭部門の排出量が、2019年度では159百万t-CO2となり23%削減されているが、国全体での2030年度の2013年度比削減目標46%を達成するためには、家庭部門の排出量70百万t-CO2(2013年度比66%)を達成する必要があり、部門別で最大の削減率目標となっている。
家庭部門の排出量削減のためには、住宅の省エネルギー性能の向上と太陽光発電設備による創エネが必要であり、これらを兼ね備えたZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が求められている。
しかし、個人の費用負担の重さ・施工者の技術不足等がZEH普及の壁になっている。そのため、行政の取り組みとして東京都は新築戸建て住宅の屋根に太陽光パネルを設置することを2025年に一定規模以上のハウスメーカーに義務化するとともに普及促進のための補助をする条例を今年12月に成立させることをめざしている。
近年重視されている企業のサステナビリティを維持するためには、気候変動への対応(ESGのE分野)に加えて、人的資本や多様性に関する配慮(ESGのS分野)が必要である。
本年6月に公表された「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告」では、非財務情報開示の充実のため、気候変動に関する項目に加えて、人的資本の観点から「人材育成方針」、「社内環境整備方針」を、多様性の観点から 「男女間賃金格差」、「女性管理職比率」、「男性育児休業取得率」を記載項目に追加することが提言されており、今後、コーポレートガバナンス報告書、有価証券報告書、統合報告書などでの開示が一気に進むとみられている。
ただし、Gの部分にあたる企業経営の方針によってステークホルダーが経営陣や企業をどう評価するかという観点と重複する部分が多く、観念的なグリーンを理論立てて分類(Taxonomy)することはかなりの検討が必要である。
Activity Based Workingの略称。従業員が業務内容に合わせて場所・時間を自ら選択できる働き方。どこで働くのかを業務内容(アクティビティ)によって個人で判断し、業務内容に最も適した時間・場所を選ぶことで生産性の向上を図る点が特徴。1990年にオランダ企業で初めて導入され、海外や日本でもその導入が進んでいる。
「フリーアドレス」と混同されがちであるが、「フリーアドレス」での働く場所はオフィス内に限られているのに対し、「ABW」では自宅やカフェ等のオフィス以外も働く場所の選択肢に入るため、より柔軟に環境を変えることができる。
新型コロナウイルスの感染拡大及びウイズコロナの経済下で、一気にABWの考え方は浸透したが、一方で、マネージャーが各プロジェクトに対し、従業員をどのようにコントロールし企業収益を上げていくか、労働生産性の向上との相関を分析していく課題が新たに生まれている。
カーボンフットプリント(Carbon Footprint:CFP)は直訳すると「炭素の足跡」だが、近年は商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みという意味で使用されている。
カーボンフットプリントは、ライフサイクル全体で発生する温室効果ガスを対象とした概念のため、サプライチェーン排出量におけるスコープ3の概念(スコープ1:自社の直接的な排出量やスコープ2:電気使用などによる間接的な排出量だけでなく、自社の活動に関連した他社の排出量まで合計したもの)と整合している。
カーボンフットプリント事業に参加していることを示すマークによる「見える化」された情報を用いて、事業者が CO2排出量削減を推進すること、消費者がより低炭素な消費生活へ自ら変革していくことを目指している。各国で同様の取組がされているが、カーボンフットプリントを示すラベル・マークの様式はばらばらで統一されていない。
日本でカーボンフットプリントを算定するにあたっては、ルールが策定されている一部の分野を除いては、ISO(国際標準化機構) や GHG プロトコル(Greenhouse Gas Protocol:温室効果ガス排出量算定と報告の世界的な基準)を参照している場合が多いが、それらは解釈の余地のある箇所や明記されていない事項があることから、企業が独自に算定方法を設定せざるを得ず、製品の公平な選択が難しい。
また、事業者の事務負担の大きさや、現状では、カーボンフットプリントマークの対象製品も少なく消費者への認知度が低いため、消費者の商品選択に影響を与えていないことが問題点として指摘されている。
カーボンニュートラルを実現するためには、個々の企業の取組だけではなく、サプライチェーン全体での温室効果ガスの排出削減を進めていく必要があるが、そのためには、脱炭素・低炭素製品が選択されるような市場を創り出していく必要があり、その基盤として製品単位の排出量(カーボンフットプリント)を見える化する仕組みが不可欠である。
そのため、年度末にも経産省と環境省で、CFPに関する算出方法やルールを定めたガイドラインを策定する予定であり、有識者による検討会が始まった。
国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)は、海上の安全、船舶からの海洋汚染防止等を推進するために設立された国連の専門機関。
IMOは、2018年に採択したGHG削減戦略で、国際海運からのGHG排出削減目標(2008年に比較して2050年の総排出量を50%以上削減、今世紀中のゼロ排出)を定めている。
その後、日本や英米がIMOに働きかけ、2023年の上記戦略見直し時に、国際海運の2050年カーボンニュートラル(GHG排出ネットゼロ)の国際合意をすることを目指している。
国際海運GHGゼロエミッションプロジェクトとは、省エネ・脱炭素分野における将来動向を見極めつつ、日本の海運・造船業の競争優位性を高めるために必要な技術課題等を検討するための産学官公の連携プロジェクト。
重油に代わる燃料の普及予測、ゼロエミッション船の技術開発の課題整理を行っている。ゼロエミッションとするために、代替燃料(水素、アンモニア、メタノール)の利用、風力利用、CO2回収技術などが検討されている。
(株)日本政策投資銀行と一般財団法人日本海事協会が共同開発した「脱炭素・環境配慮性能・先進性」という観点での総合スコアリングモデルに基づき、日本海事協会が船舶の評価を行い、日本政策投資銀行が投融資を行うもの。
現在一般的な重油利用から何が次世代船用燃料の主流になるのか不透明な中、環境配慮性能が高い船舶の資産価値を投融資に活かすことを目的としている。
スコアリングにおいては、①GHG削減、②Nox等削減、③その他の大気汚染防止、④海洋汚染防止、⑤IT機能の5つのテーマについて評価を行い、S評価、A評価、評価無しの3段階の認証を行う。
「カーボンプライシング」とは、炭素に価格を付けて、排出者の行動を変容させる政策手法。主な手法としては、以下が挙げられる。
①炭素税
CO2の排出量に比例した課税を行うことで、炭素に価格を付ける仕組み。炭素の価格は政策的に決まる。排出量が削減できるかは、税負担をする企業の行動によるため、不確実である。また、税負担により企業の競争力に影響が出る可能性がある。
日本では、「地球温暖化対策のための税」として、実質的な炭素税が導入されている。CO2排出量1トン当たり298円になるように化石燃料ごとに税率を設定しているが、EU諸国は10倍以上の水準であり、現状では、十分なCO2排出削減効果が期待できるレベルとはなっていない。
②排出量取引
企業ごとに排出量の上限を決め、上限を超過する企業と下回る企業との間で排出量を売買する仕組み。炭素の価格は排出量の需要と供給により決まる。そのため、排出量の価格が変動し、事前の予測が難しい。また、排出量の上限の設定を公平にできるかという問題もある。東京都や埼玉県で開始されているが、国レベルでは、実施されていない。
CO2削減価値を証書化し、炭素削減価値の取引を行うもので、以下の例がある。
①非化石価値取引
再生可能エネルギーや原子力といった化石燃料でないエネルギーが持つ価値を売買する取引。問題点として、取引が、必ずしも再生可能エネルギー等への新規投資に繋がらない点が指摘されている。
②Jクレジット制度
省エネ、再エネ設備の導入や森林管理といった先進的な対策によって実現した排出削減量をクレジットとして売買できるようにするもの。プロジェクト単位でクレジット認証される。クレジットが認められるまでに手続きが煩雑で時間がかかる点が普及へのハードルになっている。
③JCM(二国間クレジット制度)
途上国と協力して実施した対策によって実現した排出削減量をクレジットとして、削減の効果を二国間で分け合う制度。関係国だけで都合良くルールが作られる点が問題点として指摘されている。
企業内部で見積もる炭素の価格であり、企業の低炭素投資・対策を推進する仕組み。気候変動関連目標(SBT/RE100)に紐づく企業の計画策定に用いるなど、省エネ推進へのインセンティブ、投資意思決定の指針等として活用される。
炭素価格の産出方法については、①排出権価格等の外部価格の活用、②同業他社の価格を参照、③自社のCO2削減目標と対策総コストから産出、などの方法がある。
日本で、ICPを導入している企業が多いのは、国レベルのカーボンプライシング(CP)が導入されていないことも一因であり、将来国レベルでCPが導入されれば、個別企業のICPは無くなる可能性もある。
環境規制に先進的な米国カリフォルニア州は8月25日、州内で販売する新車乗用車を2035年までにゼロエミッション車(ZEV)とする規制を承認した。この規制では、乗用車の新車販売に占めるZEVの割合を2026年式モデルで35%、2030年式では68%と定めている。
同規制でZEVに含まれる車は、プラグインハイブリッド車(PHEV)、バッテリー式電気自動車(BEV)、燃料電池車(FCV)に限定され、日本車メーカ-に優位性があるハイブリッド車(HV)は含まれていない。同様の規制が予定されている欧米市場では、自動車各社は、ZEVへのシフトを急ぐ必要がある。
一方、電気は電線が長いと減衰するため、広範囲に送電網を張り巡らせ充電スタンドを設置するのが難しい。また、寒冷地では、バッテリーの性能が落ちる。そのため、中近東、中南米、アフリカなどの新興国地域や寒冷地では、当面内燃機関車が優位性を保ち、ZEVの普及には相当の時間がかかると考えられる。
燃料電池車(FCV)は、水都と酸素の化学反応により電気を生成してモーターを回すため、水しか排出せず、環境に優しい。また、電気自動車とくらべて、短時間で燃料の充填ができるメリットもある。
資源エネルギー庁が公表している「水素・燃料電池戦略ロードマップ」によると、FCVについて、2025年20万台、2030年80万台の普及をターゲットとしているが、現状は1万台未満の国内保有台数に留まっている。普及の妨げは車両の価格(ハイブリッド車との価格差が約300万円)と水素ステーションの整備の遅れにある。水素ステーション設置の目標は、2025年320カ所、2030年900カ所としているが、現状約160カ所に留まっている。
水素ステーションの建設には3~4億円というガソリンスタンドの3倍超の費用が掛かり、補助金があってもガソリンスタンドより高く、さらに運営費用も高額なことがネックとなっている。
全固体電池は、リチウムイオン電池の正極と負極の間にある液体・ゲル状電解質を固体電解質にしたもの。小型化、大容量化が可能で、EVの航続距離を伸ばせる。電池の劣化が低減し、電池の寿命が延びる。熱に強く、発火の危険性が低く、安全性が高いとされる。
全世界で開発競争が進むが、量産技術が確立しておらず、実用化の目処は2020年代後半で、試験的な採用からスタートすると考えられている。また、リチウムイオン電池も負極の素材を変化させることなどにより進化を続けており、2030年ごろには、全固体電池と競合関係になるという見方もある。次世代を制する電池が全固体電池で決定したわけではない。