2019/04/26 超高齢化社会に向けて

国立社会保障・人口問題研究所が4月19日、「日本の将来推計人口(平成29年推計)」を発表しました。中位推計でみると、年齢層別の推計人口は以下のように推計されました。2040年には65歳以上の人口割合は35%を超える推計です。さらに、65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は、東京が最も多くなるとされています。         

西暦 総人口(千人) 65歳以上人口(千人) 65歳以上人口割合(%)
出生中位(死亡中位)将来推計
2019 125,773 35,916 28.6
2030 119,125 37,160 31.2
2040 110,919 39,206 35.3

大都市では少なく感じる高齢者

平成29年10月1日現在の人口推計では、65歳以上の高齢者の占める割合(括弧内数字)は、埼玉県(26.0%)、千葉県(27.1%)、東京都(23.0%)、神奈川県(24.8%)となっており、首都圏でも4~5人に1人が高齢者となっています。ちなみに、近畿圏では滋賀県(25.3%)、京都府(28.6%)、大阪府(27.2%)、兵庫県(28.3%)、奈良県(30.3%)となり、首都圏のそれよりも高くなっています。

高齢者がこれほど多く暮らしているにもかかわらず、大都市(東京23区内、湾岸エリアの大都市や大阪市、京都市、神戸市など)を日中歩いていてみると、「そんなに高齢者が多いのだろうか?」と疑問に思うこともあるでしょう。大都市にはビジネスマンや学生、国内外の観光客のほか、ベビーカーを押していたり、子供連れの家族、若い女性たちなどの買い物客などでごった返していますから、「まだまだ活気があるな」とも感じてしまいます。

しかし、気をつけなければならないのは、そもそも都心は仕事や観光、買い物などで、ビジネスマンや若者、家族連れが集まる地域であるという感覚です。都心から電車で20分ほど離れ、駅から10分ほど歩く住宅街(特に古い住宅街)に足を踏み入れれば、街の雰囲気は急激に変化します。かつては商店街であっただろう木造住宅、コインパーキングなどで利用されている空き地、ひっそりとした街並みが広がることでしょう。

空き家ではなさそうな古い家屋、シャッターは降りているがいつもきれいに維持されている商店、路地の奥につらなる生活感のある家屋や古いアパート。健康で活動的な高齢者は外出をしたり、買い物などで日々の暮らしを送っていることでしょう。一方で、一日中家の中で暮らしている高齢者も多くいらっしゃることでしょう。私はむしろ、ほとんど家から出ないか、あるいは最低限しか外出しない高齢者の方が圧倒的に多いのではないかと考えています。

超高齢化社会で気をつけたいこと

人は、直面する状況であれば対処方法を考えたり、他人の意見を聞いたりすることができます。ですから、大都市ではどうしても目に見える人々(たとえば家族連れ、観光客や買い物客、ビジネスマンなど)の声に耳を傾け、対応策を検討しがちです。もちろん活動的な高齢者であればイベントに参加したり、様々な地域活動を通じて社会に対して意見を表明することができます。

しかし、超高齢化社会では徐々に「声を聴く」という対応も難しくなってくるかもしれません。なぜならば、高齢者となれば、体力の衰えなどで外出の頻度も少なくなり、日々を家内で過ごすことが多くなると予想されるからです。特に大都市部では、古い住宅がマンションなどの共同住宅に変わっていくことで、古くからのご近所さんも少なくなり、話し相手も徐々に減っていくことでしょう。

利便性の高い地域は、今後も町並みが変化する一方で、超高齢化社会ではこういった日頃見かけないけれど、高齢者がすぐそばで暮らしているという事実を見失わないようにしなければなりません。彼らは沈黙しているかもしれませんが、地域の特性を把握する上では、「声なき声に耳を傾け、細心の注意を払ってその街を観察しなければならない」ということなのです。

地域を活性化すること、地域コミュニティ活動を積極的に行うことは、「まち」を維持し、人を呼び寄せることで賑やかになりますが、一方で賑やかな「まち」であっても、声を上げず、ひっそりと暮らしている高齢者がいることを忘れずに、若者と高齢者がともに暮らしていけるような地域活動、まちづくりが必要になると思います。(幸田仁)