2021/03/10 ポストコロナ社会の到来とデジタルディバイド

皆さんこんにちは、日本不動産研究所の幸田 仁です。

昨年から新型コロナウイルスの蔓延によって、飲食店、小売業、航空業、観光業等で大幅な売上減少、相次ぐ閉店や廃業・倒産、労働市場の急変など社会経済の混乱が続いています。

一方で、新たなデジタル社会に向けたICTの実用化が進み、WEB会議システムやクラウドによる経営システム等が急速に普及しつつあり、デジタル化への対応が地域、組織、個人レベルで求められています。

今回は、ポストコロナ社会の到来が及ぼす社会への影響とデジタル化への対応は日常生活や働き方にどのように影響を及ぼすかについて考えてみたいと思います。

コロナ禍によって加速したデジタルディバイド

「デジタルディバイド(digital divide)」とは、「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差(2004年(平成16年)情報通信白書)」と説明され、「情報通信インフラ整備の違いによる地域間格差」、「身体的・社会的条件(性別、年齢、学歴等)によってICTの利用に違いがおこる個人間・集団間格差」などに分類されています。

第四次産業革命といわれるデジタル社会の到来と、新型コロナウイルスの蔓延というアクシデントが重なり、在宅勤務やテレワーク、WEB会議、SNSといったICTが日常生活に急速に普及しました。この流れは今後も加速し、ICTやPC、モバイル端末を使いこなせるかどうかや、AI、ロボット等によって失われる職業が選別される時代に入ったといえます。

ポストコロナ社会で加速したデジタル化は、これまでの暮らしや働き方が通用しなくなり、新たな格差と選別の時代が到来する可能性を秘めていると考えます。

デジタルディバイドが引き起こす格差社会の到来

ポストコロナ社会では、通信回線(5G)の普及と、モバイル機器(スマホやタブレット)の高性能化、現実の職場とネット(サイバー空間)が混在する社会になると考えます。

現在、政府及び大手企業を中心に「デジタルトランスフォーメーション(以下「DX」)」が推進されています。行政情報や蓄積された多くの情報はオープンデータ化が進み、日常の諸手続はインターネットを介して可能となりつつあります。必然的にデジタル化に対応できる人と出来ない人では仕事、生活、あるいはセキュリティ(サイバー犯罪リスク)上の格差も生じることでしょう。

求められる人材の変化

デジタルディバイドは、ビジネス環境にも影響を及ぼします。業務自動化、モバイル営業ツール、経営戦略の構築支援などICTを自在に活用できる人材が必要とされる時代が目の前に迫っています。かつてオックスフォード大学のオズボーン氏の論文「雇用の未来」で発表された衝撃的な内容が現実になりつつあると思います。

不動産のあり方の変化

ポストコロナ社会の到来は、働き方の多様化、現実空間とサイバー空間の併存によって、地域や都市の構造も徐々に変化することでしょう。

不動産鑑定士は、ポストコロナ社会の到来とともに変化する人々の生活と活動がどのように不動産あるいは都市のあり方に影響を及ぼし、変化していくかを見通す視点をもたなければなりません。特に必要なのはDXでは解決できない分野に対する強みを持つことだと考えています。(幸田 仁)