2022/02/25 【NEWサービス】トーマツと日本不動産研究所が協業し、気候変動が不動産価格に与える影響の定量分析モデル「気候変動による経済的損害算定モデル」を開発

 ~洪水等による物理的リスクが不動産(土地・建物)価格に与える影響を新たにモデル化し、気候変動関連財務情報開示(TCFD)を含む中長期的な気候変動リスク対応を助言するサービスを開始~

 デロイト トーマツ グループの有限責任監査法人トーマツ(東京都千代田区、包括代表 國井泰成、以下トーマツ)と一般財団法人日本不動産研究所(東京都港区、理事長 日原洋文、以下日本不動産研究所)は協業し、気候変動が不動産価格に与える影響を分析するための新たなモデルを開発し、それを活用したリスク評価助言サービスの提供を開始します。

 近年、国内外の投資家が投資先に気候変動関連財務情報開示(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の準拠を求めるようになっており、企業は気候関連の潜在的な財務インパクトの明確化と情報開示の拡充が求められています。気候変動は中長期にわたる不確実性を有する課題であり、各社はTCFDに則り、自社におけるリスクおよび機会の観点から重要性を評価し、将来シナリオに基づき、事業への影響について分析した上で、情報開示を率先して継続強化することが肝要になってきています。

 このうち、両社は特に不動産分野における、河川の氾濫による土地・建物の浸水被害などの物理的リスクに焦点を当て、不動産を多く所有する企業や、その企業に融資する金融機関が土地・建物価格の毀損とその影響について分析・見積り、情報開示の強化を支援していきます。トーマツの会計・リスクマネジメントの知見と、日本最大手の不動産鑑定機関である日本不動産研究所の不動産鑑定評価・災害調査研究の知見を活用し、気候変動による不動産の物理的リスクを定量的に分析するための新たなモデルを開発し、個々の金融機関や事業会社のニーズに応じたリスク評価助言サービスを提供していきます。

 従来の気候変動関連財務情報開示においては、洪水が発生した際に、浸水深に応じて建物への損害を簡便的に見積もる手法が主流となっており、土地の価値毀損については全く考慮されていないケースが一般的でした。しかし過去の大規模災害に対する当研究所の調査研究によれば、地域の被害の状況によっては土地価格に対しても大きな影響が及んでおり、洪水等の災害が被災後の土地価格に与える影響を財務情報開示にどのように反映するかが課題となっていました。また建物についても、従来では用途・構造・階層に応じたきめ細かい損害率の想定は難しく、特にオフィスビル等の商業用途の高層ビルや、大規模な工場・倉庫、区分マンション等の被害の想定は難しい面がありました。

 本サービスでは、土地・建物両方を対象に、ハザードマップ上の想定浸水深に応じて、被災した場合の想定損害率を算定することが可能です。土地については不動産鑑定評価理論をベースに、想定浸水深や推定浸水被害額などの災害に関するデータや、人口・実質GDP・消費者物価指数などのマクロ経済指標、それぞれの土地の緯度経度情報等に基づく「ハザードリスク地価推計モデル」を活用し、想定最大規模の水害発生時の土地価格への影響度を定量的に分析します。本サービスには、気候変動に伴う自然災害のうち、「土地」に与える洪水等の物理的リスクに関する評価を反映させるGIS(地理空間情報)を応用した処理なども含まれています。また建物については、不動産鑑定士の知見を活用し、建物部位別損害率と構造用途別構成比率による建物損害率をモデル化し、オフィスビル等の商業用途の高層建物や、工場、倉庫、戸建住宅、マンション等の幅広い用途ごとに異なる物理的リスク(価値の減価率)に関する情報開示への助言提供を行うなど、投資家への合理的な説明を促進する幅広いサポートを行っていきます。これらのモデルについては、顧客が所有するデータの粒度や、求める情報開示の水準に合わせた調整も可能です。

 トーマツと日本不動産研究所は、今後も両社の金融機関・事業会社向けサービス提供に係るナレッジを融合させていくことで、不動産リスク評価を切り口として、金融機関・事業会社の気候変動リスク対応の高度化に関する助言サービスを拡大します。

 

本サービスの詳細はこちらをご覧ください。

 

<ご相談、報道機関の方からの問い合わせ先>

日本不動産研究所 研究部 浅尾、佐野、南川 宛

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以 上