2022/09/16 【JREI Think-Tank Eyes 】#3 回復途上の不動産実需

回復途上の不動産実需 -底堅さを見せる企業の設備投資

執筆者:研究部 不動産エコノミスト 吉野薫
2022年9月16日


 内閣府・財務省は9月13日、2022年第3四半期の法人企業景気予測調査を公表しました。国内外の経済に対する不透明感が拭えない中にあっても、日本企業が業容拡大意欲を失っていないことを確認することができました。ひいては不動産の実需を巡る状況は改善に向かっているものと推測できます。

 図表1には「設備判断BSI」の推移を示しました(BSI=Business Survey Index)。現状(2022年9月末時点)および今後(3か月後、6か月後)の見通しのいずれもプラスの領域にあり、これは「設備が不足している」と認識する企業が「設備が過大である」と認識する企業よりも多いことを意味しています。「設備が不足している」と認識する企業は設備投資を積み増す判断をしやすいはずですので、このような状況ではマクロ全体でみても企業の投資需要が底堅いものと考えられます。

図表1:設備判断BSIの推移

   (注)各四半期末。設備判断BSI=期末時点での「不足」-「過大」。
   (出所)内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」

 なお図表1では大企業のデータのみを表示していますが、筆者が中堅企業や中小企業の動向を軽視している訳ではありません。設備判断BSIのクセとして、中堅企業や中小企業のデータはプラス側に偏ることが多く、全般的な景気の変動を掴む上では大企業のデータを用いた方が直観的に分かりやすい、という技術的な理由に拠るものです。

 法人企業景気予測調査では設備投資の年度計画も尋ねています。その結果を図表2に示しました。2022年度の設備投資額は全規模・全産業で前年度比プラス16.2%と計画されています。この伸び率は9月調査としては過去最大であり、足元の企業の設備投資は非常に積極的であるといえます。業種別に見ても、供給制約に起因して生産の弱さが続く「自動車・同付属品製造業」(前年度比+31.9%)や、コロナ禍の影響を強く受けている「宿泊業、飲食サービス業」(前年度比9.9%)等でもしっかりとしたプラスの計画となっています。

図表2:設備投資計画の推移(各年9月調査時点における年度計画の前年度比)

 

   (注)ソフトウェアを含み土地を除く。
   (出所)内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」

 世界経済を取り巻く不確実性が高い状況にあっても企業が設備投資意欲を維持しているという今回の調査結果は、先行きの日本経済や不動産市場を占う上でも朗報といえます。当面景気が腰折れするリスクは低そうですし、また企業が業容拡大意欲を失っていないということは、企業による不動産の床需要が回復途上にあることを類推させます。

 今後の展開は、こうした企業の前向きなマインドが残っているうちに、実際に企業の操業が活発化するかどうか、に懸かっています。世界の経済活動が今後一層拡大して日本企業もその恩恵を受けることができれば、我が国の景気回復の足取りはこれまで以上に確かなものとなるでしょう。逆に世界経済の不透明感がますます募るような状況となれば、いずれ企業の前向きな意欲は失われ、設備投資は手控えられることになります。それはまさしく本格的な景気後退の入口に他なりません。

(一般財団法人日本不動産研究所 不動産エコノミスト 吉野薫)


※当コラムで示される見解は個々の執筆者個人に属するものであり、必ずしも日本不動産研究所の見解を代表するものではございません。