弊所は、日本の不動産投資市場における共通理解を深めるため、不動産投資家および不動産投資に関連のある方々のご理解とご協力により、1999年4月に不動産投資家調査を開始しました。本調査は年2回実施しており、調査内容の充実及び精度向上に努めております。
第52回「不動産投資家調査」(2025年4月現在)の調査結果(概要) |
・期待利回りの動向は、各アセットで「低下」と「横ばい」が混在し、「横ばい」の地域が多く見られる結果となった。
・オフィスは、「東京・丸の内、大手町」の期待利回りは3.2%で5期連続の横ばいとなり、その他の東京のオフィスエリアと地方都市においてもほぼ横ばいの結果となった。
・住宅は、「東京・城南」のワンルームタイプの期待利回りは3.7%で4期ぶりの低下となりファミリータイプの期待利回りを下回った。また、地方都市ではワンルームタイプはほぼ横ばいであったが、ファミリータイプでは横ばいと低下が混在する結果となった。
・商業店舗は、「都心型高級専門店」は横ばいと低下が混在したが、「銀座」は3.3%の横ばいであった。「郊外型ショッピングセンター」は全ての調査地区で横ばいの結果となった。
・物流施設(マルチテナント型)は湾岸部の「東京(江東区)」は3.8%で3期連続の横ばい、内陸部の「東京(多摩地区)」では4.0%で横ばいとなり、全ての調査地区で横ばいとなった。
・ホテルは、「東京」は4.2%で横ばいとなったが、「京都」「大阪」「福岡」「那覇」の4地区では0.1ポイントの低下となった。
・今後については、「新規投資を積極的に行う。」という回答が94%で横ばいとなり、「当面、新規投資を控える。」という回答は3ポイント上昇し2期ぶりに5%となった。また、「既存所有物件を売却する。」という回答は6ポイント上昇し29%となったが、緩和的な金融環境は維持されており、不動産投資家の非常に積極的な投資姿勢が維持されている。
第52回 不動産投資家調査 特別アンケート(概要) |
・今回の調査では日本銀行による一連の金融政策※により到来した「金利上昇下の不動産投資市場」において、不動産投資市場にどのような影響があると不動産投資家が考えているか、アンケートを実施した。なお、一連の金融政策による不動産投資市場に対する影響は「影響はなく、変化は生じていない。」とする回答が前回から1.4ポイント減少し66.4%で最も多く、次いで「やや萎縮し、市場は停滞の方向へ移行しつつある。」とする回答が3.5ポイント増加し32.9%となった。
・影響がない理由としては、「投資物件の取引に変化はない。」とする回答が前回から5.5ポイント増加し44.0%、さらに「不動産投融資に係る社会全般の雰囲気に変化はない。」とする回答は7.0ポイント減少し25.3%となり、不動産投融資に対する影響が感じられない回答が合わせて約70%を占める結果となった。
・また、2027年3月末の長期金利水準の予想については「1.5%~2%以下の水準」が50.0%と最も多く、その場合においての不動産投資市場への影響として「一時的に停滞するものの、その後は回復に向かうだろう。」(27.5%)が最も多かったが、次点の「今の時点では答えられない。」(26.1%)とする回答との差は1.4ポイントの結果となった。
※一連の金融政策:昨年の日本銀行による3 月のマイナス金利政策の撤廃を含む金融政策の枠組みの見直し及び7 月31 日の金融政策決定会合において政策金利を0.25%に引き上げ、本年1 月の金融政策決定会合においては政策金利を17 年ぶりの水準となる0.5%程度に引き上げるとともに、「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現するとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになるとの考え。
・不動産投資家がESG投資に対して期待する内容は「不動産価値への影響」とする回答が最も多く、将来的な収益性の向上を期待する声が多かった。
・ESGに適した不動産とそうでない不動産の賃料収入について、現在は「特に違いはない」(82.8%)とする回答が最も多かったが、10年後は「1~5%程度高い」(62.5%)とする回答が最も多かった。
・ESG投資に適した不動産とそうでない不動産の期待利回りについて、現在は「変わらない」(80.2%)とする回答が最も多かったが、10年後は「-10bp(価値が高い方向)」(45.8%)とする回答が最も多かった。
・自然災害の頻発、脱炭素化社会の実現やTCFD提言などを受けて、より重視するようになった項目としては「所有する不動産の省エネルギー・創エネルギー対策」(71.9%)とする回答が最も多く、次いで「浸水対策などの不動産レジリエンス向上への施策」(59.4%)、「再生可能エネルギーの利用、グリーン電力証書等の購入」(48.4%)という結果となった。
・近年頻発する自然災害を受けて、投融資の際に着目する自然災害リスクについては、「水害(内水氾濫・外水氾濫)」(60.3%)、「地震・津波」(35.1%)の2項目が大きく注目されている結果となった。
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