No.14 埼玉県川越市

官民協働の町づくりに学ぶ 川越市
「小江戸」が一大観光地に

一般財団法人日本不動産研究所 関東支社
不動産鑑定士 齋藤和登

 埼玉県川越市は、埼玉県の南西部に位置する中核市で、江戸時代の面影を残す町として「小江戸」と呼ばれて愛されており、多くの人が訪れる、蔵造りの町並みが人気の観光地である。川越市は都心から30km圏に位置し、東・西・北の三方を河川に囲まれており、古く江戸時代から陸路だけでなく水路を利用できる利点を活かし、江戸の台所を支える重要な物資の供給拠点として繁栄していた。
 ただ、江戸時代当時の建物は木造が多く、川越も2度の大火にみまわれており、特に明治26(1893)年には町の約3分の1を焼失する川越大火に見舞われる。その復興にあたっては、寛政4(1792)年建築の大沢家店蔵が焼失を免れたのを見て、商人たちが防火性能の高い蔵造りを採り入れ、今日残るような蔵造りの重厚な町並みが形成された。なお、その際に川越のシンボルである“時の鐘”も焼失してしまうが、川越を愛する商人達は自らの店や住まいも再建していない中で、真っ先に“時の鐘”を直したというエピソードがある。