明治大学専門職大学院長 公共政策大学院ガバナンス研究科長 教授 市川 宏雄
2020年の東京五輪開催による経済波及効果は生産誘発額ベースで19.4兆円以上、GDPを年間で0.3%上げる効果がある。競技施設整備費や大会運営費に加えてMICE活発化等による訪日外国人の増加や建設投資、都市づくり事業の前倒し、新規産業の創出、ドリーム効果による消費増が寄与する。基盤整備は、前回の1964年の五輪の時とは比較にならないが、それでも都心の幹線道路・高速道路の建設、新たな鉄道・地下鉄の建設、BRT(バス高速輸送システム)などの計画の構想や実施があり、羽田空港の国際化が進展する。こうした動きは、現在、世界第4位である東京の都市ランキングを少なくとも3位に押上げ、2位のニューヨークに近接するとのシュミレーションの結果がでた。ただし、そのためには、国家戦略特区に象徴される国際競争力強化のための政策の実施、規制緩和が不可欠となる。
【キーワード】国際的都市間競争、国家戦略特区、羽田空港の国際化、経済波及効果
【Key Word】international competition between metropolises, national strategy special zone, internationalization of Haneda Airport, economic ripple effect
一般財団法人日本不動産研究所 研究部 研究員 金 東煥
一般財団法人日本不動産研究所研究部 研究員 山越 啓一郎
明海大学 不動産学部 准教授 小松 広明
今後の東京都の地価は、木造密集地域整備に伴う道路拡幅や公園整備等の個別的要因、不燃領域率改善等の地域要因によって上昇する可能性が大きい。更に、アベノミクスや2020年東京オリンピック開催に向けた施設整備等の地価形成の一般的要因が今後の東京都の地価上昇をもたらす可能性がある。本研究では、このような地価形成要因が、東京都23区の住宅地の地価に与える影響をヘドニック地価関数と時系列モデルを用いて実証分析を行った。その結果、東京都23区の地価(住宅地)は、アベノミクスや2020年東京オリンピック開催等の一般的要因によって2018年上半期まで上昇し続けて、ピーク(2013年対比+5.3%)を迎え、以後下落する(2020年下半期時点2013年対比+3.9%)と予測された。また、木造住宅密集地域の整備に伴う道路拡幅と公園設置の個別的要因は、前面道路の1mの拡幅が最大4.3%の地価上昇をもたらす。更に、公園の整備(2,500㎡の公園を設置した場合)は、250m地点で0.8%の地価上昇をもたらす。最後に、不燃領域率の地域要因は、現状の55%から70%まで改善されることで5.4%の地価上昇をもたらすことが明らかになった。今後の東京都23区の地価(住宅地)は、上昇しやすい状況を備えていると考えられる。
【キーワード】地価、木造住宅密集地域、整備効果、ヘドニックモデル、VECモデル
【Key Word】Land Price, Densely Developed Wooden-Frame Residential Area, Redevelopement Effect, Hedonic Model, VEC Model
髙岡 英生
当研究所は平成26年3月末現在の「市街地価格指数」を5月22日に発表した。「市街地価格指数」から見た最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
※全用途平均 |
:商業地、住宅地、工業地の平均変動率 |
キーワード:市街地価格指数、三大都市圏、全用途平均、地価上昇
手島 健治
「東京・大阪・名古屋のオフィス賃料予測(2014~2020年、2025年)・2014春」を4月23日に公表した。①東京ビジネス地区の賃料は、2013年に上昇反転し、2014年と2015年は5~7%の上昇が継続。空室率は2014年に6.1%、2015年に5.2%まで低下。2016年は新規供給が50万坪と急増するが、市況が良いので影響は小さく、賃料の上昇幅は5%程度を維持。2017年以降は上昇継続も上昇幅が低下し、空室率は5%弱で横ばい。②大阪ビジネス地区は、2013年のグランフロント大阪等の大量供給で空室率が再上昇したが、2014年は新規供給も少なく、空室率は8.9%まで低下し、賃料もわずかに上昇。2015年以降も空室率は低下し、賃料も3~4%の上昇が続く。2020年に空室率は6.5%、さらに2025年には5.6%まで低下し、賃料は微増傾向が続く。③名古屋ビジネス地区は、2013年と2014年は新規供給が少なく賃料もわずかに上昇。2015年は同年に予定されていた大規模ビル1棟の竣工が1年遅れるが、名古屋駅周辺で過去最大の新規供給があり、空室率は大幅に上昇し、賃料も再度下落に転換。2016年も大量供給となり、空室率は12%を超えて、賃料も約5%下落。2017年以降は新規供給が少なく、空室率は低下するが、賃料は下落が続き、2018年から2~4%の緩やかな上昇が続く。2020年以降は賃料が概ね横ばいで、空室率は微増。
キーワード:賃料予測、マクロ計量経済モデル、ヘドニック分析
愼 明宏・髙岡 英生・吉野 薫
当研究所は、「第30回不動産投資家調査」の結果を5月22日に発表した。
前回調査(2013年10月)は、日銀による「異次元の金融緩和」や、7月の「衆参のねじれ問題解消」、さらに9月の「2020年東京オリンピック開催決定」など、国内経済等の回復を印象づける出来事が多い中実施され、こうしたことを背景に不動産投資家の期待する利回りは低下傾向の鮮明化が見られた。今回調査(2014年4月)は、国内経済等において、前回ほどのインパクトの大きい出来事は少なかったものの、不動産投資市場の回復期待や回復の認識が高まる中、各不動産投資家が考える今後の投資姿勢や期待する利回りの動向について注目が集まった。
このような状況下で実施された今回の調査結果の概要は以下のとおりである。
キーワード:不動産投資家調査、利回り、新規投資意欲
金 東煥・山越 啓一郎・小松 広明(明海大学 不動産学部 准教授)
リザーブ・キャップ・レートとは、 2013年4月時点調査において新たに定義された用語であり、対象物件に対する買い手の最大支払い意思額に基づいた取得期待利回りを意味する。丸の内・大手町地区Aクラスビルのリザーブ・キャップ・レートは、2017年まで低下しやすい状況が続くが、その後の2018年から2020年のオリンピック開催年次にかけては、物件の売却が購入に先行し、上昇に転じやすくなると考えられる。一方、城南地区賃貸住宅ワンルームのリザーブ・キャップ・レートについては、2015年以降2020年までは、物件の売却が購入に先行する傾向にあるため、上昇に転じやすくなる。2014年4月時点のリザーブ・キャップ・レートに関連する投資家の意識構造をみると、収入の上昇期待に比べて、収益の悪化懸念が、物件の取得意欲に対して強い影響を与えはじめていることが明らかとなった。当該用途のリザーブ・キャップ・レートは、下限値に接近しつつあると考えられる。
キーワード:オリンピック、リザーブ・キャップ・レート、不動産投資、共分散構造分析
外国鑑定理論実務研究会