不動産研究 63-4

第63巻第4号(令和3年10月) 特集:Jリート20年

一覧へ戻る

第63巻第4号

特集:Jリート20年

Jリート20周年にあたって
−近年のJリート市場と不動産証券化の推進に向けた国土交通省の取組−

国土交通省 不動産・建設経済局 不動産市場整備課長 鈴木 あおい

Jリートの創設から20年が経った。この間、Jリートを含む不動産証券化市場は概ね順調に推移してきた。不動産証券化の推進は、優良な都市ストックの形成や、地域経済の活性化に貢献するものであり、国土交通省においても税制措置等によりその後押しをしてきたところである。近年のJリート市場においては、アセットタイプや地域の多様化が進んでおり、その果たすべき役割もさらに重要になっている。また、不動産証券化の一つである不動産特定共同事業は、中・小規模の再生案件にも活用可能なスキームであるが、法改正等も行いながらその活用促進を図ってきたところである。不動産証券化が経済活性化や地域の活性化に資する役割はますます重要になっており、国土交通省においても、引き続き、その推進に貢献していきたい。

【キーワード】 不動産証券化、Jリート、不動産特定共同事業

リーマンショック等の様々な局面を通じて拡大・成熟したJ-REIT市場
−リーマンショック以降の約10年間を振り返って− 

J-REIT market’s expansion and maturity through various market phases

(一社)不動産証券化協会 市場基盤ディビジョン主任 工藤 万季
 (一社)不動産証券化協会 市場基盤ディビジョン長 澤田 考士

市場創設及び初の上場銘柄登場が実現した2001年以降、J-REIT市場はリーマンショック等の様々な局面を経験しつつ、REITとして時価総額世界第2位の規模にまで拡大した。そして、市場拡大とともに、市場関係者が様々な局面に対処し、また関連制度や税制が改正されたことで、J-REIT市場は一層成熟した。

本稿では、J-REITが20周年を迎えたことを踏まえ、まず、リーマンショック後に公募増資や新規上場の再開、合併等による前向きな再編の実現、資産タイプや資金調達手段の多様化、日銀のJ-REIT関連政策、毎月分配型J-REIT投信からの流出、自己投資口取得・ESGへの取組等の新たな取り組み、コロナ禍におけるJ-REIT市場の状況について述べ、主に直近10年間におけるJ-REIT市場の動向を振り返る。その上で、今後の課題を提示する。

【キーワード】 REIT、リーマンショック、合併、日銀の買入、ESG

J-REIT20年の回顧と今後の成長のためのインプリケーション
20-year retrospective of J-REIT market and Implications for future growth

公立大学法人宮城大学 事業構想学群 教授 田邉 信之

1990年代後半から普及した日本の不動産証券化は、現在では40兆円を上回る市場規模にまで成長した。その成長の大きな原動力となったのがJ-REITである。J-REIT市場の成長要因は、環境変化に応じて、市場基盤を整備しつつ、成長分野への投資や多様な資金の調達に積極的に取り組んできたことにある。だが、今後もJ-REIT市場が持続的な成長を続けていくためには、過去の成長過程から得られる知見を積極的に活用していくとともに、新たな経済社会の動きにも柔軟に対応し変化していく必要がある。J-REITは日本経済に成長資金を呼び込む機能を果たし、金融市場におけるリスク分散や投資機会の提供にも寄与してきた。今後も市場の発展を通じて、こうした機能がより広範な分野にわたって活かされていくことを期待したい。

【キーワード】 不動産投資、不動産証券化、J-REIT

論考

韓国における不動産政策の変遷と現下の課題

日本都市経済研究所 所長 宋 賢富

韓国における本格的な不動産政策は、1980年代の高度経済成長期に、地価高騰を抑制するために土地公概念三法が導入され、この基本理念に基づく土地政策が始まりである。その後、住宅問題がクローズアップされ、その解決策として実施された5つの新都市における大規模団地開発など住宅供給の推進が主な住宅政策であった。しかし、アジア通貨危機を乗り越えて以降、土地・住宅問題は政策上の重要課題ではなくなったが、ここにきて現政権のイデオロギー色の強い政策によって、地価・住宅価格の上昇が問題化するという事態が再燃しているのが現状である。市場経済を無視あるいは軽視した不動産政策は市場の混乱、不公平、資産格差等を招く結果となっている。

【キーワード】韓国、不動産政策、土地政策、住宅政策、地価、住宅価格、規制強化、市場の混乱、不公平、資産格差

中国マンション管理業務におけるデジタル化
-中国マンション管理市場の発展及び管理業界のデジタル化-

(一財)日本不動産研究所 研究部兼国際部 主任研究員 曹 雲珍
 横浜市立大学大学院 都市社会文化研究科 客員教授 周藤 利一

中国では改革開放後、都市人口の増加、住宅市場が急激に発展してきた。また、都市部1人当たり可処分所得の増加に伴い生活の質が高まり、住宅はただ住むところとしての機能だけでなく、住環境やマンション管理サービス等の質も求められるようになった。これらの社会背景の変化がマンション管理市場の発展を大きく促進させた。本稿は、中国マンション管理市場の発展過程、市場規模と特徴、管理サービスの現状や管理費用の徴収方式等、管理業務のデジタル化とその効果について詳しく紹介する。

【キーワード】中国マンション管理市場、マンション管理サービス、管理業務のデジタル化、管理業務専用アプリ

判例研究(112)

山林比準のゴルフ場用地に商業地等の負担調整措置を適用すべきか否かが争われた裁判
-福岡高裁宮崎支部平成30年2月28日判決・判例地方自治437号34頁-

髙岡 英生

The Appraisal Journal Spring 2021

外国鑑定理論実務研究会

不動研だより

DBJ Green Building認証と当研究所の取組み

資産ソリューション部 環境室長 蓮見 清彦

レポート/刊行物一覧へ戻る