不動産研究 64-3

第64巻第3号(令和4年7月) 特集:オフィスの新潮流

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第64巻第3号

特集:オフィスの新潮流

コロナ禍におけるオフィス空間と立地の傾向と今後の課題
Office Space and Location Trends in the Corona Pandemic and Future Issues

東京都立大学 都市環境学部 地理環境学科 助教 坪本裕之

この2年間のコロナ禍で、オフィスに対する世間的な関心は一気に高まった。出勤抑制要請のもとで行われた在宅勤務はオフィスの見直しの契機となっており、筆者の知見を通してオフィス空間やオフィス立地の今後について展望する。リモートワークの課題からオフィスの再定義が行われ、関係性を維持さらには新しい関係性の構築を場所的、時間的にサポートする要件がより強く求められよう。今後働く場所は、オフィスを結節点として、場所の機能を定義し補完性の概念に基づいて相互に紐付け再構築されるであろう。その結果、コロナ禍では離心的な立地行動が注目されたが、交通利便性に優れた場所への移転、立地も見直されると考えられる。その際にはオフィスの機能を転換し面積を縮減する動きもあるが、却ってコミュニケーションの課題の解決とはならない可能性もある。コロナ禍はコミュニケーションデザインの重要性を再認識する機会であり、コミュニケーションの相手や目的がこれまで以上にワーカー、組織共により強く認識することが訴求される。

【キーワード】リモートワーク、コミュニケーション、同期性、弱い関係性、補完性
【Key Word】Remote-work, Communication, Synchronicity, Weak relationship, Complementarity

コロナ禍を経てみえてきたこれからのオフィスの姿
-多様化するワークプレイスと変化が求められるオフィス-
Expected future office concept seen through Covid-19 crisis
Diversification of workplace and required change in main office building

株式会社ザイマックス不動産総合研究所 代表取締役社長 中山善夫
 株式会社ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員 山方俊彦

コロナ禍は今までの変化の流れを加速させつつ、新しい動きをもたらした。従来の流れであった「働き方改革」が一気に浸透し、テレワークが当たり前の時代となった。本稿では、オフィスを使う企業・ワーカー両面の変化と、それに伴いオフィスマーケットで起きている事象を確認・整理し、今後のオフィスとオフィスビルのあり方を展望する。

【キーワード】オフィス、働き方改革、テレワーク、空室率、賃料
【Key Word】Office, Workstyle reform, Teleworking, Vacancy rate, Rent

日本の商業用不動産市場における不動産テック活用の現在地
-商業用不動産データ活用の取り組み事例と米国市場との比較-
Emerging Trend of Data Technology within CRE Industry in Japan

株式会社estie(エスティ)代表取締役 平井瑛

本稿では、日本の商業用不動産市場における不動産テック活用の現在地について考察した。
日本の商業用不動産市場は巨大であり、東京に至っては世界第1位の規模を誇るが、グローバルな透明度調査では市場の評価が低い。特に市場データの可用性、品質、深さが著しく低く、中でも不動産テックの活用度合いは他の先進国と比較して後塵を拝している。estieが開発する「estie pro」は、日本最大級のオフィス不動産データ分析基盤として、大手不動産デベロッパーや資産運用会社、管理会社に賃料をはじめとした非公開データを提供している。これらの市場データに基づき、賃料策定業務における計測と改善を高速に繰り返し、最適な賃料水準を模索するために活用されており、日本における商業用不動産テック活用の一つの社会実装事例となっている。

【キーワード】 不動産テック、商業用不動産、データ活用、賃料策定、オフィス
【Key Word】PropTech、Commercial Real Estate( CRE)、Data、Rent、Office

調査

最近の地価動向について
-「市街地価格指数」の調査結果(2022年3月末現在)をふまえて-

平井 昌子

当研究所は2022年3月末現在の「市街地価格指数」を2022年5月25日に公表した。
「市街地価格指数」からみた最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。

  • 「全国」の地価動向は、全用途平均(商業地・住宅地・工業地の平均、以下同じ)で前期比(2021年9月末比、以下同じ)0.2%、2020年3月末調査以来、4期ぶりの上昇となった。
  • 地方別の地価動向は、総じて回復傾向となった。
  • 三大都市圏の地価動向を全用途平均でみると、「東京圏」は前期比0.7%上昇、「大阪圏」は同0.3%上昇、「名古屋圏」は同0.3%上昇となり、前期に続き回復傾向となった。
  • 「東京区部」の地価動向は、全用途平均で前期比1.0%上昇、商業地で同0.6%上昇、住宅地で同0.9%上昇、工業地で同3.2%上昇となった。商業地は上昇に転じ、他の用途では回復傾向が続 いた。

※全用途平均:商業地、住宅地、工業地の平均変動率
 最高価格地:各調査都市の最高価格地の平均変動率
 東京圏:首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む都市
 大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む都市
 名古屋圏:中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市
 六大都市:東京区部、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸

【キーワード】市街地価格指数、全用途平均、地価上昇、地価下落

最近の不動産投資市場の動向
-第46回不動産投資家調査結果(2022年4月1日現在)をふまえて-

愼 明宏

当研究所は、「第46回不動産投資家調査」の結果を2022年5月25日に公表した。
調査結果(2022年4月)の概要は以下のとおりである。
(1)オフィスは、「東京・丸の内、大手町」の期待利回りが前回調査に続き0.1㌽低下し、1999年の本調査開始以来の最も低い水準を更新した。その他の東京のオフィスエリアや地方都市でも期待利回りが低下する調査地区が多かった。国際情勢に係る不確実性が高まったものの、日銀の緩和的な金融政策の下、国内優良物件に対する不動産投資家の投資姿勢は積極的なままであり、こうしたことが期待利回りの低下に影響した。住宅は、ワンルームタイプでは前回比横ばいの調査地区が多くみられたが、ファミリータイプについては「東京・城南」を含む多くの調査地区で期待利回りの低下がみられた。商業店舗は、コロナ禍で人流抑制の影響が大きい都心型高級専門店では多くの調査地区で期待利回りが前回比横ばいとなったが、郊外型ショッピングセンターでは多くの調査地区で低下した。物流施設はコロナ禍でeコマースの進展に拍車がかかり、多くの調査地区で期待利回りは低下した。ホテルは新型コロナの変異種等で様子見姿勢が強まり全ての調査地区で利回りに変化はなかった。
(2)今後の投資姿勢については、回答者の94%が「新規投資を積極的に行う。」とした。日銀の緩和的な金融政策の下、全体としては不動産投資家の積極的な投資姿勢が維持された。

【キーワード】不動産投資家調査、利回り、新規投資意欲

The Appraisal Journal Winter 2022

外国鑑定理論実務研究会

不動研だより

不動産証券化市場を鑑定評価で支える当研究所の取り組み

証券化部 次長 口石智義

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