大阪都市計画局 拠点開発室 広域拠点開発課 ベイエリアグループ
平成30年11月の第164回博覧会国際事務局(BIE)総会での開催国決定の投票により、2025年国際博覧会の開催地が日本の大阪(夢洲)に決定した。夢洲で開催される万博のコンセプトを「いのち輝く未来社会のデザイン」と位置づけ、令和7年4月13日から同年10月13日まで開催されている。
大阪府市は大阪・関西万博の跡地(夢洲第2期区域)活用を見据え、既存の計画や民間事業者からのまちづくりの提案内容を踏まえ、夢洲第2期区域マスタープラン Ver.1.0を令和7年4月11日に策定した。今後はマスタープランを踏まえ開発事業者募集を実施し、第2期区域のまちづくりの効果を、臨海部をはじめとした周辺地域に波及させ、大阪の成長・発展を先導する東西軸のニシの一大拠点の形成につながるよう、取り組んでいく。
【キーワード】夢洲第2期区域、万博跡地、国際観光拠点の形成、マスタープラン、万博の理念の継承
【Key Word】Yumeshima Second Phase Area、Post-Expo land use planning、Formation of an international tourist destination、Master plan、Inheriting the ideals of the Expo
株式会社日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト/主席研究員 石川 智久
関西経済は長らく地盤沈下が指摘されて来たが、足元では反転の兆しがみえる。こうしたなか、経済活性化の起爆剤として期待されるのが、2025年4月から開催されている大阪・関西万博と2030年開業予定のカジノ付き統合型リゾート(IR)である。経済効果は、万博が2.9兆円、IRが建設時で1.9兆円、運営で毎年1.14兆円が見込まれており、GRP80兆円の関西経済にとって大きなイベントといえる。まずは、万博の成功が重要であるが、関西経済の持続的な成長には、万博後が重要である。IRを成功させることは当然ながら、万博のレガシーを最大化させる必要がある。それに向けては、①他のベンチマーク都市を参考に長期的な成長ビジョンを作る、②万博で示された技術を基にイノベーションと新産業創出に尽力する、③陳腐化しない文化等をレガシーとする、等が求められよう。
【キーワード】万博、関西経済、カジノ付きリゾート、地方創生
【Key Word】EXPO, Kansai Economy, Integrated Resort, Regional revitalization
Turner & Townsend 株式会社 Associate Director. 黒川 めぐみ
本稿は2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)における外国館プロジェクトのケーススタディを通じて日本の建設産業のグローバル化の可能性を検証し、現状の課題、今後の方向性を議論することを目的とする。外国館のケーススタディでは、日本の建築プロセスの課題として、申請手続きと各プロジェクトの参画者に期待される役割の特殊性が明らかになった。今後の日本の建設産業のグローバル化に向けて、多様な文化・習慣をもつ参画者を配慮した申請手続きと役割・責任分担の再考と明確化を提案する。
This paper aims to examine the potential for globalization of Japan’s construction industry through a case study of the official participant’s pavilion project at the 2025 Osaka Expo, and to discuss the current issues and future directions. The case study of the official participant’s pavilion highlights the challenges of Japan’s construction processes: the unique characteristics of building permit process and the expected roles and responsibilities of professionals. The paper concludes with the future directions for the globalization of Japan’s construction industry as the reconsideration of the permit process, roles and responsibilities taking into account participants with different cultural backgrounds and practices.
【キーワード】大阪万博2025、外国館、建設産業のグローバル化
【Key Word】Osaka Expo 2025, Official participant’s pavilion, Globalization of Japanese construction industry
平井 昌子
当研究所は2025年3月末現在の「市街地価格指数」を2025年5月28日に公表した。
「市街地価格指数」からみた最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
「全国」の地価動向は、全用途平均(商業地・住宅地・工業地の平均、以下同じ)で前期比(2024年9月末比、以下同じ)1.1%(前回1.1%)、前期に続き上昇となった。
地方別の地価動向は、一部で弱い動きもみられるが、総じて回復傾向が続いた。
三大都市圏の地価動向を全用途平均でみると、「東京圏」で前期比2.6%(前回2.4%)、「大阪圏」で前期比1.6%(前回1.4%)、「名古屋圏」で前期比1.1%(前回1.0%)となった。三大都市圏ともに上昇傾向が続いた。
「東京区部」の地価動向は、全用途平均で前期比3.5%(前回2.8%)、商業地で前期比4.1%(前回3.2%)、住宅地で前期比3.3%(前回2.6%)、工業地で前期比2.1%(前回2.3%)となった。
※全用途平均:商業地、住宅地、工業地の平均変動率
最高価格地:各調査都市の最高価格地の平均変動率
東京圏:首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む都市
大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む都市
名古屋圏:中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市
六大都市:東京区部、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸
【キーワード】市街地価格指数、全用途平均、地価上昇、長期的地価指数
岩指 良和
当研究所は、「第52回不動産投資家調査」の結果を2025年5月28日に公表した。
調査結果(2025年4月)の概要は以下のとおりである。
(1)期待利回りの動向は、各アセットで「低下」と「横ばい」が混在し、「横ばい」の地域が多くみられる結果となった。
・オフィスは、「東京・丸の内、大手町」の期待利回りは3.2%で5期連続の横ばいとなり、その他の東京のオフィスエリアと地方都市においてもほぼ横ばいの結果となった。
・住宅は、「東京・城南」のワンルームタイプの期待利回りは3.7%で4期ぶりの低下となりファミリータイプの期待利回りを下回った。また、地方都市ではワンルームタイプはほぼ横ばいであったが、ファミリータイプでは横ばいと低下が混在する結果となった。
・商業店舗は、「都心型高級専門店」は横ばいと低下が混在したが、「銀座」は3.3%の横ばいであった。「郊外型ショッピングセンター」は全ての調査地区で横ばいの結果となった。
・物流施設(マルチテナント型)は湾岸部の「東京(江東区)」は3.8%で3期連続の横ばい、内陸部の「東京(多摩地区)」では4.0%で横ばいとなり、全ての調査地区で横ばいとなった。
・ホテルは、「東京」は4.2%で横ばいとなったが、「京都」「大阪」「福岡」「那覇」の4地区では0.1㌽の低下となった。
(2)今後については、「新規投資を積極的に行う。」という回答が94%で横ばいとなり、「当面、新規投資を控える。」という回答は3㌽上昇し2期ぶりに5%となった。また、「既存所有物件を売却する。」という回答は6㌽上昇し29%となったが、緩和的な金融環境は維持されており、不動産投資家の非常に積極的な投資姿勢が維持されている。
【キーワード】不動産投資家調査、利回り、新規投資意欲
手島 健治
日本不動産研究所は、2025年1月時点の全国賃貸オフィスストック調査を実施し、2025年4月30日に結果を公表した。主なポイントは以下の通りである。
①2025年1月現在の賃貸オフィスストックは、全都市で15,316万㎡(20,239棟)となり、東京区部が床面積ベースで56%を占める。このうち2024年の新築は284万㎡(166棟)で、東京区部は30%にとどまるが、今後3年間(2025~2027年)のオフィスビルの竣工予定は748万㎡(204棟)で、東京区部が74%を占める。
②新耐震基準以前(1981年以前)に竣工したオフィスビルストックは、全都市で2,625万㎡とストック全体の17%を占める。都市別で割合が高い都市は、大阪市、福岡市及び札幌市が23%、京都市が21%、地方都市が20%と続く。
③規模別ストック量では、10万㎡以上のビルは千葉市が幕張地区の影響で54%と高く、次に都心5区が31%と続き、逆に5千㎡未満は京都市が32%、地方都市が29%、さいたま市が27%と高い。築後年数別では、築10年未満のビルが名古屋市で21%、次に都心5区で20%、横浜市が19%と高く、千葉市、神戸市、京都市、地方都市は築30年以上が6割強と高い。
なお、前回から調査方法を変更しており、2023年まで行っていた全国オフィスビル調査とは直接接続しない。
【キーワード】全国賃貸オフィスストック調査、新耐震基準、規模別・築後年数別オフィスストック
明海大学不動産学部 准教授 金 東煥
本研究は、日本国内の不動産投資市場の市況感を把握するため、海外のシンガポール大学や米国NAIOPの事例、ならびに国内の景気指数作成手法を参考に、日本向け不動産センチメント指数(CI)を構築し、精度を検証した。具体的には、日本不動産研究所の投資家調査における市況感アンケートデータを用い、各セクターの回答からポジティブとネガティブの比率に基づく業況判断DIを算出し、これを市場規模に応じた加重平均により統合してコンポジット指数を導出した。得られた不動産センチメント指数(CI)は、東証REIT指数、不動産企業株価、市街地価格指数との連動性や、予測値を含む先行指標としての有用性が示唆された。一方、調査期間が2022年4月以降に限定されるため、過去データとの連携や延長手法の検討が今後の課題として残る。
【キーワード】不動産センチメント指数、市況感、先行指数、業況判断DI、コンポジット指数
【Key Word】Real Estate Sentiment Index, Market Sentiment, Leading Indicator, Diffusion Index, Composite Index
海外不動産市場研究会
研究部 次長 岩指 良和